自堕落魔女とホットコーヒー

藤枝ゆみ太

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第一章

役所?

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 役所は相方と二人で手続きに来て以来だから久々な感じだ。

 高い天井の落ち着いた建物。入り口付近にはインフォメーションとカフェなどがあり、時間をもて余す客を飽きさせないようにしていた。

 室内に入ると平日だが利用客は多く、もう順番待ちの列が作られていた。

 みいも予約をし、待つことしばし。

「みいさーん」

「あ、はいっ」

 慌てて受付へと向かい、必要な書類を手に入れた。

 みいは相方へ無事に書類をゲットしたと連絡し、ホッと息をつく。

「よし、ミッションクリアだ。でも、思ったより簡単だったなぁ」

 あとはバスで帰るだけ。しかしまだまだ時間はあるので、役所の入口付近にあるカフェへとむかってみた。





*****





「いらっしゃいませー」

 カフェのチェアーに腰掛けると、みいは冷たいアイスココアをいただいた。

 人見知りで緊張していたためか、冷たい飲み物が実にうまい。

 しかし、今日はみいとしたら小さな一人旅をしたような気分だ。

 あとは無事に帰って、夕食の支度とかしてと、何だが充実した感じではないだろうか。

「きっといつもと違う日常だからそう感じるのかもな。あとはこれで仕事があれば言うことないんだけどなぁ……」

 みいはアイスココアを飲み干すと、支払いを済ませてカフェを後にする。

「ありがとうございましたー」

 そのまま役所を出るために歩き出すと、何だがこの小さな旅も終わりなのかと少ししんみりしたりする。

「も、もももし?」

 しんみり歩いていたそんな時、インフォメーションの影から声をかける者がいた。

「え?」

「あ、あの、お、おおお客様はえと、その、あの……」

 どもりまくるその人はどでかい黒ブチ眼鏡を押し上げながら、必死で何かを訴えかけてくる。

「は、はい?」

「す、すすみません。あ、あの、私役所の者でして。少しお、お時間貰えませんでしょうか」

「え、手続きに何か不備とかあったってことですか?」

 みいが驚いてそう聞くと、眼鏡の彼女はブンブン首を振って否定した。

「ち、ち違いますっ。あの、そ、そうではなくてですね。わ、私こう言う者でして」

 そう言って彼女は懐から名刺を取り出した。

「役所・地方ギルド科?」

「は、はははい。私、ここの役所のギルド科のマリエルと申します」

「は、はぁ……」

「あ、あの、突然ですが、お客様はもしや……ま、まま魔女様ではございませんか?」

「え?……えぇ……まぁ」

 みいがそう答えると、マリエルは飛び上がって喜びだした。

「やっぱり!お、お客様が役所へ来た時から私、ずっっと目をつけていたんですっ。つ、つついに来たって!」

「は、はぁ」

 みいは平静を装いたかったが、どうしても顔が引きつるのが止められない。

 そんなみいを知ってか知らずか、マリエルは興奮しながら続けている。

「私この役所勤務になってから、ほんっとに暇でして。も、もっとギルド科を盛り上げなければならないとと、常日頃から思っていた次第でしてっ」

「は、はぁ。……あ、そろそろ私帰らないと」

「えっ!?ちょ」

「そ、それではー」

「わわわっ。お、お待ちをーっ」

 マリエルは蹴躓けつまずきながらもみいを追いかけ、小ぶりなチラシを手渡してきた。

「せ、せせめてこれだけでもぅ」

「はぁ」

「役所はこんな活動もやっておりますので、もしでしたら、目を通していただけると……嬉しい……です」

「は、はい」

「よ、よろしくですぅ」

 みいは会釈すると、さっと役所を後にした。マリエルはその後ろ姿を名残惜しそうに見つめるしかなかった。





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