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第六話「国立第一騎士学園」
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国立第一騎士学園。
軍政国家であるユリリア国が設置するその学校は総生徒数五千人を超える歴史のある由緒正しき士官学校。
清楚な白い制服を身につけていることから別称“ホワイトリリー”と言われているらしい。
そんな学園の制服をあたしは身につけて鏡の前でくるりと回る。
スカートがひらりと揺れて白いブレザーに赤いネクタイがよく映える。
制服は多少いじっても良いみたいだけど、転入生のあたしは支給された制服をそのまま着る。
「よく似合っているじゃないか」
「そ、そう? あたし学校なんて行くの初めてだから緊張するなぁ」
勉強や教養を孤児院で教えてもらったあたしは、学校というものに通ったことがない。
だから期待と不安があたしの中で渦巻いていた。
「衣服は数着用意して寮に送っている。入学の手続きはしておいたから、着いたら教師の案内に従ってくれたらいい」
「ほんとにいろいろありがと。田舎娘だと馬鹿にされないようにしないと」
「気負う必要はないさ。転入といっても今年入学した子と二ヶ月しか変わらないし、国中から生徒が集まるから田舎出身も珍しくない。実力主義のホワイトリリーは身分よりも実力が優先される。まぁ舐められないようにする必要はあるけどね」
あたしは出発の準備を整える。
これからは寮生活になるから、あたしがアリシアの屋敷に戻ってくることはしばらくない。
二週間お世話になった屋敷の人達にお礼を言って、あたしとアリシアは屋敷の外で待機してある馬車に乗り込んだ。
「出発してくれ」
アリシアの指示に従い御者が馬を走らせる。
あたしの向かい側にアリシアが座り、適当に談笑しながら学園へと向かう。
それなりに時間がかかったけど、ソファーがふかふかだったのでそれほど苦にはならなかった。
馬車から降りたあたしの目に飛び込んだのは――――脳裏に焼きつく絵画のような美しい施設だった。
荘厳な雰囲気の漂う校門。
その奥に構える、晴天の下でより鮮やかに見える白塗りの壁の校舎。
手入れの行き届いた花と緑の生える校庭がそよ風に香りを乗せる。
見渡しても端が見えない広大な敷地。
学園は街の中にはなくて、完全に隔離された場所にある施設。
もう学園と言うより城塞都市に近い。
「…………」
見惚れているのか、圧倒されて言葉が出ないのか自分でも分からなかった。
ただ開いた口が塞がらず呆然としているあたしを見てアリシアは笑う。
「君の反応は本当に飽きないな」
アリシアの笑声であたしは我に帰った。
「あーごめん。あまりの存在感に脳がついていかなくて」
「構わないさ。君のリアクションはこっちとしても見てて楽しいからね。サプライズ心がくすぐられる」
アリシアの微笑はサプライズ心というよりイタズラ心をくすぐられているように見えた。
「じゃあ中に入ろうか。職員室まで案内しよう」
あたしはアリシアについていく。
アリシアはあたしと同じ制服を着ているはずなのに、なんでこんなに気品オーラが溢れてるんだろう。
なんか良い匂いするし。
校舎の中、想像通り白を基調にしたデザインで清潔感が凄い。
「場違い感が凄い……」
「すぐ慣れるさ」
アリシアがいなければ歩くことすら気が引ける廊下。
アリシアの背中に隠れるようにしながら、あたしはようやく職員室に辿り着いた。
廊下にはいくつも扉があったけど、この部屋だけはオーラが違う。
若干怖気づくあたしの心の準備を待たず、アリシアは扉をノックした。
「ちょっ!?」
「長引けば長引く程入りづらくなるだろう」
アリシアは扉を開けて中に入る。
あたしはアリシアに続いて職員室に足を踏み入れた。
「おはようございますクリスタ先生」
「あ、アリシアちゃん……おはよぅ~」
