大陸鉄道の死神 〜【二重人格】で【一時間しか動けない】異世界諜報員は復讐のために暗躍する〜

佐渡の鹿

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序章

0.【コードネーム『死神』5】

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 食堂車両に入って様子を伺う。

ターゲットは一人、小太りの男の方が食堂車両に入ってすぐ右の座席に座っていた。怪しまれないように奥のバーカウンターへ向かう。そして目の前のマスターに話しかける。

「次の駅までどのくらいだ?」

「そうですね。9時を少し過ぎた頃に発車して、現在が午後0時半を少し過ぎた頃です。
 このままの調子で行きますと午後1時30分には『青原あおばら』に着くはずです。」

(『一時間以内』には。次の駅で逃げるにしても必ず行動するはずだ。
 なぜなら、一緒に逃げるだけならわざわざこの列車で合図を送り合わない。
 
 連中はこの列車で動く、早いところケリをつけなければ不味い。)

 二等車両からもう一人の男が入ってきた。
男はバーカウンターへと向かってくると、俺とは二席離れた席へと座る。
男はポケットから紺色のハンカチを取り出してカウンターに置く。

チィーン 
 
小太りの男が卓上ベルを鳴らす。ウェイトレスの女性が注文を取りにやってくる。

「ご注文は?」

「そうだね、ワイン…はやめて、コーヒーを。
それからパンケーキを…そうそう林檎は乗せないでパンケーキのリンゴは嫌いだよ。粉砂糖とかかけないでね。
あぁ!!最初っからデザートじゃないパンケーキと言えばよかった。
このメニューのやつにするよ。
蜂蜜のかかっていないコイツをね。」

 ウェイトレスは注文内容を復唱し、一礼して厨房へと向かった。
 ちらり横目で男の方を見ると男の周りには……何も無い。男が持っていたトランクが無くなっている!

(そうかコイツらの目的はーか、まずい!!早く探さなければ。)

 隣に座っていた男が二頭車両方面への扉へと向かっていく。

(奴は目的のものを探しに行ったのか。
この車両の構造を考える、全てで七両編成、先頭車・手荷物車両・個室の客室車両・食堂車両・二等車両が2車両・展望車両。

手荷物車両は無い、落とし物でも添乗員達に気付かれて回収される可能性があるからだ。

 となれば他の車両だ……。
そもそも、なぜわざわざこの食堂車両に呼び出した。
隠し場所を伝えるためだ。まずは人の目を気にせずに、怪しまれず隠せる所。さっきの会話が怪しい、何かヒントは……。)
 
 俺は急いで後方の車両へ、男の後を追った。正確には展望車両と二等車両の間の連結部付近にあるトイレへと向かった。


 
「かかったな。」
 さっきからつけている男にバレないように通路に身を隠す。男が通り過ぎるのを待ってから今度は俺が後をつける。

 餌に食いついたようだ。俺たちを嗅ぎ回っている男を排除する。
 
 コートの裏ポケットには拳銃、スボンで隠れるようにナイフを巻き付け、ベルトには隠しナイフ。
 できれば音を立てたくはない、依頼人がこの列車から降りるまで死体を発見刺せるなとうるさいからな。あのテーブルにいるうるさい男が。まぁ囮になってくれるだけよしとしよう。

 ガラガラッッ
 二頭車両目の出口と展望車両の入り口との間に目的地はある。展望車両には人はいない。次の駅まではもうすぐだ。
 影ができないようにトイレの扉に張り付く。
 
ノブを右手に持って、左手には足に巻き付けていたナイフを持つ。
右手で扉を突き放すようにして開けて、その手を戻す勢いで中の奴を殴りつける。
そのまま心臓を一突きすればこれで終わりだ。

中でゴソゴソと音がする。

 ブスッッッ

 張り付いていた扉の隙間、右手の手首に針が突き立てられる。痛みで手を緩めた一瞬、ドアを開けられ顎の下から針で刺される。

 ズズズッー

咄嗟にナイフを突き出す、男が突きをかわしざまに俺の右手を掴み片膝を突き出しておりやがった。

 ボキンッー 

「んグゥぅぅ~!?」

(こいつ舌を痛いっッ、クソッ針が舌まで貫通しているっ。
口の中にだんだん血が溜まってくる。苦しいっ、だが変だ!!呼吸ができない痺れてくるっ!!)

「ングッッ!?フグッンンー!!」
( 苦しい!!息ができない!!引きずり込まれる。)

「苦しいだろ?毒だよ。熊なら5分ってとこの強めの毒だ。お前らわざと俺の前で隠し場所話したんだろ?バレバレだぜ。お前は殺しで食ってるかもしれないけど、俺は心理戦で食ってるんだ。裏のかきあいならこっちのもんだ。」

(この男にバレていた!!クソっっ。声を上げようとしても口の中が血でいっぱいになって苦しい。鼻は男につままれて息ができない!!)

「お前らの暗号は幼稚だったぜ。
と『WASH』手洗い……トイレって言うことだろう?これじゃあ見つけてくださいって言ってるのと同じだぜ?
 もしバレないと思っていたなら帝国舐めすぎだ……おっと独り言になっちまった。 」
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