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第五章「苦しみを終わらせる者」
3、惨い真実
「……母を……辱めた?」
怪訝そうな顔で訊くセドリックに、ガートルード王太女が重ねてはっきりと言う。
「そうです。お前の母親は、リューク王に陵辱されたのを苦に自殺したのです」
「……ですが、母は、父が討たれたのを苦に自殺したと……」
言い淀みつつもセドリックの顔からはみるみる血の気が引き、全身が小刻みに震えだしていた。
「いいえ、違います。そこにいる我が国の宮廷魔法使いギモスの遠見の術を介し、実際にこの目で見たので間違いありません。
卑劣なリューク・バロアによって隠されていただけで、夫であるエリオット3世が戦死するより前にセレーナは自ら命を絶っていました。白髪の魔法使いに命じて遺体を凍らせて死亡時期を偽装して葬儀を行ったのです」
衝撃を受けたように固まるセドリックのかわりに、私が確認する。
「……カエイン、この話は真実なの?」
「さあな、その件について俺はいっさい関与していない。セレーナ妃が監禁されていた塔を管理していたのもアロイスだからな。
ただ言えるのは、ギモスは俺の次に遠見の術を極めているので、アロイスの結界では覗き見を防ぎきれなかっただろうということだけだ」
カエインは美しい金の瞳を細め、遠回りに事実を肯定した。
「母が……そんな……!!」
発作的に叫ぶセドリックに向かって、王太女はさらに追い打ちをかけるように言いつのる。
「セレーナは連日に渡るリュークからの辱めに耐えきれず、最期は見るからに正気を失っていました……。
こうなったからこそ明かしますが、妹は嫁いだ頃からずっと長きに渡ってあの男に執着され続け、そのことをかなり気に病んでいたのです。
夫や息子のあなたにはとても言えなかったようですが……」
つまりリューク王は兄から王位だけではなく、絶世の美女である妻まで力づくで奪ったということか。
なんとも胸糞の悪い話だ。
「……そんな……そんな……母が……」
あまりに惨い母の死の真相を聞かされたセドリックは、がっくりと床に膝を落とし、両手で頭を抱えて深く腰を折った。
言葉にならない呻きをあげ、床の上で悶絶するセドリックの苦しみは計り知れず、かける言葉も見つからない。
いったん話し合いはそこで中断され、続きはセドリックの精神状態が落ち着いてからということになった。
「……少し、一人になりたい……」
亡霊のように虚ろな顔で呟いたセドリックは、おぼつかない足どりで廊下の向こうへと消えていった。
苦い気分で親友を見送った私は、つねに背後にいるカエインを振り返る。
「私も一人で休みたいから、夕食まで放っておいてくれる?」
「分かった」
私の言葉を受けたカエインは後方へと視線を流す。
「ギモス、俺の部屋はシアと続きの部屋にしてくれ」
「畏まりましたカエイン様。急ぎ、そのように取りはからいます」
その口ぶりや王族中心のあの場にいたことから、この国の宮廷魔法使いのギモスはそれなりの権限を持っているらしい。
ただしレイヴンより後ろを歩いているところを見ると、魔法使いとしての順位は上から三位以下なのだろう。
ともかく、案内された個室で一人になった私は、ひとまずセドリックのことはそっとしておくことにして、夜まで頭の中を整理しながら身体を休めた。
怪訝そうな顔で訊くセドリックに、ガートルード王太女が重ねてはっきりと言う。
「そうです。お前の母親は、リューク王に陵辱されたのを苦に自殺したのです」
「……ですが、母は、父が討たれたのを苦に自殺したと……」
言い淀みつつもセドリックの顔からはみるみる血の気が引き、全身が小刻みに震えだしていた。
「いいえ、違います。そこにいる我が国の宮廷魔法使いギモスの遠見の術を介し、実際にこの目で見たので間違いありません。
卑劣なリューク・バロアによって隠されていただけで、夫であるエリオット3世が戦死するより前にセレーナは自ら命を絶っていました。白髪の魔法使いに命じて遺体を凍らせて死亡時期を偽装して葬儀を行ったのです」
衝撃を受けたように固まるセドリックのかわりに、私が確認する。
「……カエイン、この話は真実なの?」
「さあな、その件について俺はいっさい関与していない。セレーナ妃が監禁されていた塔を管理していたのもアロイスだからな。
ただ言えるのは、ギモスは俺の次に遠見の術を極めているので、アロイスの結界では覗き見を防ぎきれなかっただろうということだけだ」
カエインは美しい金の瞳を細め、遠回りに事実を肯定した。
「母が……そんな……!!」
発作的に叫ぶセドリックに向かって、王太女はさらに追い打ちをかけるように言いつのる。
「セレーナは連日に渡るリュークからの辱めに耐えきれず、最期は見るからに正気を失っていました……。
こうなったからこそ明かしますが、妹は嫁いだ頃からずっと長きに渡ってあの男に執着され続け、そのことをかなり気に病んでいたのです。
夫や息子のあなたにはとても言えなかったようですが……」
つまりリューク王は兄から王位だけではなく、絶世の美女である妻まで力づくで奪ったということか。
なんとも胸糞の悪い話だ。
「……そんな……そんな……母が……」
あまりに惨い母の死の真相を聞かされたセドリックは、がっくりと床に膝を落とし、両手で頭を抱えて深く腰を折った。
言葉にならない呻きをあげ、床の上で悶絶するセドリックの苦しみは計り知れず、かける言葉も見つからない。
いったん話し合いはそこで中断され、続きはセドリックの精神状態が落ち着いてからということになった。
「……少し、一人になりたい……」
亡霊のように虚ろな顔で呟いたセドリックは、おぼつかない足どりで廊下の向こうへと消えていった。
苦い気分で親友を見送った私は、つねに背後にいるカエインを振り返る。
「私も一人で休みたいから、夕食まで放っておいてくれる?」
「分かった」
私の言葉を受けたカエインは後方へと視線を流す。
「ギモス、俺の部屋はシアと続きの部屋にしてくれ」
「畏まりましたカエイン様。急ぎ、そのように取りはからいます」
その口ぶりや王族中心のあの場にいたことから、この国の宮廷魔法使いのギモスはそれなりの権限を持っているらしい。
ただしレイヴンより後ろを歩いているところを見ると、魔法使いとしての順位は上から三位以下なのだろう。
ともかく、案内された個室で一人になった私は、ひとまずセドリックのことはそっとしておくことにして、夜まで頭の中を整理しながら身体を休めた。
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