駿河ノ国妖怪物語 ~知られざる妖怪ワールド~

やまねとも

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章5 道程

幼怪のオナカはフロンティア

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そして立ち上がる妖怪ウィンドウ。

何故か豪華仕様になっている気がする。

プロフェッショナルエディションとかいうやつかな?

まぁいいや。えーっと動画格納庫~っと。


うむ!しっかり保存されているな。

急な撮影だったので失敗してるんじゃないかと思ったよ。


大きな謎のハゲ親父との死闘がしっかり保存されていた。

こいつは下手な加工をせずに、スルガちゃん様へ直接送信したほうがよさそう。

妖怪互助会経由での送信も考えたが、互助会の職員さんに見せていい内容なのか判断つかん。

異世界の大型妖怪とのエンターテイメントバトルはトップシークレットに属する可能性のある動画だ。


動画を添えてメールをスルガちゃん様へ直接送信してから数分後、スルガちゃん様が妖怪テレポートしてきた。

「看護師さん呼んで!すぐ部屋移動するよ」

なにやら切羽詰まった感じだな。

枕元を手繰ってナースコールセンターにつなぐ。


「こちらナースセンター、何かありましたか?」

「スルガだ、入院患者を一人部屋に移動させてほしい」

「了解しました!すぐに向かわせます!」

さすがは妖怪キング様、看護師さんの反応も早い。


院内だと言うのに看護師が走り込んできて、ベッドごと個室に連れて行かれた。

見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはないな。


駿河ちゃん様は個室全体へと結界を張ったようだ。


え・・・なんで?まさか殺されるの?

送りつけた動画って、口封じするようなヤバいやつだったの?


ああ駿河ちゃん様の目が怖い。

赤く光ってて怖い。

普段と違う怖い。

これは死にましたね。

「何を怯えている?」

「食べないで!僕は美味しくない妖怪だよ!」

美味しくないアピールしておく。

ゲンコツ貰った。


「送ってきた動画なんだが、あれは本当か?」

普段は余裕のある幼怪スルガちゃん様なのに、なにやら殺気を含んでいる瞳で問い詰めてくる。


「メールでもお知らせしたように、拉致された先で起こったことです。敵の妖怪は、一体だけでした」

「間違いなくウィズ呪文で滅ぼしたのを確認しました。不味かったですか?」


駿河ちゃん様は暫く考えながら、枕元に新しく用意された果物籠からリンゴを掴むと口へ放り込んだ。

ナースセンターからのプレゼントが、俺の…俺の大切なビタミン源が、容赦なく幼怪のオナカの中へ。

理不尽だ、泣きそうだよ。

あとで姫ちゃんに慰めてもらおう。


「動画の中に出てきた巨人は、間違いなく神だ。ダイジョーは神を滅ぼしたことになるな、おめでとう」

拍手してくれるが、これはアレだ。

悪のボスとかが、敵対者の愚かな者に呆れを伝えるための「パチ、パチ、パチ」とゆっくり叩くアレ!


「やっぱり僕をたべるの?」

死にそうな声で尋ねてみた。


「食べてほしいの?」

スルガちゃん様ほんと怖い。


「滅相もございやせん。ヘヘヘ」

時代劇の下っ端のように、へりくだった態度で答えておく。


「通常の攻撃手段では神は滅ぼせないはずなんだけど、ダイジョーのウィズ呪文は特別なのかもしれないな。アブリールだったっけか」


「ウィズ作品中で、「噂だけの存在」の魔法の一つですよね。発動させてみたら吸収系の魔法でした」

「アブリールは、以前にも一度発動したことがあります。異世界に呼び出されたときにモグッ支部で使用しました。どちらも妖怪コアのオーバードライヴ状態で、です」


「オーバードライヴを発動させすぎだバカモン!」

「だが、よくやったな」


え!これマジで褒めてくれている感じ?

デレちゃったってやつ???

恋のお話が始まっちゃう系? 

オッパイが大きかったら考えたけど、無乳はちょっと… 

また殴られました。やっぱ思考読んでるよね?絶対読んでるよね!



