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看病
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冬休みが終わった朝、外気はまだ刃物みたいに尖っていた。吐く息は白く、校門の影は細長い。二年の最後の冬休み、名残惜しさを引きずった足を昇降口へ運ぶ。
教室の扉を開けると、友人らの声が飛んでくる。
「東堂、またデカくなったか?」
肩を掴まれ、腕、足を握られる。おい誰だ胸筋触ってきたやつ。
「冬、走れねーからさ。雪降ってて滑るし。だから家で筋トレしてた」
「筋肉バカが」
「うるせぇ。健康優良児って言え」
笑い声が弾ける。湊はまだ来てない。俺が早めに来たから当たり前なんだけど。
席に鞄を置いたところで、他クラスで遊びに来てたのだろう、見慣れない女子がくるりと振り向いた。校内でもかわいい女子と名の通る子だ、友人が騒いでいた。明るい茶の髪を耳の後ろで留め、マスクの上からでも目元が華やいで見える。
「東堂くん、鍛えてるよね。ちょっと触っていい?」
「しょ、しょうがねぇな」
内心で慌てつつも、肘を曲げて力こぶを作る。指先がそっと二の腕を押して「すごーい」と笑われると、どう反応していいかわからず、曖昧に頷くしかない。女子の面識がはっきり言ってないからだ。
その瞬間、後ろから友人に腕を首に回される。
「お前ずりぃぞ!ニヤニヤしやがって」
「やめろバカ、折るぞ首!」
ふざけた小競り合いで、冬の空気がほぐれていく。チャイムが鳴り、プリントを配られたり席替えしたりと進んでいく。湊はいつのまにか席に着いていた。
放課後。コートを着込み、帰り支度をしていると、さっきのかわいい女子が机の端に手を置いた。
「東堂くん、たまには一緒に帰らない?」
「悪い、湊と帰——」と言いかけたところで、横から湊の声が落ちてきた。
「ええっと、僕、今日用事あるから。大丈夫だよ」
いつもの穏やかな笑顔。俺は一瞬だけ視線を合わせる。用事か。そんなこと初耳だが。
「やった。久遠くんもそう言ってるし行こうよ」
「あ、ああ。じゃ、途中まで」
その子は、そういえば湊を王子呼びしないんだよな。思いながら並んで歩くと、彼女は会話の間に小さく息を弾ませた。冬の空気は人の声を澄ませる。
「東堂くんの事、前から気になってたんだ」
交差点の信号が赤に変わる。立ち止まった足に、冷たい風が吹き抜ける。
「え、告白?」
「そうかも?」
冗談半分の返しに、半分だけ本気の返事。告白。初めてされたな。
彼女が首を傾げる。
「他に好きな子、いるの?」
思考が一瞬空白になって、そこへ真っ先に浮かんだのは、湊の横顔だった。マフラーからのぞく喉、笑うときに目尻が柔らかく落ちる形。
変な間ができてしまった。
「そんなことは——」と言いかけたところで、彼女はふっと視線を外し、微笑みを崩した。
「もういいや」
それだけ言って、さっと踵を返す。
「え、ええ?」
困惑を置き去りに、彼女の背中は人混みに紛れていった。信号が青に変わる。俺はしばらく立ち尽くして、ようやく歩き始める。ふと、教室の引き出しに教材を置きっぱなしにしたことを思い出した。
冬は鍵が閉まるのが早い。走って戻ると、夕方の教室は廊下の反射光だけで薄明るかった。人の気配はほとんどなく、暖房の音が遠くで唸っている。教室の扉を開けて、息を飲んだ。
——湊が、そこにいた。
俺の椅子に腰をかけ、机に両腕を伸ばして額を乗せている。顔は伏せられ、細い肩がわずかに上下していた。
「湊」
呼ぶと、ゆっくり顔が上がる。潤んだ瞳。赤くなった頬。体温で解けた雪みたいに、弱い光が宿っている。
ドキ、と心臓が跳ねた。だが同時に、額の熱を想像して現実に引き戻される。
「保健室行くぞ」
「⋯⋯うつしちゃうから。帰ってよ」
突き放すような言い方。らしくない。
