子どもの時間

キリ

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第三章

おやつの時間

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「マヤっっ!マヤっっ!」

リカの声が聞こえる。
うっすら目を開けるとみんなが私の顔を覗き込んでいた。

「マヤ大丈夫?」「なにされたんだ?」「平気か?」

みんなが口々に聞いてくる。

「み、、んな、、、?」

頭が重い。リカは頷きながら私の手を握りしめた。

「鬼はなんて言ったの?」

アカネが私をまっすぐ見つめて聞いてくる。

「、、、、、」

「マヤ!答えて!」

アカネが問いただすように顔を近づけてきた。アカネの声にリカがビクッと身体を震わせる。

「悪い子、、お仕置き、、13歳、、良い子、、」

出ているのかわからないぐらいの声で返す。
私の言葉を聞き、アカネが考えるように眉間にシワを寄せた。

「また13歳。つまり5年前ってことよね、、。だから、、、」

アカネがブツブツ言っている。
リカが私に毛布を持ってきてかけてくれた。
アカネ以外他のみんなも心配そうに覗きにこんでくる。
身体に力が入らない。ボーッとする。
しばらくすると誰かが「そっとしておいてあげよう。」と言い、みんな散っていった。
リカだけは私の手を握り続けていた。

キーンコーンカーンコーン。
学校のチャイムで目が覚める。眠ってしまっていたらしい。

「平気?」

リカが身体を起こしてくれる。

「ありがと。」

ゆっくり立ち上がる。なんだろう。頭に靄がかかったみたいになっている。不思議な感覚だ。

【おやつの時間です。
良い子はおやつを食べましょう。】

校内放送がかかる。
アカネがお菓子を2つ持ってきて押し付けてくる。その口にはスナック菓子が咥えられていた。

「食べて。じゃないとまた鬼が来るわよ。」

ゴクッとお菓子を呑み込み、アカネが言う。アカネの言葉にリカと私はお菓子を開けた。
美味しそうな匂いがする。こういうチープなお菓子を美味しそうと感じるのは中学生以来だ。年と共に高いお菓子を好むようになり、見かけても食べなくなってしまった。
唾液が出てきて、迷わず口に放り込む。コーンポタージュの味がじゅわ~と口に広がる。美味しい。続け様に2個、3個と手が伸びる。

「うぇっ」

突然、後ろで嗚咽が聞こえた。
振り返ると男子の1人が涙目で、お菓子を床に溢してしまっている。

「駄目だろ。食わないと。なにされるかわかんないぜ。」

隣の男子が背をさすりながら言う。

「無理だよ。こんな状況で、お菓子なんか食えって言う方が、、」

ついには泣き出してしまった。
何故だろう。知っているはずなのに、2人の名前が思い出せない。
2人のことをぼーっと見つめていると、足音が聞こえてきた。"鬼"だ。
隣でリカが固まっている。まずい、不意にそう思い、急いでスナック菓子を口に放り込む。リカの口にチョコを一粒入れたところで、引き戸が勢いよく開いた。
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