クレハンの涙

藤枝ゆみ太

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【クレハンの涙】第一章

41話

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「ここでかい?診療所に行った方が良いんじゃない?」

「ラビがこんな状態なんだ、無理に動かすのはまずい」

「あ、ああ、そうだね……そうだよね」

 ミルキーは随分と動揺しているようで、落ち着き無く体を揺すっている。

「私なら大丈夫よ、ミルキー」

 ラビはニッコリ笑ってそう言うと、ベッドから体を起こそうとする。

「ラビリィッ!寝てなきゃダメよっ!」

「で、でも、ずっと同じ体勢だから疲れちゃって」

 少女が何とか体を起こそうとした時……


 ぶちんっ


 耐えられないとでも言うように、ラビの腹の根本から突き出た肉が、とんでもない音をたてて千切れた。

「うぅっ……」

 同時に、ラビも気を失ってガクンとその場に倒れこむ。

「きゃぁぁぁぁっ!ラビーーッ!」

「おいっ!ラビッ!ラビッ!しっかりしろっ!返事をしてくれっ!」

 しかし、ラビには二人の声は聞こえていなかった。

 何の音も聞こえていなかった。






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