「俺、体は丈夫なんだよ。知ってるだろ」
問い詰めず、腕を貸し、ゆっくり保健室まで歩く。湊の体は、冬の夕方に似合わない熱を帯びていた。
保健室。先生は熱を測り、額に手を当て、眉を寄せる。
「少し高いわね。お母さん呼ぶから。——東堂くん、ちょっと見ててあげて」
そう言うと、どこかへ電話をかけに出て行った。俺と湊だけが残る。暖房の風がカーテンをわずかに膨らませる音。時計の針の音が、いつもより大きく響く。
沈黙が落ちる。湊は目を閉じたり開けたりして、呼吸を整えようとしていた。やがて、乾いた声が落ちる。
「⋯⋯さっき、一緒に帰った女子は?」
「うーん⋯⋯先に帰って行った」
「何、それ」
一言そう言って、湊の目がにじんだ。こぼれそうな涙を慌てて袖で拭おうとして、うまくいかず、肩が震えた。
「どうした、苦しいのか」
湊は首を横に振る。
「蓮司くんに、恋人ができたら⋯⋯もう、遊べなくなるのかなって。隣にいられなくなるのかなって。今日、ちょっとだけ、そう思って⋯⋯自分でも、変だと思うのに、悪い想像が止められなくて。話、飛躍しすぎてるよね。——でも、不安で、不安でしょうがなくて」
体調が朝から良くなかったのだろう。思えばいつもより静かだった。体調が悪ければ思考もネガティブになってメンタルも落ち込んでいく。俺は棚に置いてあるタオルを取って、湊の額の汗をそっと拭った。
「シャツ、少し緩めるぞ。汗拭くから」
湊が微かにうなずいたのを見て、俺は指先でボタンを外した。ひとつ、またひとつ。ゆっくりと、布の合わせ目を開く。
覗いた肌は、一切の日焼けもなく白かった。細い鎖骨が浮いてる。肌は熱のせいか、ほんのり赤くて、でもどこまでもきめ細かい。
思わず息を詰める。なんだろう、この気持ち。変に喉が渇いて、無意識に唾を飲み込んでいた。
いやいやいや、病人相手に何考えてんだ俺。そう自分に言い聞かせて、わざとらしく咳払いひとつ。タオルを手に取って、汗ばんだ首筋へ滑らせた。
「う、ぁ⋯⋯痛い、れんじ、くん……」
その声がやけに艶っぽく聞こえて、慌てて手を引いた。
「悪い! ちょっと強すぎた」
動揺を隠すように、今度はゆっくりと、優しく押さえるようにタオルを滑らせる。鎖骨のくぼみ、胸の上を拭うと、湊の呼吸が深く、静かになる。
目を閉じて、わずかに眉を寄せている顔が綺麗だった。睫毛が長く、肌に影を落としている。髪がほんの少し乱れて、額に張り付いているのも、無防備で。
こんなに近くで顔を見るのは初めてかもしれない。
タオルをそっと引いて、視線を逸らした。何もなかったみたいな顔をしながら、けど、掌の熱だけは消えてくれなかった。
「⋯⋯ありがと」
「まあ、これくらい」
それ以上、言葉が見つからない。カーテンの外で足音がして、保健の先生が戻ってきた。
「お迎え、十五分くらいで来るって。東堂くん、このままそばにいてあげて」
「はい」
先生はまた事務室へ下がっていく。白い空間に、俺たちだけ。湊のまつ毛の影が頬に落ち、呼吸が静かに上下する。
やがて、保健室のドアがノックされ足音が近づく。
「失礼します」
見慣れた上品なコート。湊の母親だ。
「ご迷惑をおかけしました」
「いえ」
俺が立ち上がると、母親は湊の額に手を置いて低く囁いた。
「帰りましょう」
湊はゆっくり頷く。
「東堂くん、湊を見てくれてありがとう」
「お大事に」
それ以上、言い足すべき言葉が見つからない。俺は頭を下げ、保健室を出た。
家に帰って、シャワーを浴びる。熱い湯が背中を叩く音の合間に、保健室の白さが何度も蘇る。泣き方。細い喉の上下。湊は俺が恋人できたら泣くほど嫌なんだな。
布団に潜る。目を閉じる。閉じた瞼の裏に、濡れた睫毛の影がまた浮かぶ。
眠れねえ。
ベッドから這い出て、マットの上で腕立て伏せを始める。二十、三十、四十。腕と胸に血が回って、呼吸が荒くなる。
「早く寝なさい!」
廊下から母親の声。
