VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第12章 すべてを変える時

第213話 最強の力 Union is strength

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《白木/ホワイト・ウィッチの視点》
 味方が叫ぶ。

(敵襲ーっ!)

 敵って誰だよ。あぁ、スエナの部隊か……。さっさと6階に行けばいいのに、なんで5階に来るんだ。うざっ!
 4階で戦った時にあたし言ったじゃんよ、5階に行くかもって。だったら5階を避けて6階に直行するのが当たり前の思考だろ!

 まぁ愚痴ったところで相手が退散するわけじゃないしなぁ。しょうがない、適当にやっとこう。
 味方が撃ち始めたタイミングから少し遅れてあたしも撃ち始め、すぐに弾切れとなる。ベクターR6のマガジンを手動でゆっくり取り換えながら指示する。

(接近戦が得意な人は準備して~。それ以外は射撃続行)

 何人かが(はい)(了解)などと返事するが、その勢いは弱い。こりゃあたしと同じくやる気をなくしてるな。4階の敗戦から立ち直れてないのがバレバレだよ。
 それでもログ・アウトせずにこうして戦っているぶん、抜けていった連中よりずっと頑張り屋さんだわな。いや、むしろ損切りが下手というべきか……。

 ふん。あたしだってね、ぶっちゃけログ・アウトしたいよ。でも仕事でゲームしてる以上、さすがに途中離脱はできんのだわ。
 とはいえこれ以上あくせく戦うのはもう嫌。疲れた。さっさと死んで、今度こそサボれる場所にリスポーンしよっと。

 そう思った直後、曲がり角の向こうから何か小さなもの複数が投げこまれる。それらは一瞬の後に炸裂し、すさまじい爆音と強烈な光をまき散らす。
 クソッ、閃光手りゅう弾か! 気づいた時にはもう遅い、こちらが混乱している隙にスエナ隊が突っこんでくる。スエナの声が響く。

「いけーっ!」

 ソードやカギ爪で武装したスエナたちが暴れ出す。あたしの前方にいる味方が次々にやられていく。こりゃアカン。
 即座にベクターR6を投げ捨て、かわりにソードを手に取る。でも、防衛戦そのものが敗北寸前なのに、今さら頑張って何の意味がある?

 みんなもそう思ってるはずだ。その証拠に、まだ余力のある連中があっさりと斬られ、死に、愚痴る。

(はぁ~、やってらんない。悪いけどさすがにログ・アウトするね)
(あっ、ずるい! 私もやめる!)
(僕もやめます。お疲れさまでした)

 結局こうなるんかい。まったく! それもこれもスエナのせいだ、こいつが余計な騒ぎを起こすからこうして週末に苦労するはめに……。
 そう思ったらなんかイライラしてきた。よし、だったら最後にスエナをぶちのめし、憂さ晴らししてからおさらばといこう。奴はどこだ? あそこか!

「スエナ! 死ねぇーっ!」

 勢いよく突っこんで斬りかかる。手加減無しの必殺の一撃、スエナはそれを赤いソードで受け止めて言う。

「君は……」
「お前のせいで苦労しっ放しだ、馬鹿!」
「苦労って、なにが!?」
「全部だ!」

 あたしは全力でスエナを押してよろめかせ、隙だらけとなった胴体を斬る。余勢を駆ってもう一太刀を浴びせ、今度は蹴り飛ばして罵る。

「どうだ! 思い知ったか、力の差をッ!」
「うぅっ……」

 苦痛のうめき声を漏らし、スエナは無様に崩れ落ちている。よし、このまま殺してやる。あがくなよ、潔く斬られろ!


《スエナの視点》
 いきなり大ダメージを受けたせいで、体が軽くマヒして動かない。これじゃあ防御も逃げも不可能だ……やばい!
 ホワイト・ウィッチがソードを振り上げるのが見える。彼女の声が聞こえる。

「覚悟! くたばれーっ!」

 もうダメ! ボクは思わず目を閉じる。だが、襲ってくるはずの致死の一撃はまったく来ない。かわりにアップルの声と発砲音が耳に入る。

「スエナーッ!」

 目を開ける。ウィッチの後方にいるアップルが、ステアーAUG A3でウィッチを射殺している場面が見える。驚きの表情でウィッチがつぶやく。

「しまっ……バリアし忘れて……」

 ウィッチが倒れる。その横を通り過ぎ、アップルがボクに駆け寄って来る。

「スエナ! 大丈夫!?」
「なんとか……。けっこうダメージ受けたけど、生きてる」
「もう! あなたは大将なんだから、もっと用心深く戦わなくちゃダメでしょ!?」
「ごめん……。いきなりウィッチが襲ってきて、不意を突かれたもんだから……」
「言い訳は後! ほら、立って!」

 アップルに助けられてボクは身を起こす。体のマヒは少しずつ治ってきている、後はアイテムで体力を回復するだけだ。
 やっぱり戦いって怖いね。何が起きるか分からない。そうしみじみ感じていると、死体状態のウィッチが罵ってくる。

「バカ! クソ! 死ね! 後ろから撃ちやがって!」

 冷たい顔をしたアップルが言い返す。

「油断してバリアをしなかったそっちに責任があるでしょ。人をなめてかかるからそうなる」
「うっさいボケ! もういい、じゃあな!」

 捨て台詞を残して死体が消える。アップルはため息をついてボクに言う。

「はぁ。なんなの、いったい……」
「ウィッチの事情なんてわかんないよ。それより、助けてくれてありがとうね。サンキュー」
「どういたしまして」
「えへへ……」
「何を笑ってるの?」
「だって、これが本当の強さだなって、そう思えてさ」
「なにそれ?」
「人間ひとりひとりって、まるでちっぽけで弱いよ。でも、こうして助けてくれる仲間がいれば強敵に勝てる。
 昔から言うじゃん、一本の矢は簡単に折れるけど、三本まとめれば頑丈になるって。つまりね、一致団結こそが最強なんだ。違う?」

 アップルはきょとんとした顔になる。そしてすぐに苦笑しながら言う。

「言いたいことはわかるけど、その例え話って誰かが作ったやつだよ。つまり嘘っぱち」
「だとしてもさ! それでもやっぱり、団結って大切だと思うな」
「ふふ……そうかもね」

 絶対そうに決まってる。一致団結すればどんな困難も乗り越えられるんだ。
 その証拠に、かつて存在した悪い王様や女王様、独裁者たちは、団結した人々の革命によって打ちのめされた。だからボクはいつだって団結の力を信じるよ。

 君だって同感だろ?
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