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第一章
5 それは楽しい話ではないから
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マキタンミが話したことは以下の通り。
その依頼はリトマネンという男爵が依頼主だったこと。
搭に入った時、何かに見られているような気がしたこと。
その何かは一人二人、ではなく大勢だった気がすること。
見ていたのはワイト達ではないことは確かであること。
マキタンミはコッコと幼馴染で、コッコに好意を持っていたこと。
この依頼が終わったら、コッコに告白する気だったこと。
「それから…それかりゃ……………」
「お子さんは何人作るつもりでした?」
「3にんきょうだいで…………zzzzzzzzz」
そこそこ飲ませたところで、マキタンミは酔いつぶれた。まあ、途中からは水だったけれど、その辺は酔っ払い度と雰囲気で酔って行ったのだろう。
搭内の詳しい話は記憶を少し弄れて、気分を落ち着かせられるシスターと合流できる修道院に入ってから聞くことにするとして。割と重要そうな話はここで聞けた気がする。
「…で、どうなんですシスター長」
「リトネマンという男爵に心当たりはありませんが、何かに見られているような気がする、っていう意見には心当たりが何個かありますわね。うちの公国にもそういう感じの魔術の使い手はいらっしゃった気がしますわね」
「あー…、つまりあれ?あそこ以外にもあそこの内側へ行ける何かがあって、そこに冒険者を送り込んでその様子を見ているやべー奴らがいるって事…???」
「そうなりますわ」
「まじかあ…」
大分げんなりした。素面で聞いてたら馬車の荷台を壊していたかもしれない。ほんと、一緒に飲んでてよかった。
まあ、私は上戸なので飲んでて意識を失う感じの酔い方ができないからあれなんだよなあ、今回のあれに関しては。
「まあ、リトマネン関係はアロ、スオサーリ、ユリアンッティアのメンバーに任せましょう。彼女たちは有能ですからね、そう時間もかからずに解決はしてくれるでしょう」
「男爵以上の貴族も絡んでるからだろうからそう上手く行くとは思わないけれどなあ」
「その辺はネズミのしっぽ切りとして男爵を切る可能性もあるのでは?」
「ああ、なるほど」
侯爵が何かやってたら子爵が、子爵がなんかやってたら男爵が、男爵が何かやってたら大商人がネズミのしっぽ切りとして切られる。これはまあ悲しいけれど、この世の本質というか。
たまに侯爵がそのままネズミのしっぽとして切られる事もあるけれど、そんなことは10年に一度あるかどうかである。
「まあ、なんにせよ、忙しくなりますわね」
「はーん、それが終わったら、私の休み、しっかり取らせてもらっても?」
「ちゃんと礼拝をするなら考えますわ」
「──考えとくよ」
はぁ、とため息をついたシスター・ヨンソンを横目に、私はもうちょっとリキュールを飲んでいた。
その依頼はリトマネンという男爵が依頼主だったこと。
搭に入った時、何かに見られているような気がしたこと。
その何かは一人二人、ではなく大勢だった気がすること。
見ていたのはワイト達ではないことは確かであること。
マキタンミはコッコと幼馴染で、コッコに好意を持っていたこと。
この依頼が終わったら、コッコに告白する気だったこと。
「それから…それかりゃ……………」
「お子さんは何人作るつもりでした?」
「3にんきょうだいで…………zzzzzzzzz」
そこそこ飲ませたところで、マキタンミは酔いつぶれた。まあ、途中からは水だったけれど、その辺は酔っ払い度と雰囲気で酔って行ったのだろう。
搭内の詳しい話は記憶を少し弄れて、気分を落ち着かせられるシスターと合流できる修道院に入ってから聞くことにするとして。割と重要そうな話はここで聞けた気がする。
「…で、どうなんですシスター長」
「リトネマンという男爵に心当たりはありませんが、何かに見られているような気がする、っていう意見には心当たりが何個かありますわね。うちの公国にもそういう感じの魔術の使い手はいらっしゃった気がしますわね」
「あー…、つまりあれ?あそこ以外にもあそこの内側へ行ける何かがあって、そこに冒険者を送り込んでその様子を見ているやべー奴らがいるって事…???」
「そうなりますわ」
「まじかあ…」
大分げんなりした。素面で聞いてたら馬車の荷台を壊していたかもしれない。ほんと、一緒に飲んでてよかった。
まあ、私は上戸なので飲んでて意識を失う感じの酔い方ができないからあれなんだよなあ、今回のあれに関しては。
「まあ、リトマネン関係はアロ、スオサーリ、ユリアンッティアのメンバーに任せましょう。彼女たちは有能ですからね、そう時間もかからずに解決はしてくれるでしょう」
「男爵以上の貴族も絡んでるからだろうからそう上手く行くとは思わないけれどなあ」
「その辺はネズミのしっぽ切りとして男爵を切る可能性もあるのでは?」
「ああ、なるほど」
侯爵が何かやってたら子爵が、子爵がなんかやってたら男爵が、男爵が何かやってたら大商人がネズミのしっぽ切りとして切られる。これはまあ悲しいけれど、この世の本質というか。
たまに侯爵がそのままネズミのしっぽとして切られる事もあるけれど、そんなことは10年に一度あるかどうかである。
「まあ、なんにせよ、忙しくなりますわね」
「はーん、それが終わったら、私の休み、しっかり取らせてもらっても?」
「ちゃんと礼拝をするなら考えますわ」
「──考えとくよ」
はぁ、とため息をついたシスター・ヨンソンを横目に、私はもうちょっとリキュールを飲んでいた。
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