返事をして、腕立てをやめ、もう一度布団に潜る。心拍の熱が胸の奥に残っているのに、今度は不思議と、眠りがすぐに来た。
明日、湊の熱が下がっていますように——と、何度か祈っているうちに眠ってしまった。
翌朝。氷みたいな空気が窓の桟に張りついて、指先の感覚をじわじわ奪っていく。外へ走りに出るか迷った末、今日は家でスクワットとプランクに切り替えた。呼吸があがるにつれて、昨日の保健室の湊が何度も脳裏に浮かぶ。額に乗せたタオルの湿り、掠れた声。
運動して冷えた体をシャワーで叱咤して学校へ。教室は暖房がまだ追いつかず、吐く息がほんの少し白い。
朝のHR。まだ隣は空席。出席確認で「久遠——欠席」と聞こえたとき、胸の中の何かが小さく沈んだ。予想はしていた。湊の体はかなり暑く苦しそうにしていたから。
午前中の授業は、板書がやけに多い。ノートを取りながら、手だけが仕事をして、頭は別のことを考えている。休み時間、友人が机をどん、と叩いた。
「昨日さ、お前——」
「うん」
「噂になってるぞ。隣のクラスの女子と帰ってたって」
「途中まで、な」
「どうすんの? 狙う?」
「振られたわ」
あっけらかんと言い切ると、周りにいた奴らは少し気まずそうにする。聞いてきた友人は「ふーん」と肩をすくめ、「東堂は筋肉が恋人だからな」と勝手にまとめた。悪くない雑な結論に笑って頷いた。あの女子のことはいま言われるまで忘れていた。俺はなんて薄情なやつなんだ。
昼、湊にメッセージを送るか迷って、結局短く送った。
『熱、下がった? 大丈夫か』
既読はつかない。黒板のチョークの音、廊下の足音、すべてが少し遠い。午後の授業がどうにか終わり、放課後。教室に残っていた俺は、プリントを二枚だけ折って、鞄に突っ込んだ。湊が欠席した科目の板書を写しておいたノートも。
届けに行くか。
冬の夕暮れは、やたらと足が速い。学校を出る頃には、空がもう群青に傾いていた。吐く息が白く、コートの中の突っ込んだ指がかじかんで少し痛い。住宅街に入ると、門扉の前に見覚えのある黒い車が停まっている。インターホンを押すと、すぐに返答があって、扉が静かに開いた。
「いらっしゃいませ。東堂様」
「どうも。これ、湊くんに渡してください。今日の分のプリントです」
玄関ホールで黒いスーツの人に封筒を渡そうとしたとき、「蓮司くん」と二階から声がした。見上げると、厚手のカーディガンを羽織った湊が、階段の手すりに手を添えて立っていた。顔色はまだ青白いけれど、昨日よりはずっと良い。
「プリント今日の分な。悪い来ちまって。すぐ帰るから」
「大丈夫。良ければ、ちょっとだけ歩かない?」
外? と目で問うと、湊は「少しだけ」と笑った。庭は芝が霜で薄白く、踏むと細かい音がした。息が白く重なる。
「昨日は、ごめん」
「何が」
「突き放すみたいな言い方、して」
「気にしてねぇってそんなん」
湊は、足もとを見ながら言葉を探していた。
「⋯⋯用事なんてなかったけど、蓮司くん、彼女欲しいのかなって思って、邪魔したくなくて。でも教室から一緒に帰ってるのが見えた途端、胸が、急にぎゅってなって。自分でも、わけがわからなくて」
「わかるよ」
驚いたように顔が上がる。俺は、吐く息を見ながら続けた。
「俺だって、お前が別のやつと帰ってたら凹むっつーか。⋯⋯多分校庭十周以上して自分を誤魔化す」
湊は見えやすい人だ。目尻の影が柔らいで、息が深くなる。庭の端に小さなベンチがあって、二人で腰をおろした。木の肘掛けが冷たい。
「あ、誤解されても困るからな。昨日の子に告白ぽいことは言われた。けど俺が黙っていたら向こうから『もういいや』って帰ってった。俺に愛想がついたみたいにな」
湊はポケットから小さなカイロを取り出して、俺の手のひらに押しつけた。
「サンキュー。っとそうだ。これ、ノートの板書、写しといた。字はなるべく丁寧には書いたけど。頑張って読みとけ」
「きれいだよ」
「嘘つけ」
