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第2部 闇に死す
第10話-7 終わりの時
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キャンディスの声を聞き、ギンとリッチーは立ち上がる。唾を吐き捨て、リッチーは言う。
「クソッタレ、やってやるよ!!」
口の周りの汚れを左手の甲で拭きながら、ギン。
「カールさん、下がってください! そこにいたら俺たちの攻撃に巻き込まれます!」
ベストゥスが返す。
「喜べ、下郎ども。その必要はもうないぞ……?」
電流が消えていく。ライトニングの魔法が終わったのだ。力を使い果たし、カールは崩れ落ちていく。剣を握っている手がゆるみ、それはずり下がってベストゥスの体から抜ける。ギンは叫ぶ。
「カールさん! しっかりしてください!」
彼は答えない。あるいは、答えられない。どちらにしろ、戦闘不能であることに変わりはないのだ。背後が安全になったベストゥスは怒声を上げる。
「もう容赦はせんぞ! 貴様ら、皆殺しにしてくれる!」
彼女の両手に魔法力が集まる。現れる光球、だが、その輝きは以前よりも格段に鈍い。これほど弱っているなら勝てるかもしれない、ギンたちの胸に希望が蘇る。剣を握りしめギンは号令をかける。
「いくぞ、みんな!」
リッチーの攻撃、矢が放たれる。ベストゥスはミサイル・ジャミングを展開、だがその妨害力は殆どない。彼女の腹部に矢が突き刺さる。
「ぐっ、この程度……!」
キャンディスがショックを放つ。魔法光球がベストゥス目がけて飛び、無効化されず直撃、強烈な衝撃を発生させる。ベストゥスの呼吸が一瞬止まり、まったく身動きが取れなくなる。そこへレーヴが追い打ちをかける。
「燃え尽きろーっ!」
レーヴの手からブレイズ・アローが放たれる。青白く燃え盛る魔法の矢は、狙いたがわずベストゥスに命中、鉄すら蒸発させるほどの猛火を巻き起こす。ベストゥスの悲鳴。
「あぁあぁぁぁぁっー!」
彼女は鎮火を試みる。ありったけの魔法力を放出、どうにか事態を収める。彼女の視界から消えていく炎、その直後、ギンが突っ込んでくる。
「とどめだッーーー!」
全力の剣撃がベストゥスの体を真っ二つに斬り裂く。飛び散る青い血、驚愕するベストゥス。彼女は反撃しようとする、だが、そのために使う体はもはや死んでいる。
「人間ごときがっ……!」
腹の底からの憎悪を視線にこめ、彼女はギンをにらむ。せめてもの抵抗、魔女の呪いを放つ。だが、弱った状態からのそれに十分な威力があるわけもなく。ギンの魔法力に弾かれ、雲散霧消する。
ベストゥスの体が地面に落ちる。彼女の意識が消え去っていく。ギンたちは勝利したのだ。……カールと引き換えに。
ギンたちはカールへと駆け寄る。かがみこみ、話しかける。ギン。
「カールさん! しっかりしてください!」
「……君か……」
「キャンディス、治療を!」
「はい!」
キャンディスはカールの体に手をかざし、ヒーリングを始める。だが、何も回復しない。彼女は泣きそうな顔を浮かべる。
「なんで……どうして!」
「無理だよ、キャンディスくん……。私は、生命力を、使い切った……。もう無理なんだ」
「でも!」
「優しくしてくれて、ありがとう……」
レーヴが叫ぶ。
「気合い入れてよ! まだこれからでしょ! まだこれから、一緒にいっぱい冒険するんだ!」
「そうできたら……嬉しかった……」
リッチーはどうしていいかわからない。彼は凍り付いた声を出すしかない。
「どうしてあんな無茶を……」
「メーユイが死んだ今、私だけが生きていても仕方ない。そういうことなんだよ」
「馬鹿野郎……」
「やはり、私は、生まれていい人間じゃ、なかったのさ……。みんなを不幸にする」
キャンディスが叫ぶ。
「そんなことない! そんなことないんです! だって、私は楽しかった! あなたと一緒に冒険できて、あなたに会えて、幸せだった!」
「だが、メーユイは死んだ……。私と出会ったせいなんだ」
