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第十六話 空腹
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「2人か、よく来たな。暑かっただろう。 まずは茶でも飲みなさい。」
積み上げられた箱の後ろから、おじいさんトカゲが机を持って来た。
軽そうな机ではあるが、軽々持ち上げるところを見るに、杖の割に動けるようだ。
背丈は160くらいだろうか、街の大人よりは小さいが、今の俺よりは大きい。
トカゲの肌年齢には詳しくないが、鱗は灰色がかった緑で、所々はがれかけており、年齢を感じる。
目元には小さな眼鏡がかけられており、トカゲの瞳、その大きくて黄色い瞳を強調していた。
おじいさんトカゲが机を用意するほんの数秒の間で、ネコ型ロボットが氷の入ったお茶を2杯運んできた。
尻尾3本でおぼんを器用に安定させており、熟練のウェイトレスを彷彿とさせた。
尻尾はさっきまで2本だったはずだが、増えたり減ったりするのだろうか。
「ありがとよ! うめぇよ。」
「ありがとうございます。いただきます。」
少年とお礼がかぶった。
お茶がつくやいなや少年はすでに半分飲み干していた。
「早速だけど、こいつのパーツを見繕って欲しいんだ。」
俺がお茶を飲む最中に、キャスターにのった俺の炊飯器をさしながら、少年が話を進める。
お茶はキンキンに冷たく、日光で火照った体にありがたかった。
緑茶に見えたが、少しスッと抜けるスパイスの香りがする。 何かのブレンドだろうか。
おじいさんトカゲが炊飯器を覗き込む。
おじいさんはトカゲ姿なので眉毛がなく、その分表情は読みにくかったが、瞬きの頻度と、アゴに手をやる姿勢から、集中していることは理解できた。
「こいつぁ、足がないな」
「そうなんだ、あんま金もないから余ってるやつねーかなって思ってさ。」
「フン、あまりもんなんか本来ないんじゃがな。どれも大切なパーツ達じゃ。」
「まぁ古くなって処分予定の在庫がないわけじゃあない。そいつも動けず喋れずじゃあ可哀想だしな。」
おじいさんが炊飯器を見ながら喋る。
そういえば学習はいつ終わるのだろうか。
今はお昼過ぎ、多分地下の研究室?を出てから30分はたってるはずだが、喋る様子はない。
「もうすぐ喋れるようになるんですか?」
久々に俺が質問をする。
少年といると、少年が話してくれるのでなかなか俺の出番は必然的に少なくなる。
「そいつの学習は既に半分は終わっとる、本来もう喋れる筈じゃが、音声用スピーカーが内蔵されとらんのじゃ」
「可哀想に、お主にも何度も喋りかけていたはずじゃぞ。 意識は生まれているのに何も気付いてもらえない状態じゃな。」
それは可哀想なことをしてしまった。
おまんじゅうで浮いた弁当代と、ちょっと節約できた交通費くらいしか手元にはないが、なんとかして意思疎通は出来るようにしてやりたい。
「ちょっとまっちょれ」
おじいさんトカゲが奥の部屋に消えていった。
「公式改造ショップは教会の近くにあるんだけどよ、あそこはちょっと高いんだ。 店も綺麗でこっちより人気もあるんだけどさ。」
少年が小さな声で教えてくれた。
馬車でもらったチケットはそこで使うのか。お金が手に入ったら行きたいものだ。
「でもな、こっちの方がパーツ性能は上なんだぜ! じーさんの目利きもあるしな!」
一等地にある大手の部品屋より、町のさびれた部品屋の方が良い、なんてことがあるんだろうか。
「あったあったぞ」
おじいさんトカゲが段ボール箱をかかえて戻ってきた。
「足にはこれが良いじゃろう、中古の古いやつじゃが当時の隠れた名機でな。なかなかの性能じゃぞ。」
おじいさんトカゲが5センチ台の灰色のゴムボールを親指と中指でつまんで、くるくると見せる。
指の形状自体は人間の形に近いようだ、手のひらが細長く、爪や鱗もあるのだが、そう思った。
顔が完全に大トカゲのそれなので、手がトカゲの手じゃないところに違和感があるのかもしれない。
「トガタ製のスモールゴムタイヤだ。国産ギアだな。 でかい高低差には弱いが、スクーターの全力にもついていける速度まで耐久がある。」
おじいさんトカゲは自信がありそうに続けた。
「それとこいつじゃな。」
ゴムボールをしまい、5センチほどの黒い棒を取り出した。
「旧型のバーチャルアイドル用マイクじゃ。一時期流行ったことがあっての。 ボディに格納出来ると良いんじゃが。」
おじいさんトカゲはそういいながら、右手の中指をひねるようにさすっていた。
少しすると中指がポロリと落ちた。
皮一枚で手と繋がっている。
中指があった場所からは、ドライバーのような工具がせり出してきている。
「もう取り付けていいか?」
「お願いします。」
「こいつは接続だけしてあげれば自分で格納位置を調整できるんじゃ。」
そういいながら、おじいさんは中指のドライバーで炊飯器の一部から板を外した。
接続端子が8種ほど見えた。
そのうちの一つにおじいさんがマイクを嵌め込む。
「これで喋れるようになるはずじゃ。自分で弄れるように中は見ておきなさい。」
炊飯器の後ろの板が外れている。 この世界も端子は何種類か種類があるようだ。
この板を外して拡張パックをつけるんだな。
突然下から可愛らしい声が聞こえる。
「腹が減って死んでしまうのですよ。 お前はマスター失格なのです!!」
これはマイクのせいなのだろうか、炊飯器から女の子ボイスが聞こえる。