「ほんとに。⋯⋯ありがとう」
受け取る指が、昨日よりしっかりしている。よかった。
呼吸がまた少し深くなったところで、窓の明かりが庭に伸び、黒いスーツの人が控えめに声をかけた。
「湊様、そろそろお部屋に」
「うん。蓮司くん、来てくれて嬉しかった」
「明日は来れたら来いよ、ゆっくり休め」
「明日は行くよ、ありがとう」
「おう。じゃ、また明日」
湊は静かに頷き、手を小さく振った。背を向けて歩き出す。
「⋯⋯僕も、気持ちをしまえる引き出しがあったらなぁ」
かすれた声が背中越しに届いた。
振り返った時には、もう扉の向こうだった。
翌日、湊はマスクをして登校した。教室に入ってくると、「大丈夫?」「無理しないでね」と口々に声をかけられている。湊は「ありがとう」と笑い、俺の席に寄ってきた。
「ノート返すね、ありがとう」
「おう。もう平気か」
「平気。熱も下がったし呼吸もちゃんとできるよ」
「よし」
担任の板書が将来の進路の話に。体育館での全体説明、オープンキャンパス、模試の日程。黒板の文字が現実味を帯びて、クラスの空気がほんの少し重くなる。
放課後、帰り道。信号待ちで、湊がぽつりと口を開いた。
「進路、蓮司くんは決めた?」
「全然!めんどくせー。でもまだ働きたくないし、大学受験進学かな」
「僕も大学進学、かな。場所は全然決めてないけど」
「お前ならどこでも行けるだろ、成績オールA判定」
青に変わる。白線を踏む足の裏に、固い冷たさ。湊はマフラーの端を指で整えながら、ふっと笑った。
「⋯⋯ どこでも行けるだなんて、そんなこと言ってくれるの蓮司くんだけだよ」
どう言う意味か、と問う前に角の公園で小学生が小さな雪だるまを作っているのが目に入り湊が笑う。
「かわいいね」
「俺らも作るか」
「指、かじかむよ」
「遊びには多少の犠牲が必要だからな」
言いながら、手のひらに雪を集めて丸める。冷たさは容赦ないが、笑いながらやっていると、なぜか指先の痛みがほんの少しだけ遠のく。小さな雪玉を二つ積んで、その辺の枝をつけてへたくそな顔ができる。
「よし、“みなと”と名付けよう」
「“れんじくん”にしたら?」
「押し付け合いやめろよ」
笑う声が、曇天に吸い込まれていく。濡れた指を服で拭って歩き出す。
帰り道、神社の横を通る。節分のポスターが貼られていた。俺はふと、口に出していた。
「そろそろ節分か、三月なんてすぐに来るよな。」
「小さい頃、病室のベッドで、家族で豆まきしたことある。福は内、って小さな声で」
その情景が一瞬で浮かんで、胸が温かくなった。久遠家は穏やかな人らだからいいな。俺の家族は全てにおいて全力だから、病室で豆まきなんてしたら窓が割れるだろう。
「今年は俺の家でやるか。俺、鬼やるから」
「ふふ、鬼は外、ってできなくなっちゃうよ」
湊は笑って、前を向いた。
日常は、ゆっくりと整っていく。湊の欠席はあの日だけで終わり、放課後の図書室での勉強も再開したし、時々久遠家に行かせてもらっている。めっちゃ美味いケーキを出してもらうのは申し訳ないが勉強のモチベにも繋がる。
それでも、ときどき。あの日の保健室のカーテンの白が不意に蘇る。湊の涙、熱、あの言葉。
『もう、遊べなくなるのかな』
『隣にいられなくなるのかな』
夜、布団に入る前に腕立てを二十回だけ増やす。呼吸が整って、眠りが早く来る。
夢を見た。眠りが深いから、夢なんてほとんど見ないのに。昔の湊が、麦わら帽子を被って笑っている。砂場の隅で、夕方のオレンジ色に照らされて、控えめな笑顔で。
週明け、教室の窓際。朝日がガラスで砕けて机の上に散った。湊が遅れて教室に入り、俺の席に来て、いつものように言う。
「おはよう」
「おう、おはよ」
それだけで、体の芯がきちんと目覚める。
「今日も僕の家で勉強する?羊羹あるんだ」
「食べ物で釣る気か?ぜひ行かせてください」
