聖女と呼ぶにはあまりにも自堕落な聖女

第一章

８ 不幸が薄く。

さて、そんなわちゃわちゃしていると。客室のドアが開いて、話を聞いていた二人が入ってきた。

「相変わらず仲のいい事。いい事ですけど、ここは外であることを忘れずに」
「お疲れさん。んで、いつから何処行けっていうんや？」
「ゾンネンベルフの森でイノシシ狩り。準備もあるだろうから、って事で行くのは明後日の朝だね」
「朝かあ」
「前日は飲みすぎんなや、アン」
「アバルキ姐には言われたくないですー」
「そうですよ、エミーリア」
「なんやと。一緒につぶれるまで飲ませたるからな、ライラ」
「のん」

肩を組もうとしたアバルキ姐の手を払ったランキラ姐。いや、まあ仲いいからできるしぐさなのはわかっている。
そして、それはわかっているけれど、それでもわたわたするイホ姐が可愛いから見たいっていう動きかもしれない。いやわかるんだけども。

「あ、終わりました？」

そして、それを冷静に見ていたシスター・ヨンソン。いやまあ、確かに冷静に見るのがいいんだけどさ。

「そんで、ゾンネンベルフの森やっけ」
「だね。…まあ、私達なら楽勝だろうけれど」
「まあ、そやろな。いつもなら、ウチらが受けようっていったら断られそうやしね」
「そうなんですよね。まあ、ここではあまり深く追及はしませんが」

シスター・ヨンソンがそういってうなずいた。まあ、ここはそういう場所であるからして、深くいけば反応できずにやられるかもしれないので、出る必要性がある。
とりあえず、お茶が入ったコップをまとめて、客室の外に出る。ここではやらない、という空気がある。
いや、やれないのだろう。だけれども、言ってしまえばそうもいかないかもしれない。だからこそ、ここでは言わないのだ。