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第16話 研究エリア
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この次の見学場所は、ヒューマンについての研究を行っているエリアに決まった。ジャンペンが運転する大きな車に乗って移動していく。
車内には小さな冷蔵庫があるのだが、アリムはそこから一つのガラス製のコップを出して私を見る。
「喉が渇いてませんか? 良かったらどうぞ」
「これはなんですか」
「地球人が発明した清涼飲料水で、コーラといいます。炭酸が効いてますよ」
「甘いのですか」
「えぇ」
「お金はかかるのですか」
「あはは(笑)、タダですよ!」
受け取って飲んでみる。謎の黒くて茶色い液体が喉を通過していき、炭酸の刺激が感覚を突っつきまわす。そして異常なまでに甘い。
「どうです、感想は?」
「まずくはないですが、甘すぎるように思います」
「私の記憶が正しければ、コーラ三百五十ミリリットルに砂糖四十グラムが入ってますからね」
「あの、どういうことですか。単位が分かりません」
「はは、すみません、研究所の資料を丸暗記しただけでして。まぁ兎も角、かなりの量が入ってるわけです。そりゃ甘くて当然ですよ」
「成る程」
「地球人はしょっちゅうこれを飲んでいたそうですよ。特に先進国だとすごかったらしいですね」
「健康への影響はどうなのですか」
「悪いに決まってますよ。たまに飲むならまだしも、毎日毎日毎日飲んでたら体おかしくなりますよ」
「なぜそんなものを彼らは大量消費していたのですか」
「酒やタバコもそうですが、あいつらは体に悪いものが好きなんですよ。だからじゃないですか?」
「はぁ」
「まぁ安心してください。今のあいつらが飲むことなんてありませんから。だって我々が与えませんからね」
「彼らのためにはそれが一番だと思います」
ヒューマンは健康管理が下手な種族なのかもしれない。なんとなくだがそう思う。
研究エリアに足を踏み入れた直後、私は思った。冷たい雰囲気だと。
通路に配置されている何本もの蛍光灯たち、その白い光は手術室のイメージを思い出させてくる。
銀色のメス、切り裂かれる肌、流れ出す赤い血。体の各所につながれた何本ものケーブルたち、機械が発する電子音、名前を知らない薬液が発する独特の香り。
私は力ずくでイメージを心の中から追い払う。
「モサーベさん、調子でも悪いんですか?」
「いえ、何でもありません。それより、ここがどういうことをしているかについて教えてください」
私たちは歩き出す。歩きつつアリムは喋る。
「初等教育を受けたヒューマンたちは、次に中等教育を受けるわけですが、それがどういうものかはお話しましたっけ?」
「いえ、まだです」
「ふむ。中等教育はですね、平凡クラスと底辺の場合は職業訓練です。卒業後に仕事をしたい場合、すぐにやれるように教えていくわけです」
「はい」
「エリートの場合はそれがグラディエーターの本格的な訓練になるわけです。彼らの場合、卒業したら否応なしに仕事開始です」
「つまりコロシアムで戦うのですね」
「そういうことです。でまぁここからが重要なんですが、どのクラスであれ落ちこぼれが出るわけです。あと、怪我や病気によって障害者になる奴もいますね」
「はい」
「それと、当たり前といえばそうなんですが、ヒューマンだって歳をとります。つまり老人。そういう生産力も繁殖力もない連中ってのは、処分対象としてこの研究エリアに集められ、あれやこれやの実験の対象となります」
「つまり、処分とは人体実験の材料になるということですか」
「大雑把に言えばそうです。じゃ、さっそく見学してみましょう。どうぞ」
足を止め、アリムが目の前のドアを開ける。私たちは入っていく。
車内には小さな冷蔵庫があるのだが、アリムはそこから一つのガラス製のコップを出して私を見る。
「喉が渇いてませんか? 良かったらどうぞ」
「これはなんですか」
「地球人が発明した清涼飲料水で、コーラといいます。炭酸が効いてますよ」
「甘いのですか」
「えぇ」
「お金はかかるのですか」
「あはは(笑)、タダですよ!」
受け取って飲んでみる。謎の黒くて茶色い液体が喉を通過していき、炭酸の刺激が感覚を突っつきまわす。そして異常なまでに甘い。
「どうです、感想は?」
「まずくはないですが、甘すぎるように思います」
「私の記憶が正しければ、コーラ三百五十ミリリットルに砂糖四十グラムが入ってますからね」
「あの、どういうことですか。単位が分かりません」
「はは、すみません、研究所の資料を丸暗記しただけでして。まぁ兎も角、かなりの量が入ってるわけです。そりゃ甘くて当然ですよ」
「成る程」
「地球人はしょっちゅうこれを飲んでいたそうですよ。特に先進国だとすごかったらしいですね」
「健康への影響はどうなのですか」
「悪いに決まってますよ。たまに飲むならまだしも、毎日毎日毎日飲んでたら体おかしくなりますよ」
「なぜそんなものを彼らは大量消費していたのですか」
「酒やタバコもそうですが、あいつらは体に悪いものが好きなんですよ。だからじゃないですか?」
「はぁ」
「まぁ安心してください。今のあいつらが飲むことなんてありませんから。だって我々が与えませんからね」
「彼らのためにはそれが一番だと思います」
ヒューマンは健康管理が下手な種族なのかもしれない。なんとなくだがそう思う。
研究エリアに足を踏み入れた直後、私は思った。冷たい雰囲気だと。
通路に配置されている何本もの蛍光灯たち、その白い光は手術室のイメージを思い出させてくる。
銀色のメス、切り裂かれる肌、流れ出す赤い血。体の各所につながれた何本ものケーブルたち、機械が発する電子音、名前を知らない薬液が発する独特の香り。
私は力ずくでイメージを心の中から追い払う。
「モサーベさん、調子でも悪いんですか?」
「いえ、何でもありません。それより、ここがどういうことをしているかについて教えてください」
私たちは歩き出す。歩きつつアリムは喋る。
「初等教育を受けたヒューマンたちは、次に中等教育を受けるわけですが、それがどういうものかはお話しましたっけ?」
「いえ、まだです」
「ふむ。中等教育はですね、平凡クラスと底辺の場合は職業訓練です。卒業後に仕事をしたい場合、すぐにやれるように教えていくわけです」
「はい」
「エリートの場合はそれがグラディエーターの本格的な訓練になるわけです。彼らの場合、卒業したら否応なしに仕事開始です」
「つまりコロシアムで戦うのですね」
「そういうことです。でまぁここからが重要なんですが、どのクラスであれ落ちこぼれが出るわけです。あと、怪我や病気によって障害者になる奴もいますね」
「はい」
「それと、当たり前といえばそうなんですが、ヒューマンだって歳をとります。つまり老人。そういう生産力も繁殖力もない連中ってのは、処分対象としてこの研究エリアに集められ、あれやこれやの実験の対象となります」
「つまり、処分とは人体実験の材料になるということですか」
「大雑把に言えばそうです。じゃ、さっそく見学してみましょう。どうぞ」
足を止め、アリムが目の前のドアを開ける。私たちは入っていく。
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