笑っているうちにチャイムが鳴った。後ろの黒板には「春休みまであと7日」とでかい字。数字は、確実に減っていく。
減っていくことが、少しだけ怖くて、でも楽しみでもあった。
教室の扉を開けると、友人らの声が飛んでくる。
「東堂、またデカくなったか?」
肩を掴まれ、腕、足を握られる。おい誰だ胸筋触ってきたやつ。
「冬、走れねーからさ。雪降ってて滑るし。だから家で筋トレしてた」
「筋肉バカが」
「うるせぇ。健康優良児って言え」
笑い声が弾ける。湊はまだ来てない。俺が早めに来たから当たり前なんだけど。
席に鞄を置いたところで、他クラスで遊びに来てたのだろう、見慣れない女子がくるりと振り向いた。校内でもかわいい女子と名の通る子だ、友人が騒いでいた。明るい茶の髪を耳の後ろで留め、マスクの上からでも目元が華やいで見える。
「東堂くん、鍛えてるよね。ちょっと触っていい?」
「しょ、しょうがねぇな」
内心で慌てつつも、肘を曲げて力こぶを作る。指先がそっと二の腕を押して「すごーい」と笑われると、どう反応していいかわからず、曖昧に頷くしかない。女子の面識がはっきり言ってないからだ。
その瞬間、後ろから友人に腕を首に回される。
「お前ずりぃぞ!ニヤニヤしやがって」
「やめろバカ、折るぞ首!」
ふざけた小競り合いで、冬の空気がほぐれていく。チャイムが鳴り、プリントを配られたり席替えしたりと進んでいく。湊はいつのまにか席に着いていた。
放課後。コートを着込み、帰り支度をしていると、さっきのかわいい女子が机の端に手を置いた。
「東堂くん、たまには一緒に帰らない?」
「悪い、湊と帰——」と言いかけたところで、横から湊の声が落ちてきた。
「ええっと、僕、今日用事あるから。大丈夫だよ」
いつもの穏やかな笑顔。俺は一瞬だけ視線を合わせる。用事か。そんなこと初耳だが。
「やった。久遠くんもそう言ってるし行こうよ」
「あ、ああ。じゃ、途中まで」
その子は、そういえば湊を王子呼びしないんだよな。思いながら並んで歩くと、彼女は会話の間に小さく息を弾ませた。冬の空気は人の声を澄ませる。
「東堂くんの事、前から気になってたんだ」
交差点の信号が赤に変わる。立ち止まった足に、冷たい風が吹き抜ける。
「え、告白?」
「そうかも?」
冗談半分の返しに、半分だけ本気の返事。告白。初めてされたな。
彼女が首を傾げる。
「他に好きな子、いるの?」
思考が一瞬空白になって、そこへ真っ先に浮かんだのは、湊の横顔だった。マフラーからのぞく喉、笑うときに目尻が柔らかく落ちる形。
変な間ができてしまった。
「そんなことは——」と言いかけたところで、彼女はふっと視線を外し、微笑みを崩した。
「もういいや」
それだけ言って、さっと踵を返す。
「え、ええ?」
困惑を置き去りに、彼女の背中は人混みに紛れていった。信号が青に変わる。俺はしばらく立ち尽くして、ようやく歩き始める。ふと、教室の引き出しに教材を置きっぱなしにしたことを思い出した。
冬は鍵が閉まるのが早い。走って戻ると、夕方の教室は廊下の反射光だけで薄明るかった。人の気配はほとんどなく、暖房の音が遠くで唸っている。教室の扉を開けて、息を飲んだ。
——湊が、そこにいた。
俺の椅子に腰をかけ、机に両腕を伸ばして額を乗せている。顔は伏せられ、細い肩がわずかに上下していた。
「湊」
呼ぶと、ゆっくり顔が上がる。潤んだ瞳。赤くなった頬。体温で解けた雪みたいに、弱い光が宿っている。
ドキ、と心臓が跳ねた。だが同時に、額の熱を想像して現実に引き戻される。
「保健室行くぞ」
「⋯⋯うつしちゃうから。帰ってよ」
突き放すような言い方。らしくない。
「俺、体は丈夫なんだよ。知ってるだろ」
問い詰めず、腕を貸し、ゆっくり保健室まで歩く。湊の体は、冬の夕方に似合わない熱を帯びていた。
保健室。先生は熱を測り、額に手を当て、眉を寄せる。
「少し高いわね。お母さん呼ぶから。——東堂くん、ちょっと見ててあげて」
