聖女と呼ぶにはあまりにも自堕落な聖女

霜月七桜

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第一章

2 祈りに似た何か

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リキャルド市から南に離れる事、馬車で三日。
その依頼場所が川向こうに見える崖の上。
依頼場所は、はたから見たらただの崖崩れが起きた場所でしかなかった。

「まあ、中に入らない限り、襲われたりしないわよね。真上から行っただけでも、ヤバそうなのはアレでもこの状態でもわかるけれど」
「それに入ったら出てこれるか分からないし、ですしね。──ちゃんと準備してこなかったら、私達も少佐待ったなしです」
「…冒険者達は入って対処しようとするわけ、か」
「そうですわね。で、大抵はまともな状態で帰ってこないらしいのです。よくて少佐、基本中尉。とても悪くて軍曹ですわよ」

はあ、とため息をついたシスター・ヨンソン。

「で、私はここでシスター長が影響が少なくなる保護を張り替えるまでの盾役。兼、少佐は保護、中尉と軍曹は処理役って事かぁ」
「橋向こうにはいかないこと。幾ら貴方でも中尉まったなしですわ」
「中尉確定かぁ。まあ、軍曹じゃないだけマシと思うことにするよ。──いってくるよ、
「ええ、お気をつけて。

ここではシスター長とシスターであることを強調され、肩をすくめながら私は来た道と反対方向へ向かう。と、同時に魔力を高めるポーションを飲んだ。
それにしても、ヒト型を処理するのはとても気が重い。神に仕える仕事なのに、こういう汚れ仕事までしなきゃいけないとは異世界ってのは本当に過酷だと思う。
こういう時、依頼って言うのはもっとこう動物っぽい何かだったりしないものかなぁ、なんて愚痴をこぼしたくもなるが誰かが聞いてくれるわけでもないし、愚痴ったところでこの依頼が変わる事もない。
崖下まで降りると、手足に魔力を込める。私の攻撃方法としては、手足に魔力(私の属性は聖)のを込め殴るか、その魔力を飛ばすかの二択である。今回は基本飛ばす方向である。
ああ、後は目に出てきたヒト型が正常ひと異常まものかを見分ける魔法もかけておく。正常なら保護だし、以上なら処理をしなければいけないから、見えた時に分かるようにね。
そんなことを、誰にいうでもなく思っていたら、空気が重たくなる。バリアの張替えが始まったのだろう。古いバリアが解除されたのが、ひりひりと伝わる。
ヒト型がこちらへ来やすいように、橋向に魔力を飛ばす。まあ、魔力でヒト型を釣ってるような物だと思ってくれれば。
……とはいえ、今の所来たヒト型は基本、異常である。気分は落ちるばっかりだ。
ちゃんと祈っておくべきだったかな。今までは割と祈りに似た何かだったから、それの罪が今になってきているのかもしれない。
さっさと張り終えてほしい所ではあるけれど、もう少し時間はかかりそうである。


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