VRMMO レヴェリー・プラネット ～ユビキタス監視社会～

第０章 はじめに

第０話 はじめにお読みください Read me

　２０１３年、エドワード・スノーデンという米国人がある機密情報をリークした。

「アメリカ合衆国は大規模な無差別監視を行っている」

　米国の情報機関（ＮＳＡ）の一員として働いていた彼は、その職業生活の中で様々なことを知ったのだ。

「フェイスブック、ヤフー、アップル、グーグルといったＩＴ関連の大企業は、ＮＳＡと秘密協定を結んでいる。
　各社は、ＮＳＡ職員が顧客データに直接アクセスできる秘密システムを構築した」

「ＮＳＡはコンピューター・ネットワーク利用（ＣＮＥ）と呼ばれる情報収集手段を使っている。
　マルウェアを何万台ものコンピューターに感染させ、閲覧画面などを監視している」

「米国から輸出される様々なネットワーク機器、ＮＳＡはそれらの未開封品を定期的に入手し、
　監視用ツールを手作業で埋め込んだのちに未開封のシールを貼り、何もなかったかのように偽装してから出荷している」

　スノーデン氏は心を病んでいるのだろうか。幻覚や幻聴を真実と思いこみ、ありもしないことを本物だと信じこんでいるのだろうか。
　いや、違う。公開された機密情報は声高に主張している。

「すべては真実だ」

　他にも多くの秘密が暴露され、合衆国市民だけでなく世界中の人々が驚き、スノーデン氏へのインタビューが行われ、映画が作られ、本が書かれた。
　詳しいことを知りたい方は、グレン・グリーンウォルド氏の『暴露』を読まれるといいだろう。そこには驚きの事実が赤裸々に記されている。



　まぁ固い話はこの程度にしまして。簡単な事前説明をいたしましょう。
　この作品は、２０８４年に起きたという設定のいろんな事件を、一つの作品にまとめたものです。

　お話の舞台となるのは「レヴェリー・プラネット(Reverie Planet)」という名のＶＲＭＭＯ。それともう一つ、現実世界。
　登場人物は、これら二か所を行ったり来たりしながら物語をつむいでいきます。

　各エピソードは時系列がバラバラになった状態で収録されておりますが、これは意図的なものであり、エラーなどではありません。
　ご理解の程、よろしくお願い致します。



　さて。最後に、「レヴェリー・プラネット」について説明いたします。
　このゲームは剣と魔法のファンタジーではありません。ＳＦであり、主な武器は銃。それとビーム・ソードです。

　プレイヤー諸氏はワンダラー(wanderer)と呼ばれる冒険者になり、体をサイボーグ化した上で未開惑星を探索し、モンスターと戦ったり人間同士で争ったりします。
　２０８４年の日本では、現実世界においてサイボーグ技術が確立されていますから、ゲーム内でも当たり前のようにサイボーグ化が可能です。

　また、サイボーグであるがゆえに特殊能力を発揮することもできます。体を透明化したり（ステルス）、銃弾をはじくバリアを張ったり、二段ジャンプしたり。
　そういうものだとご了承ください。それではさっそく第１話を始めましょう、まずは馬場英知（ばば　えいち）くんの物語です。