そう言うと、どこかへ電話をかけに出て行った。俺と湊だけが残る。暖房の風がカーテンをわずかに膨らませる音。時計の針の音が、いつもより大きく響く。
沈黙が落ちる。湊は目を閉じたり開けたりして、呼吸を整えようとしていた。やがて、乾いた声が落ちる。
「⋯⋯さっき、一緒に帰った女子は?」
「うーん⋯⋯先に帰って行った」
「何、それ」
一言そう言って、湊の目がにじんだ。こぼれそうな涙を慌てて袖で拭おうとして、うまくいかず、肩が震えた。
「どうした、苦しいのか」
湊は首を横に振る。
「蓮司くんに、恋人ができたら⋯⋯もう、遊べなくなるのかなって。隣にいられなくなるのかなって。今日、ちょっとだけ、そう思って⋯⋯自分でも、変だと思うのに、悪い想像が止められなくて。話、飛躍しすぎてるよね。——でも、不安で、不安でしょうがなくて」
体調が朝から良くなかったのだろう。思えばいつもより静かだった。体調が悪ければ思考もネガティブになってメンタルも落ち込んでいく。俺は棚に置いてあるタオルを取って、湊の額の汗をそっと拭った。
「シャツ、少し緩めるぞ。汗拭くから」
湊が微かにうなずいたのを見て、俺は指先でボタンを外した。ひとつ、またひとつ。ゆっくりと、布の合わせ目を開く。
覗いた肌は、一切の日焼けもなく白かった。細い鎖骨が浮いてる。肌は熱のせいか、ほんのり赤くて、でもどこまでもきめ細かい。
思わず息を詰める。なんだろう、この気持ち。変に喉が渇いて、無意識に唾を飲み込んでいた。
いやいやいや、病人相手に何考えてんだ俺。そう自分に言い聞かせて、わざとらしく咳払いひとつ。タオルを手に取って、汗ばんだ首筋へ滑らせた。
「う、ぁ⋯⋯痛い、れんじ、くん……」
その声がやけに艶っぽく聞こえて、慌てて手を引いた。
「悪い! ちょっと強すぎた」
動揺を隠すように、今度はゆっくりと、優しく押さえるようにタオルを滑らせる。鎖骨のくぼみ、胸の上を拭うと、湊の呼吸が深く、静かになる。
目を閉じて、わずかに眉を寄せている顔が綺麗だった。睫毛が長く、肌に影を落としている。髪がほんの少し乱れて、額に張り付いているのも、無防備で。
こんなに近くで顔を見るのは初めてかもしれない。
タオルをそっと引いて、視線を逸らした。何もなかったみたいな顔をしながら、けど、掌の熱だけは消えてくれなかった。
「⋯⋯ありがと」
「まあ、これくらい」
それ以上、言葉が見つからない。カーテンの外で足音がして、保健の先生が戻ってきた。
「お迎え、十五分くらいで来るって。東堂くん、このままそばにいてあげて」
「はい」
先生はまた事務室へ下がっていく。白い空間に、俺たちだけ。湊のまつ毛の影が頬に落ち、呼吸が静かに上下する。
やがて、保健室のドアがノックされ足音が近づく。
「失礼します」
見慣れた上品なコート。湊の母親だ。
「ご迷惑をおかけしました」
「いえ」
俺が立ち上がると、母親は湊の額に手を置いて低く囁いた。
「帰りましょう」
湊はゆっくり頷く。
「東堂くん、湊を見てくれてありがとう」
「お大事に」
それ以上、言い足すべき言葉が見つからない。俺は頭を下げ、保健室を出た。
家に帰って、シャワーを浴びる。熱い湯が背中を叩く音の合間に、保健室の白さが何度も蘇る。泣き方。細い喉の上下。湊は俺が恋人できたら泣くほど嫌なんだな。
布団に潜る。目を閉じる。閉じた瞼の裏に、濡れた睫毛の影がまた浮かぶ。
眠れねえ。
ベッドから這い出て、マットの上で腕立て伏せを始める。二十、三十、四十。腕と胸に血が回って、呼吸が荒くなる。
「早く寝なさい!」
廊下から母親の声。
返事をして、腕立てをやめ、もう一度布団に潜る。心拍の熱が胸の奥に残っているのに、今度は不思議と、眠りがすぐに来た。
明日、湊の熱が下がっていますように——と、何度か祈っているうちに眠ってしまった。
