クレハンの涙

藤枝ゆみ太

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【クレハンの涙】第一章

61話

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 ラビはかいつまんで自分に起きた体験と、彼がどうしてここに居るかを説明した。

 お肉ちゃんが理解したかどうかは分からないが、思いの外真剣にラビの話に耳を傾けてくれた。

 恐らく頼る者など、他に誰もいないのだろう。

「どう?私の話、信じられる?」

「いや。大体、肉から生まれるって……聞いた事も無いぞ」

「でも本当の事だもんっ」

 膨れながら言うラビを見詰めつつ、お肉ちゃんは頬杖をつきながらボソリと言った。

「うーん……だがまぁ、分かった事はある」

「分かった事?」

「私は確かに、城のような場所にいた。根拠こんきょなぞ無いっ!無いが感じるのだっ。私の心が、城に行きたいとそう叫んでいるのだっ。そこに行けば、きっと何かあるっ!」

「お肉ちゃん……」

「そうすれば、きっと私が誰かも自ずと分かる。うん、そうだ。そうに決まっているのだ」

 しきりにうなずいて、お肉ちゃんは自分自身を納得させている。

 そしてそんな彼を見て、ラビはパッと閃いてしまった。

 瞳を輝かせながら、ズズズイッと彼に詰め寄る。

 有り得ない程近い。

「そうねっ!ここに居るだけじゃ何も変わらないわっ!」

「そそそっ、そうだなぁ、うん」

「あちこち旅すればさっ、絶っ対色々分かるわよーっ!」

「あ、ああ。そうだな、その通りだ。それより、すす少し近くないか?なぁ」

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