「違う! それは違う!」
「そうかもしれない。でも、もういいんだ……。疲れたよ……」
「死なないで! 死なないでください!」
「……ありがとう……優しい言葉……」
「死んじゃダメ! お願い、生きて!」
「ありがとう……」
「カールさん!」
「……メーユイ……」
「カールさん!」
「……」
カールの目が閉じていく。体から力が抜けていく。呼吸が止まり、胸の上下移動がなくなる。
「カールさん! カールさん、カールさん!」
その後、いくらキャンディスが呼びかけようと、カールは返事をしなかった。いくら呼びかけようと。
ベストゥスが死んだせいなのだろうか、ダンジョンに存在していた魔法封じが消え去り、そのおかげでギンたちはリターンの魔法を使うことができた。彼らは地上へと帰還する、宝珠とカールの遺体、それらと共に。
帰還後のことは手短に語ろう。ギンたちはどうにかコーメルキムの街に帰り、イーホウに事の次第を話し、彼と共にカールの葬儀を行った。
今ここは墓地。カールの墓の手前。ギン、リッチー、レーヴ、キャンディス、全員は墓の前に立ち、墓石を見ている。ぽつり、リッチーが言う。
「いい人だったよな。本当」
誰も答えない。否定の声を上げる者は誰もいない。沈黙、静かな時間、しばらくそのままの状態が続く。
唐突にギンが言う。
「あの宝珠、どうしようか?」
レーヴが答える。
「封印に使ってた奴だしさ、なんか、気味悪いじゃん。誰かに頼んで処分してもらおうよ」
続いてキャンディス。
「でも、誰に?」
「それは、わかんないけど。まさか、カールさんのお墓に入れるってわけにもいかないでしょ。そんなことしたらベストゥスに呪われる気がするよ」
「それもそうですね……」
「うん」
リッチーが提案する。
「いったんセラの街に戻ろうぜ。俺の知り合いに、こういうやばいアイテムに詳しい奴がいるんだ。そいつに頼めばいい」
否定の声を上げる者は誰もいない。どうやら、次の冒険はどういう内容のものか、おおよそが決まったらしい。彼らは墓の前から立ち去る。物音を立てる者がいなくなった墓地は静かになる。
彼らの次の冒険について語る機会があることを願って。終わり。
「クソッタレ、やってやるよ!!」
口の周りの汚れを左手の甲で拭きながら、ギン。
「カールさん、下がってください! そこにいたら俺たちの攻撃に巻き込まれます!」
ベストゥスが返す。
「喜べ、下郎ども。その必要はもうないぞ……?」
電流が消えていく。ライトニングの魔法が終わったのだ。力を使い果たし、カールは崩れ落ちていく。剣を握っている手がゆるみ、それはずり下がってベストゥスの体から抜ける。ギンは叫ぶ。
「カールさん! しっかりしてください!」
彼は答えない。あるいは、答えられない。どちらにしろ、戦闘不能であることに変わりはないのだ。背後が安全になったベストゥスは怒声を上げる。
「もう容赦はせんぞ! 貴様ら、皆殺しにしてくれる!」
彼女の両手に魔法力が集まる。現れる光球、だが、その輝きは以前よりも格段に鈍い。これほど弱っているなら勝てるかもしれない、ギンたちの胸に希望が蘇る。剣を握りしめギンは号令をかける。
「いくぞ、みんな!」
リッチーの攻撃、矢が放たれる。ベストゥスはミサイル・ジャミングを展開、だがその妨害力は殆どない。彼女の腹部に矢が突き刺さる。
「ぐっ、この程度……!」
キャンディスがショックを放つ。魔法光球がベストゥス目がけて飛び、無効化されず直撃、強烈な衝撃を発生させる。ベストゥスの呼吸が一瞬止まり、まったく身動きが取れなくなる。そこへレーヴが追い打ちをかける。
「燃え尽きろーっ!」
レーヴの手からブレイズ・アローが放たれる。青白く燃え盛る魔法の矢は、狙いたがわずベストゥスに命中、鉄すら蒸発させるほどの猛火を巻き起こす。ベストゥスの悲鳴。
「あぁあぁぁぁぁっー!」
彼女は鎮火を試みる。ありったけの魔法力を放出、どうにか事態を収める。彼女の視界から消えていく炎、その直後、ギンが突っ込んでくる。
「とどめだッーーー!」