翌朝。氷みたいな空気が窓の桟に張りついて、指先の感覚をじわじわ奪っていく。外へ走りに出るか迷った末、今日は家でスクワットとプランクに切り替えた。呼吸があがるにつれて、昨日の保健室の湊が何度も脳裏に浮かぶ。額に乗せたタオルの湿り、掠れた声。
運動して冷えた体をシャワーで叱咤して学校へ。教室は暖房がまだ追いつかず、吐く息がほんの少し白い。
朝のHR。まだ隣は空席。出席確認で「久遠——欠席」と聞こえたとき、胸の中の何かが小さく沈んだ。予想はしていた。湊の体はかなり暑く苦しそうにしていたから。
午前中の授業は、板書がやけに多い。ノートを取りながら、手だけが仕事をして、頭は別のことを考えている。休み時間、友人が机をどん、と叩いた。
「昨日さ、お前——」
「うん」
「噂になってるぞ。隣のクラスの女子と帰ってたって」
「途中まで、な」
「どうすんの? 狙う?」
「振られたわ」
あっけらかんと言い切ると、周りにいた奴らは少し気まずそうにする。聞いてきた友人は「ふーん」と肩をすくめ、「東堂は筋肉が恋人だからな」と勝手にまとめた。悪くない雑な結論に笑って頷いた。あの女子のことはいま言われるまで忘れていた。俺はなんて薄情なやつなんだ。
昼、湊にメッセージを送るか迷って、結局短く送った。
『熱、下がった? 大丈夫か』
既読はつかない。黒板のチョークの音、廊下の足音、すべてが少し遠い。午後の授業がどうにか終わり、放課後。教室に残っていた俺は、プリントを二枚だけ折って、鞄に突っ込んだ。湊が欠席した科目の板書を写しておいたノートも。
届けに行くか。
冬の夕暮れは、やたらと足が速い。学校を出る頃には、空がもう群青に傾いていた。吐く息が白く、コートの中の突っ込んだ指がかじかんで少し痛い。住宅街に入ると、門扉の前に見覚えのある黒い車が停まっている。インターホンを押すと、すぐに返答があって、扉が静かに開いた。
「いらっしゃいませ。東堂様」
「どうも。これ、湊くんに渡してください。今日の分のプリントです」
玄関ホールで黒いスーツの人に封筒を渡そうとしたとき、「蓮司くん」と二階から声がした。見上げると、厚手のカーディガンを羽織った湊が、階段の手すりに手を添えて立っていた。顔色はまだ青白いけれど、昨日よりはずっと良い。
「プリント今日の分な。悪い来ちまって。すぐ帰るから」
「大丈夫。良ければ、ちょっとだけ歩かない?」
外? と目で問うと、湊は「少しだけ」と笑った。庭は芝が霜で薄白く、踏むと細かい音がした。息が白く重なる。
「昨日は、ごめん」
「何が」
「突き放すみたいな言い方、して」
「気にしてねぇってそんなん」
湊は、足もとを見ながら言葉を探していた。
「⋯⋯用事なんてなかったけど、蓮司くん、彼女欲しいのかなって思って、邪魔したくなくて。でも教室から一緒に帰ってるのが見えた途端、胸が、急にぎゅってなって。自分でも、わけがわからなくて」
「わかるよ」
驚いたように顔が上がる。俺は、吐く息を見ながら続けた。
「俺だって、お前が別のやつと帰ってたら凹むっつーか。⋯⋯多分校庭十周以上して自分を誤魔化す」
湊は見えやすい人だ。目尻の影が柔らいで、息が深くなる。庭の端に小さなベンチがあって、二人で腰をおろした。木の肘掛けが冷たい。
「あ、誤解されても困るからな。昨日の子に告白ぽいことは言われた。けど俺が黙っていたら向こうから『もういいや』って帰ってった。俺に愛想がついたみたいにな」
湊はポケットから小さなカイロを取り出して、俺の手のひらに押しつけた。
「サンキュー。っとそうだ。これ、ノートの板書、写しといた。字はなるべく丁寧には書いたけど。頑張って読みとけ」
「きれいだよ」
「嘘つけ」
「ほんとに。⋯⋯ありがとう」
受け取る指が、昨日よりしっかりしている。よかった。
呼吸がまた少し深くなったところで、窓の明かりが庭に伸び、黒いスーツの人が控えめに声をかけた。
「湊様、そろそろお部屋に」
「うん。蓮司くん、来てくれて嬉しかった」