キリっとしたアリシアの挨拶に、のほほんとした返事が返ってきた。
アリシアの背中から顔を出して、声の主を確認する。
クルミ色のほわほわとした柔らかいボブ、寝起きのような目と覇気のない声量。
先生と言ってたから教師なんだろうけど、なんか想像とかけ離れた雰囲気だ。
「サラ、君のクラスの担任になるクリスタ先生だ。先生、彼女が例の……」
「あぁ~転入生ちゃんですか~。おはよぅ~」
「お、おはようございます!」
気の抜けるような挨拶とはいえ相手は先生。
話すとなるとやっぱり緊張する。
「では後は先生にお任せします」
「は~い任されましたぁ~。それじゃぁ行こっかぁ~サラちゃん」
「は、はい」
そこから先はクリスタ先生に案内してもらうことになった。
クリスタ先生の歩く速度はアリシアよりも遥かに遅く、教室に辿り着くまでかなり時間がかかった。
「じゃぁ~わたしが呼んだら入って来てねぇ~」
クリスタ先生はそのまま優しく扉を開けて中に入っていった。
扉で籠ったガヤガヤとした声が鮮明に聞こえ、クリスタ先生が入った瞬間静かになった。
「は~い。みなさんおはようございますぅ……。今日は~転入生がいま~す。入って来て~」
思ったより早い呼びかけにあたしは急いで心の準備を始める。
ただ一瞬、生徒達の期待や興味の声が聞こえて、時間が経てば経つほど入りづらくなりそうだ。
「よし! やってやんよ!」
あたしは勢いに任せて教室に入った。
視界に飛び込む五十人くらいの生徒達。
階段のように席がだんだんと上がっているから全員の顔がよく見える。
孤児院で教えてもらったことがある。
こういう場では最初の印象が大きく今後を左右する。
声は大きく、背中は真っすぐに、威圧的にはならにけど舐められない程度の雰囲気。
「今日からこの学園に通うことになりました、名前はサラです! 座右の銘は『当たって砕く』。分からないことだらけですがよろしくお願いします。特技はどこでも寝られること。一回牛舎で寝ちゃったことがあって、あたしは牛かーってね……えへへへ……」
「「「「「……………………」」」」」
――――す、スベッたぁぁあああ!!
軍政国家であるユリリア国が設置するその学校は総生徒数五千人を超える歴史のある由緒正しき士官学校。
清楚な白い制服を身につけていることから別称“ホワイトリリー”と言われているらしい。
そんな学園の制服をあたしは身につけて鏡の前でくるりと回る。
スカートがひらりと揺れて白いブレザーに赤いネクタイがよく映える。
制服は多少いじっても良いみたいだけど、転入生のあたしは支給された制服をそのまま着る。
「よく似合っているじゃないか」
「そ、そう? あたし学校なんて行くの初めてだから緊張するなぁ」
勉強や教養を孤児院で教えてもらったあたしは、学校というものに通ったことがない。
だから期待と不安があたしの中で渦巻いていた。
「衣服は数着用意して寮に送っている。入学の手続きはしておいたから、着いたら教師の案内に従ってくれたらいい」
「ほんとにいろいろありがと。田舎娘だと馬鹿にされないようにしないと」
「気負う必要はないさ。転入といっても今年入学した子と二ヶ月しか変わらないし、国中から生徒が集まるから田舎出身も珍しくない。実力主義のホワイトリリーは身分よりも実力が優先される。まぁ舐められないようにする必要はあるけどね」
あたしは出発の準備を整える。
これからは寮生活になるから、あたしがアリシアの屋敷に戻ってくることはしばらくない。
二週間お世話になった屋敷の人達にお礼を言って、あたしとアリシアは屋敷の外で待機してある馬車に乗り込んだ。
「出発してくれ」
アリシアの指示に従い御者が馬を走らせる。
あたしの向かい側にアリシアが座り、適当に談笑しながら学園へと向かう。
それなりに時間がかかったけど、ソファーがふかふかだったのでそれほど苦にはならなかった。
馬車から降りたあたしの目に飛び込んだのは――――脳裏に焼きつく絵画のような美しい施設だった。
