クレハンの涙

藤枝ゆみ太

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【クレハンの涙】第二章

97話

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 ラビは、口から漏れ出た自身の声を慌てて押さえ込みながら、彼の後ろ姿を見つめ続けた。

 何故かは分からない。

 しかし、今話し掛けたらこれまでのフェグの苦労が水泡に帰すような気がしたのだ。

 そんな中、次第に陣の光は弱いものへと変わって行き、完全に光が消えた時には、辺りは夜の闇に包まれていた。

「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 フェグは盛大に息をはくと、ぐらりと傾き突然地面に崩れ落ちる。

「フェグッ!」

 駆け寄りその体を支えてみると、彼の体からは異常な程の汗が吹き出していて、ラビの服にも大きな染みを作って行く。

「…………ふぅ……ふぅ……だ、大丈夫だ……ふぅ……ふぅ……」

「年寄りが無理するんじゃないわよっ、もうっ!」

「ふっ、ふふふっ……言ってくれるわ。……それよりも……陣の中央の物を持って来てくれないか」

「わかった……」

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