喪女がビッチな悪役令嬢になるとか、無理ゲー過ぎる!

黒塔真実

文字の大きさ
13 / 117
第一章

束の間の逢瀬

しおりを挟む
『義妹と俺の仲を勘違いするなんて、止めて欲しい。
 フィーネを妹以上に思うことなんて、たとえこの身が1万回業火に焼かれて生まれ変わったとしても有り得ない』

 それは「恋プリ」の中でフィーネとの仲を誤解して走っていくヒロインちゃんを追いかけて捕まえ、エルファンス兄様がきっぱりと言い放った台詞である。

 今思うと「そこまで言うか!」って感じだけど
 とにかく1万回どころか、たった1回生まれ変わっただけで妹以上になれたんだから……。
 ある意味、シ、シナリオに勝った?


「この隠し扉がこんなに役に立つとは」

「お兄様……」

 深夜、隠し通路を通って寝室にしのんで来た私を迎え入れる、お兄様の目は熱っぽく、優しい。

 後ろ手に扉を閉じると、さっそくその温かい胸に飛び込んでいく。


 愛しのエルファンス兄様は公爵家に養子入りするとともに、帝国の最重要軍事機関である魔導省に仕官していた。
 ガウス帝国が大陸一の強大国になれたのも、他国の追随を許さない魔導技術の高さと、それを戦争に持ち込んだおかげなのだ。
 ゆえに魔導省の入省できるのは貴族の身分だけではなく、優れた能力の持ち主。エリート中のエリートのみ。
 そこに14歳という異例の若さで入ることができたなんて、さすが私のエルファンス兄様!
 
 とにかくお兄様は基本的に勤務している昼から夕方過ぎまでは屋敷にいないので、二人でゆっくり過ごせるの夜遅くの時間帯だけだった。
 私達はあの誕生日以来、こうして一日も欠かさず逢瀬を重ねてきた。
 しかし、二人で過ごせるのもいよいよ今夜が最後。

 明日はとうとう神殿へ旅立つ日。

 切れ長の吸い込まれそうに深い青い瞳を見つめながら、私は少しでもお兄様の姿を脳裏に焼きつけようとして、美しい顔の輪郭を何度も指でなぞってみた。
 そしてできるだけその温もりや感触を憶えていたくて、銀髪に触れたり、身体に抱きついたりした。

「やっぱりもう抱いてしまおうか……」

 そんな私に対し、エルファンス兄様は時折、冗談とも本気ともつかずにそんなことを言う。
 でも今では知っている。
 お兄様は決して私が本気で嫌がる事はしないことを……。

「……私はもう……お兄様のものです……」

 胸の内を言葉で伝えると、私を膝に乗せ、優しく髪をすくように梳かしてくれていたお兄様も、

「フィーネ……愛してる……」

 と、想いを込めるように返してくれた。

 思えば、愛してる、とはっきり言われたのは、これが初めてのような気がする。

「ついこの前までは自分がこんな気持ちになるとは想像だにしていなかった。いくら見目麗しかろうとも、お前は毒のようで、侵されてしまうのが怖かった……。
 でも今は外面も内面も、お前のなにもかもがたまらなく愛しい」

「お兄様……」

 それは何よりもの私への褒め言葉だった。

「私も愛してます! とても、とてもお兄様のこと!」

 たまらず目の前の胸に顔を埋め、自分も同じ気持ちであることを訴える。
 エルファンス兄様それを受け止めるように、きつく私の身体を抱き締めてくれた。

「いよいよ明日か……」

「……うん……」

 遠い瞳をして呟くお兄様の腕をぎゅっと掴む。

 こんなに身を千切られるような別れがあるなんて、人との関わりが薄かった前世の私は知らなかった。

「フィーネ、約束しろ」

 急に鋭く硬い声で言われ、私はお兄様の顔を見上げる。

「……何を?」

 エルファンス兄様は大きな手で私の頬を両側から包み込むと、まるで言い聞かせるように一つ一つの言葉をゆっくりと口にした。

「決して俺以外の男にはこの身体を触れさせるな」

「……は、はい」

「心を許すのも駄目だ。
 出来るだけ俺以外の男と話すな顔も見るな見せるな」

 神殿だからそもそも異性と会う機会はほとんどないと思うけど。

「分かりました、お兄様!」

 どんな無茶を言われてもイコール愛情だと感じられて嬉しくて、素直に頷く。

「お前は……?」

「え?」

「お前は俺に何も言わないのか?」

「私は……」

 問われて考える。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...