人事部のOLが、どうあがいても死刑になる悪役令嬢に転生!?~生き残るために男装したら、冷酷王子の側近として学園生活するハメになりました~

夕景あき

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自分を好きになるって?

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「扉の鍵が開いててよかった。外は満月だから明るかったけど、ここは真っ暗だなぁ。ランプを持ってくればよかった·····あー、やだな。夜の学校って雰囲気あるからな。変な夢を見た後だから、余計に怖く感じるな·····」


 ミカはそんなことを呟きながら、手で壁沿いをつたいながらソロソロと進んだ。
 
 あと少しで教室に着こうかというタイミングで、少女のすすり泣く声が聞こえてきた。

 ミカはギョっとして、歩みを止めた。


(何かの聞き間違いか·····いや。泣き声だ·····。ダルの声·····でも無さそうだし。·····まさか幽霊·····いや、教室に誰かいるのかも·····)


 「誰かいるの?」


 ミカが声をかけながら、たどり着いた教室に入ったのと同時に、すすり泣く声がピタリとやんだ。

ガラス張りの天窓からの月光に照らされて、教室内が隅々まで見えた·····が、人は誰もいなかった。

 ミカは背筋が凍るように冷たくなった。


(っええ!あの、すすり泣く声は!?ま、まさか·····本当に幽霊だったの!?)


「·····ダ、ダっ、ダル!ダルはいるよね?」


「ふぁー。おお、ミカ!どうしたウサ」


 大きな欠伸をしながら、ぴょこんとダルが草むらから出てきた。
 呑気そうなダルの様子に、ミカは恐怖で凍りついた自分の心が解けるのを感じた。


「はァー、ダルの顔みたらホッとした。白猫ルルもそこで丸まってスヤスヤ寝てるし、みんな元気そうで良かった·····」


「ミカも寂しがり屋ウサな。明日には、一緒のベッドで寝てあげるから安心するウサ」


「いや、寂しかった訳ではないんだけど·····ベッドも出来れば寝返りうちたいから、1人で寝たいんだけど·····うわぁっ!」


 ふと教室の窓際に目を向けると、さっきまでいなかったはずの、うずくまった人影を見つけ、ミカは思わず叫び声を上げた。


 よく見ると、その人影は銀髪の少女、ナンシー・レオンであった。

 ナンシーは泣き腫らした顔をしている。


「ナンシー!そこで何しているの?」


「うー、ミカエル様に見つかっちゃった。ちょっと使獣のカータスに、話を聞いてもらっていただけなんです·····」


 ナンシーの前にある岩の上にカメレオンが、ちょこんと乗っていた。


「ナンシーの使獣のカメレオンの力は、1分程度消すことウサ」


 ダルが説明してくれた。


(そうか·····あの銀色に一瞬光ったのはナンシーの髪の毛だったのか·····あの泣き声も幽霊ではなく、ナンシーか!!)


 安堵しながらミカは、ナンシーに近寄り話しかけた。


「ナンシーも使獣の声が聞こえるの?」


「いえ、聞こえないけど·····でも、ウチは何かあると、いつもカータスに話すんです。変な行動って笑われるかもしれないけど·····でも、カータスは時々首を傾げたりしながら、ちゃんと聞いてくれてるんです!カータスに聞いて貰えると、心が落ち着くんです。」


「分かるよ、その気持ち。私も使獣のダルに話すと落ち着くよ。」


「分かってくれるんですね!ミカエル様!」


「同級生だし、タメ口でいいよ?何か悲しい事があったの?良かったら私も話を聞くよ?」


「悲しいというか、苦しいというか·····ウチ人に嫌われたくないからって誰にでもいい顔してしまう自分が大嫌いで·····」


「そっかぁ。自分を嫌いになるのは、苦しいし、辛いよね。泣きたくなる気持ちも分かるよ」


「ジェスにも今日言われたけど、カメレオンみたいに人によってコロコロ態度変えるのを、よく指摘されて·····自分でも治したいとは思ってるんだけど·····人からどう思われるかばかりが気になってしまって苦しい·····」


「そうかぁ。人に嫌われたくないって思うのは普通の感情だし、人により態度を臨機応変に変えられるのは仕事上では大切なスキルだったりするんだけど·····そのせいでナンシーが自分を嫌いになって、苦しくなってしまうなら問題だね」


「ウチの態度のせいで今日、ソフィアにも酷いことしちゃった·····本当にこんな自分が大嫌い!」


「ソフィアには謝れば大丈夫だと思うよ?苦しいのは相手が軸になってるからではないかな?自分を軸に考えたらどうかな?」


「自分を軸って?」


「相手にどう思われるかより、自分がどうしたいかを優先させるって事かな。ナンシーが苦しいのは、自分の気持ちを蔑ろにしてるからだと思うよ。要は自分をもっと大切ししてあげるって事だね。」


「自分を大切にするって、自己愛ってやつ?ワガママとか、ナルシストにならないかな?そんな事したら皆に嫌われてしまうんじゃないかな?」


「うーん。なんて言えば分かりやすいかな。ナンシーにとって大切な存在って誰かな?」


「ウチにとって大切な存在は、使獣のカータスだね!」


「例えばそのカータスが他の使獣の兎にも犬にも猫にも嫌われたくなくて、みんなに合わせて疲れてしまってたら、なんて声をかけてあげる?」


「カータスが!?そんな事になったら·····そんな無理しないで大丈夫!誰に嫌われても私は絶対に嫌わないよ!私は絶対に味方だから、誰に嫌われても大丈夫だから、安心して自分の好きなように行動して良いんだよ!って声かけてあげるかな·····」


「そうそれ!それを自分自身にも言ってあげて!」


「そっかぁー!自分を大切にするってそういう事か·····なんか分かってきたかも。ありがとう、苦しかったのが心が軽くなった気がするよ。ウチ明日、ソフィアに謝って話しかけてみる!」


「うん。ソフィアも喜ぶと思うよ。·····さぁ、もう遅いからナンシーも自分の部屋に帰ろうか」


「あ、ホントだ!もうこんな時間!早く寝なきゃだね!ありがとう、ミカエル!」


 晴々とした表情のナンシーを見て、ミカも心が温まるのを感じたのだった。
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