まさか異世界転載での俺のヒロインはこいつなのだろうか。 いや、まさかな。
積み上げられた箱の後ろから、おじいさんトカゲが机を持って来た。
軽そうな机ではあるが、軽々持ち上げるところを見るに、杖の割に動けるようだ。
背丈は160くらいだろうか、街の大人よりは小さいが、今の俺よりは大きい。
トカゲの肌年齢には詳しくないが、鱗は灰色がかった緑で、所々はがれかけており、年齢を感じる。
目元には小さな眼鏡がかけられており、トカゲの瞳、その大きくて黄色い瞳を強調していた。
おじいさんトカゲが机を用意するほんの数秒の間で、ネコ型ロボットが氷の入ったお茶を2杯運んできた。
尻尾3本でおぼんを器用に安定させており、熟練のウェイトレスを彷彿とさせた。
尻尾はさっきまで2本だったはずだが、増えたり減ったりするのだろうか。
「ありがとよ! うめぇよ。」
「ありがとうございます。いただきます。」
少年とお礼がかぶった。
お茶がつくやいなや少年はすでに半分飲み干していた。
「早速だけど、こいつのパーツを見繕って欲しいんだ。」
俺がお茶を飲む最中に、キャスターにのった俺の炊飯器をさしながら、少年が話を進める。
お茶はキンキンに冷たく、日光で火照った体にありがたかった。
緑茶に見えたが、少しスッと抜けるスパイスの香りがする。 何かのブレンドだろうか。
おじいさんトカゲが炊飯器を覗き込む。
おじいさんはトカゲ姿なので眉毛がなく、その分表情は読みにくかったが、瞬きの頻度と、アゴに手をやる姿勢から、集中していることは理解できた。
「こいつぁ、足がないな」
「そうなんだ、あんま金もないから余ってるやつねーかなって思ってさ。」
「フン、あまりもんなんか本来ないんじゃがな。どれも大切なパーツ達じゃ。」
「まぁ古くなって処分予定の在庫がないわけじゃあない。そいつも動けず喋れずじゃあ可哀想だしな。」
おじいさんが炊飯器を見ながら喋る。
そういえば学習はいつ終わるのだろうか。
今はお昼過ぎ、多分地下の研究室?を出てから30分はたってるはずだが、喋る様子はない。
「もうすぐ喋れるようになるんですか?」
久々に俺が質問をする。
少年といると、少年が話してくれるのでなかなか俺の出番は必然的に少なくなる。
「そいつの学習は既に半分は終わっとる、本来もう喋れる筈じゃが、音声用スピーカーが内蔵されとらんのじゃ」
「可哀想に、お主にも何度も喋りかけていたはずじゃぞ。 意識は生まれているのに何も気付いてもらえない状態じゃな。」
それは可哀想なことをしてしまった。
おまんじゅうで浮いた弁当代と、ちょっと節約できた交通費くらいしか手元にはないが、なんとかして意思疎通は出来るようにしてやりたい。
「ちょっとまっちょれ」
おじいさんトカゲが奥の部屋に消えていった。
「公式改造ショップは教会の近くにあるんだけどよ、あそこはちょっと高いんだ。 店も綺麗でこっちより人気もあるんだけどさ。」
少年が小さな声で教えてくれた。
馬車でもらったチケットはそこで使うのか。お金が手に入ったら行きたいものだ。
「でもな、こっちの方がパーツ性能は上なんだぜ! じーさんの目利きもあるしな!」
一等地にある大手の部品屋より、町のさびれた部品屋の方が良い、なんてことがあるんだろうか。
「あったあったぞ」
おじいさんトカゲが段ボール箱をかかえて戻ってきた。
「足にはこれが良いじゃろう、中古の古いやつじゃが当時の隠れた名機でな。なかなかの性能じゃぞ。」
おじいさんトカゲが5センチ台の灰色のゴムボールを親指と中指でつまんで、くるくると見せる。
指の形状自体は人間の形に近いようだ、手のひらが細長く、爪や鱗もあるのだが、そう思った。
顔が完全に大トカゲのそれなので、手がトカゲの手じゃないところに違和感があるのかもしれない。
「トガタ製のスモールゴムタイヤだ。国産ギアだな。 でかい高低差には弱いが、スクーターの全力にもついていける速度まで耐久がある。」
おじいさんトカゲは自信がありそうに続けた。
「それとこいつじゃな。」
ゴムボールをしまい、5センチほどの黒い棒を取り出した。
「旧型のバーチャルアイドル用マイクじゃ。一時期流行ったことがあっての。 ボディに格納出来ると良いんじゃが。」
おじいさんトカゲはそういいながら、右手の中指をひねるようにさすっていた。
少しすると中指がポロリと落ちた。
皮一枚で手と繋がっている。
中指があった場所からは、ドライバーのような工具がせり出してきている。
「もう取り付けていいか?」
「お願いします。」
「こいつは接続だけしてあげれば自分で格納位置を調整できるんじゃ。」
そういいながら、おじいさんは中指のドライバーで炊飯器の一部から板を外した。
接続端子が8種ほど見えた。
そのうちの一つにおじいさんがマイクを嵌め込む。
「これで喋れるようになるはずじゃ。自分で弄れるように中は見ておきなさい。」
炊飯器の後ろの板が外れている。 この世界も端子は何種類か種類があるようだ。
この板を外して拡張パックをつけるんだな。
突然下から可愛らしい声が聞こえる。
「腹が減って死んでしまうのですよ。 お前はマスター失格なのです!!」
これはマイクのせいなのだろうか、炊飯器から女の子ボイスが聞こえる。
まさか異世界転載での俺のヒロインはこいつなのだろうか。 いや、まさかな。
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