VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第12章 すべてを変える時

第201話 正解の探し方 Go in the opposite direction

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《姉川/アカネの視点》
 私が現場に駆けつけた時、☆は既に破壊され、あたりにはレイザーズのメンバーの死体が大量に転がっていた。そしてそれに対してアンドリュー隊が暴力を加えていた。
 ゲタゲタ笑いながら死体を撃つ者、顔を踏みにじる者、腕をねじって破壊する者。想像以上の修羅場を目にして、私の顔は真っ青になった。

 それでも私は自制心を働かせ、ネメシスの副リーダーとして命じた。

「やめなさい! これ以上は無意味、それより次の戦いの準備をしろッ!」

 もちろん事態は簡単に収まらず、いろいろな困難があったが、それについて語るのはもう勘弁だ。
 とにかく私は暴行をやめさせ、次の攻略目標である地下2階を目指すように指示した。これだけ述べて終わりにしたい。



 今、私は地下2階の通路を歩いている。ネメシスの仲間たち、いや、野蛮人たちと共にだ。 
 心の中で何度も繰り返す。この戦いが終わったら絶対に絶対に別の部署へ異動させてもらう、それが無理なら転職する。

 こんな狂ったことにはもう付き合いきれない。この憎しみの世界に身を置いていたら、いつか心を病んでしまいそうだ。
 あたりでは野蛮人どもが楽し気にお喋りしている。

「いやぁ、あの金髪野郎は最高だったよな! ギャーギャーわめいて涙目になって、ザマァみろってんだ」
「アハハ! まぁあれくらいお灸をすえて正解だよ、あんなクズ……」
「そういやお前、アイツに殺されたことがあるんだっけ?」
「まぁね! だから復讐してやったワケ」
「で、成し遂げた気分はどうよ?」
「サイコー!」

 なにがサイコーだ。サイコ(psycho)女め。さっさと地獄に落ちてしまえ!
 自分のイライラが高まっていくのを強く感じ、黙りこむ。なのに無神経にアンドリューが話しかけてくる。

「どうした、アカネ? そんな顔をして?」
「べつに……」
「俺たちは☆を壊し、なおかつ敵を怯えさせた。戦いは順調に進んでいる、素直に喜ぶべきだ」
「その”順調”ってやつですけど。うちは確かにうまくいってますが、他の部隊はどうなんですか」
「スエナ隊は第1エレベーターを確保、そのまま4階へ上がって探索中。そしてパトリシア隊は2階の捜索を終えて、今は3階を歩いている」
「アンズさんの部隊は?」
「さっき連絡があっただろう? 聞いてなかったのか?
 第2エレベーターを確保したが、戦力の消耗がひどい。だからいったんリスポーン地点で態勢を立て直して……」
「あぁ、そうでしたね」

 私はそっけなく返事してまた黙りこむ。生きていれば何も言いたくない時があるものだ。なのに今度は赤羽さんが連絡してくる。

(よう、姉川。アンドリュー隊の様子はどうだ?)
(やりたい放題に大暴れしてますよ! 面倒みきれません!)
(あちゃー、やっぱり?)

 ボスが話に混ざってくる。

(姉川さん、ちょっといいですか。ここまでの暴力行為は想定済みです。だから問題にしませんでした。でも次からは違います、別の方針でいきますよ)
(どういうことです?)
(これ以上にひどい暴力を認めると、我々がコントロールできない事態が発生するかもしれない。
 だからフェスティバルはさっきので終わり。またアンドリューたちが暴れるなら、場合によっては強制ログ・アウトさせなさい)
(いいんですか?)
(どんなことにも限度があります。もう一度いいますが、これ以上の暴力は認めません。分かりましたね?)
(……了解)
(赤羽さんと白木さんも、返事は?)
(はい、了解っす!)
(ラジャー!)
(グッド。では、健闘を祈ります)

 強制ログ・アウトか。あまりいい方法じゃないけど、もうあんな光景は見たくない、容赦なく使おう。
 はぁ、私じゃなくて赤羽さんがアンドリューの面倒をみればよかったのに……。嫌な役はいつも私に回ってくる、ちくしょう。


《赤羽/レッド・マスクの視点》
 姉川たちとの通信を終え、俺は自分の仕事……このパトリシア隊に時間を無駄使いさせるという厄介事を再開する。
 2階をうろついていた時はうまくいった。みんなが俺の言葉を信じてくれたおかげで、部隊を敵がいない所へ誘導できた。

 だがさっき3階に上がってからはどうも雲行きがおかしい。パティが俺を疑い出している。……さすがに露骨にやり過ぎたか?
 それでもやらなくちゃな。俺は、部隊がY字型の通路の交点に着いたタイミングで足を止め、パティに言う。

「さて、この先の分かれ道ですけど。右に行きましょうよ」

 もし左に進むと、敵の☆防衛部隊に出くわすからな。交戦なんてダルいことはやりたくねぇ、頼むから右と言ってくれよ、パティ。


《パトリシアの視点》

 レッド・マスクが話しかけてくる。

「さて、この先の分かれ道ですけど。右に行きましょうよ」

 私はジロリと彼をにらみ、思う。2階を探索していた時、私の隊は不自然なほど敵に出会わなかった。普通に考えれば遊撃隊と遭遇したはずなのに。
 ひょっとしてマスクはレイザーズのスパイで、みんなを罠にハメるため、わざと妙なルートへ誘導しているのでは?

 今回もそうだとすると、右へ行くのは不利益のはずだ。そして不利益の反対は利益なのだから、彼にどう返事したらいいか、もう察しがつく。

「そうね。じゃあ逆に左に行きましょう」

 マスクの頬がひきつる。

「えっ!? いや、そっちはちょっと……」
「嫌な予感がするってわけ? だったらなおさら行かなくちゃ。壊すべき☆はまだ4つもある、どんどん攻めないと」
「でも……」

 このマスクの反応は間違いなくアタリだ。右の通路には誰もいない、左にこそ敵がいる。
 結論は決まった。ならばもうお喋りの必要はない、毅然とした口調で私は言う。

「全員、左へ進め!」

 模範を示すために私が先頭に立って歩き出す。マスクが何か言おうとしてくるが、無視!
 やっぱりこんな仮面野郎は信用すべきじゃない。今度からは聞き流す。
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