「明日は来れたら来いよ、ゆっくり休め」
「明日は行くよ、ありがとう」
「おう。じゃ、また明日」
湊は静かに頷き、手を小さく振った。背を向けて歩き出す。
「⋯⋯僕も、気持ちをしまえる引き出しがあったらなぁ」
かすれた声が背中越しに届いた。
振り返った時には、もう扉の向こうだった。
翌日、湊はマスクをして登校した。教室に入ってくると、「大丈夫?」「無理しないでね」と口々に声をかけられている。湊は「ありがとう」と笑い、俺の席に寄ってきた。
「ノート返すね、ありがとう」
「おう。もう平気か」
「平気。熱も下がったし呼吸もちゃんとできるよ」
「よし」
担任の板書が将来の進路の話に。体育館での全体説明、オープンキャンパス、模試の日程。黒板の文字が現実味を帯びて、クラスの空気がほんの少し重くなる。
放課後、帰り道。信号待ちで、湊がぽつりと口を開いた。
「進路、蓮司くんは決めた?」
「全然!めんどくせー。でもまだ働きたくないし、大学受験進学かな」
「僕も大学進学、かな。場所は全然決めてないけど」
「お前ならどこでも行けるだろ、成績オールA判定」
青に変わる。白線を踏む足の裏に、固い冷たさ。湊はマフラーの端を指で整えながら、ふっと笑った。
「⋯⋯ どこでも行けるだなんて、そんなこと言ってくれるの蓮司くんだけだよ」
どう言う意味か、と問う前に角の公園で小学生が小さな雪だるまを作っているのが目に入り湊が笑う。
「かわいいね」
「俺らも作るか」
「指、かじかむよ」
「遊びには多少の犠牲が必要だからな」
言いながら、手のひらに雪を集めて丸める。冷たさは容赦ないが、笑いながらやっていると、なぜか指先の痛みがほんの少しだけ遠のく。小さな雪玉を二つ積んで、その辺の枝をつけてへたくそな顔ができる。
「よし、“みなと”と名付けよう」
「“れんじくん”にしたら?」
「押し付け合いやめろよ」
笑う声が、曇天に吸い込まれていく。濡れた指を服で拭って歩き出す。
帰り道、神社の横を通る。節分のポスターが貼られていた。俺はふと、口に出していた。
「そろそろ節分か、三月なんてすぐに来るよな。」
「小さい頃、病室のベッドで、家族で豆まきしたことある。福は内、って小さな声で」
その情景が一瞬で浮かんで、胸が温かくなった。久遠家は穏やかな人らだからいいな。俺の家族は全てにおいて全力だから、病室で豆まきなんてしたら窓が割れるだろう。
「今年は俺の家でやるか。俺、鬼やるから」
「ふふ、鬼は外、ってできなくなっちゃうよ」
湊は笑って、前を向いた。
日常は、ゆっくりと整っていく。湊の欠席はあの日だけで終わり、放課後の図書室での勉強も再開したし、時々久遠家に行かせてもらっている。めっちゃ美味いケーキを出してもらうのは申し訳ないが勉強のモチベにも繋がる。
それでも、ときどき。あの日の保健室のカーテンの白が不意に蘇る。湊の涙、熱、あの言葉。
『もう、遊べなくなるのかな』
『隣にいられなくなるのかな』
夜、布団に入る前に腕立てを二十回だけ増やす。呼吸が整って、眠りが早く来る。
夢を見た。眠りが深いから、夢なんてほとんど見ないのに。昔の湊が、麦わら帽子を被って笑っている。砂場の隅で、夕方のオレンジ色に照らされて、控えめな笑顔で。
週明け、教室の窓際。朝日がガラスで砕けて机の上に散った。湊が遅れて教室に入り、俺の席に来て、いつものように言う。
「おはよう」
「おう、おはよ」
それだけで、体の芯がきちんと目覚める。
「今日も僕の家で勉強する?羊羹あるんだ」
「食べ物で釣る気か?ぜひ行かせてください」
笑っているうちにチャイムが鳴った。後ろの黒板には「春休みまであと7日」とでかい字。数字は、確実に減っていく。
減っていくことが、少しだけ怖くて、でも楽しみでもあった。
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