荘厳な雰囲気の漂う校門。
その奥に構える、晴天の下でより鮮やかに見える白塗りの壁の校舎。
手入れの行き届いた花と緑の生える校庭がそよ風に香りを乗せる。
見渡しても端が見えない広大な敷地。
学園は街の中にはなくて、完全に隔離された場所にある施設。
もう学園と言うより城塞都市に近い。
「…………」
見惚れているのか、圧倒されて言葉が出ないのか自分でも分からなかった。
ただ開いた口が塞がらず呆然としているあたしを見てアリシアは笑う。
「君の反応は本当に飽きないな」
アリシアの笑声であたしは我に帰った。
「あーごめん。あまりの存在感に脳がついていかなくて」
「構わないさ。君のリアクションはこっちとしても見てて楽しいからね。サプライズ心がくすぐられる」
アリシアの微笑はサプライズ心というよりイタズラ心をくすぐられているように見えた。
「じゃあ中に入ろうか。職員室まで案内しよう」
あたしはアリシアについていく。
アリシアはあたしと同じ制服を着ているはずなのに、なんでこんなに気品オーラが溢れてるんだろう。
なんか良い匂いするし。
校舎の中、想像通り白を基調にしたデザインで清潔感が凄い。
「場違い感が凄い……」
「すぐ慣れるさ」
アリシアがいなければ歩くことすら気が引ける廊下。
アリシアの背中に隠れるようにしながら、あたしはようやく職員室に辿り着いた。
廊下にはいくつも扉があったけど、この部屋だけはオーラが違う。
若干怖気づくあたしの心の準備を待たず、アリシアは扉をノックした。
「ちょっ!?」
「長引けば長引く程入りづらくなるだろう」
アリシアは扉を開けて中に入る。
あたしはアリシアに続いて職員室に足を踏み入れた。
「おはようございますクリスタ先生」
「あ、アリシアちゃん……おはよぅ~」
キリっとしたアリシアの挨拶に、のほほんとした返事が返ってきた。
アリシアの背中から顔を出して、声の主を確認する。
クルミ色のほわほわとした柔らかいボブ、寝起きのような目と覇気のない声量。
先生と言ってたから教師なんだろうけど、なんか想像とかけ離れた雰囲気だ。
「サラ、君のクラスの担任になるクリスタ先生だ。先生、彼女が例の……」
「あぁ~転入生ちゃんですか~。おはよぅ~」
「お、おはようございます!」
気の抜けるような挨拶とはいえ相手は先生。
話すとなるとやっぱり緊張する。
「では後は先生にお任せします」
「は~い任されましたぁ~。それじゃぁ行こっかぁ~サラちゃん」
「は、はい」
そこから先はクリスタ先生に案内してもらうことになった。
クリスタ先生の歩く速度はアリシアよりも遥かに遅く、教室に辿り着くまでかなり時間がかかった。
「じゃぁ~わたしが呼んだら入って来てねぇ~」
クリスタ先生はそのまま優しく扉を開けて中に入っていった。
扉で籠ったガヤガヤとした声が鮮明に聞こえ、クリスタ先生が入った瞬間静かになった。
「は~い。みなさんおはようございますぅ……。今日は~転入生がいま~す。入って来て~」
思ったより早い呼びかけにあたしは急いで心の準備を始める。
ただ一瞬、生徒達の期待や興味の声が聞こえて、時間が経てば経つほど入りづらくなりそうだ。
「よし! やってやんよ!」
あたしは勢いに任せて教室に入った。
視界に飛び込む五十人くらいの生徒達。
階段のように席がだんだんと上がっているから全員の顔がよく見える。
孤児院で教えてもらったことがある。
こういう場では最初の印象が大きく今後を左右する。
声は大きく、背中は真っすぐに、威圧的にはならにけど舐められない程度の雰囲気。
「今日からこの学園に通うことになりました、名前はサラです! 座右の銘は『当たって砕く』。分からないことだらけですがよろしくお願いします。特技はどこでも寝られること。一回牛舎で寝ちゃったことがあって、あたしは牛かーってね……えへへへ……」
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