「昔話をしてあげよう」

そう言ってスルガちゃん様は果物籠からグレープフルーツを取り出し、果物ナイフで半分に切り、果実をスプーンで掬いながら語ってくれた。

それは、考えるのも嫌になるような壮大な昔話。

地球の惑星再生に関わる話から、スターシップに乗って宇宙にはびこるゴミどもの掃討。

神々に汚染された惑星群を丸呑みする話まで、冗談かと思うようなコズミックホラーを語っていただいた。

詳しくは宇宙旅行へ同行した妖怪たちの纏めた書籍である、電子版:妖怪億夜物語大全集(妖怪互助会発行)に収めてあるらしい。

正直ドン引きでしたよ。


宇宙で最初に神の存在自体を食らったであろう妖怪スルガ。

神を喰らう行為、それは数億年溜め込まれた知識と、神の蓄えていた力を吸い上げることになる。

スルガちゃん様と共に旅立った妖怪たちは、スルガちゃん様ほどではないが神の力を吸収している。

対して俺は呪文での吸い取り行為であったため効果は薄いが、間違いなく並の妖怪では吸収できないほど莫大な力をを得ているだろうとのこと。

それは消化と反映に時間はかかるが、やがては互助会の幹部クラスの力が発揮できるようになるだろうと語られた。


「その力を使って、異世界にはびこるゴミ神どもの根絶を頼みたい」

スルガちゃん様は見たことのない真面目な顔でマスクメロンをシャブリながら、そうおっしゃった。

「長期戦の予感がしますが、概ね理解しました。ゴミの根絶を目指し努力します」

かの存在に誘拐被害にあい、その姿を目撃し、また倒した実績を持つ俺は反対する理由はない。


「一見、友好的な神も存在する。だが、時を経るに従って性根が腐っていくので、見つけたら即殺するべきだ。過去何度も煮え湯を飲まされた」

「また奴らは、次元移動を使用して、姿を隠すことができる。神の存在が残ってしまっているのは、次元の狭間に逃げ隠れた愚か共の残党だ」

「宇宙に散りし、我々、妖怪と魔族は手を取り合い、これらを根絶せねばならない」

「根絶に必要なものがあれば、スルガ及び妖怪互助会は支援を惜しまない。そのために互助会は存在する」


「話に聞く天使とはどういった存在ですか?」

以前、妖怪互助会発行の妖怪マガジンに載っていた存在のことを聞いてみた。

「神々の使いである天使は哀れな存在だ。日ノ本にも2体残っている。それらは妖怪ほどの力や寿命はないが、主体性に乏しく、力の強いものに操られやすい存在だな」

「確か播磨と蝦夷地に隠れ住んでいる個体が確認されたと聞いた」

スルガちゃん様はマスカットを摘みながら答えてくれた。

播磨というと兵庫か、異世界の調査を行う前に、訪ねてみようとしていた場所だ。

「なるほど、一度どのような存在なのか確認しておきたいですね。もしかして兵庫ピレネーの仙人と言われている存在でしょうか?」

「詳しくはわからないな、互助会にまとめた資料があるはず、聞いてみると良い」

「わかりました、動けるようになったら行ってみたいと思います」

「そうだな。地球を含めた世界に不要なゴミを始末するために協力は惜しまない。頼んだぞ!」

スルガちゃん様はそう言い終えると、俺のために用意されていた果物籠のバナナ束を持って去っていった。


あれ?新しく用意してもらった果物籠、一口も食べないうちに全部無くなっていますよ?


幼怪スルガちゃん様の腹部はフロンティア。

果物はスルガちゃん様の胃袋と言う名の異世界へ旅立ったのだ。

幹部曰く、惑星群すら飲み込む恐るべき胃袋は日々膨張し続ける。

ちょっとした宇宙空間のような胃袋はファンタジックな容量になってるそうだから、胃の中が異世界化していても不思議ではないのだ。

フロンティアスピリッツあふれるスターフリートはスルガちゃん様の胃の中を探検してみると良いかもしれないね!

新しい生命、新しい文明が待ち受けていてもおかしくはないね。
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