全力の剣撃がベストゥスの体を真っ二つに斬り裂く。飛び散る青い血、驚愕するベストゥス。彼女は反撃しようとする、だが、そのために使う体はもはや死んでいる。
「人間ごときがっ……!」
腹の底からの憎悪を視線にこめ、彼女はギンをにらむ。せめてもの抵抗、魔女の呪いを放つ。だが、弱った状態からのそれに十分な威力があるわけもなく。ギンの魔法力に弾かれ、雲散霧消する。
ベストゥスの体が地面に落ちる。彼女の意識が消え去っていく。ギンたちは勝利したのだ。……カールと引き換えに。
ギンたちはカールへと駆け寄る。かがみこみ、話しかける。ギン。
「カールさん! しっかりしてください!」
「……君か……」
「キャンディス、治療を!」
「はい!」
キャンディスはカールの体に手をかざし、ヒーリングを始める。だが、何も回復しない。彼女は泣きそうな顔を浮かべる。
「なんで……どうして!」
「無理だよ、キャンディスくん……。私は、生命力を、使い切った……。もう無理なんだ」
「でも!」
「優しくしてくれて、ありがとう……」
レーヴが叫ぶ。
「気合い入れてよ! まだこれからでしょ! まだこれから、一緒にいっぱい冒険するんだ!」
「そうできたら……嬉しかった……」
リッチーはどうしていいかわからない。彼は凍り付いた声を出すしかない。
「どうしてあんな無茶を……」
「メーユイが死んだ今、私だけが生きていても仕方ない。そういうことなんだよ」
「馬鹿野郎……」
「やはり、私は、生まれていい人間じゃ、なかったのさ……。みんなを不幸にする」
キャンディスが叫ぶ。
「そんなことない! そんなことないんです! だって、私は楽しかった! あなたと一緒に冒険できて、あなたに会えて、幸せだった!」
「だが、メーユイは死んだ……。私と出会ったせいなんだ」
「違う! それは違う!」
「そうかもしれない。でも、もういいんだ……。疲れたよ……」
「死なないで! 死なないでください!」
「……ありがとう……優しい言葉……」
「死んじゃダメ! お願い、生きて!」
「ありがとう……」
「カールさん!」
「……メーユイ……」
「カールさん!」
「……」
カールの目が閉じていく。体から力が抜けていく。呼吸が止まり、胸の上下移動がなくなる。
「カールさん! カールさん、カールさん!」
その後、いくらキャンディスが呼びかけようと、カールは返事をしなかった。いくら呼びかけようと。
ベストゥスが死んだせいなのだろうか、ダンジョンに存在していた魔法封じが消え去り、そのおかげでギンたちはリターンの魔法を使うことができた。彼らは地上へと帰還する、宝珠とカールの遺体、それらと共に。
帰還後のことは手短に語ろう。ギンたちはどうにかコーメルキムの街に帰り、イーホウに事の次第を話し、彼と共にカールの葬儀を行った。
今ここは墓地。カールの墓の手前。ギン、リッチー、レーヴ、キャンディス、全員は墓の前に立ち、墓石を見ている。ぽつり、リッチーが言う。
「いい人だったよな。本当」
誰も答えない。否定の声を上げる者は誰もいない。沈黙、静かな時間、しばらくそのままの状態が続く。
唐突にギンが言う。
「あの宝珠、どうしようか?」
レーヴが答える。
「封印に使ってた奴だしさ、なんか、気味悪いじゃん。誰かに頼んで処分してもらおうよ」
続いてキャンディス。
「でも、誰に?」
「それは、わかんないけど。まさか、カールさんのお墓に入れるってわけにもいかないでしょ。そんなことしたらベストゥスに呪われる気がするよ」
「それもそうですね……」
「うん」
リッチーが提案する。
「いったんセラの街に戻ろうぜ。俺の知り合いに、こういうやばいアイテムに詳しい奴がいるんだ。そいつに頼めばいい」
否定の声を上げる者は誰もいない。どうやら、次の冒険はどういう内容のものか、おおよそが決まったらしい。彼らは墓の前から立ち去る。物音を立てる者がいなくなった墓地は静かになる。
彼らの次の冒険について語る機会があることを願って。終わり。
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