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【ミニュモンの魔女】序章
7話
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ホクホク顔で帰って行く男の子を眺め、その小さな背中に魔女語を送ってから庭に置かれている巨大鍋に食虫植物の唾液を流し入れた。
「鍋の半分か……大分溜まったわね。もう少しだけ溜めたら煮詰めないと……」
ギギャーギギャー……ギエーギエー……
「カラス?……騒がしい。またしばらく降り続くのかしら」
クラコは雨に備えて、とんでもない臭いを放つ巨大鍋に蓋をしてから家に戻った。
しかし、その後もカラスは騒ぎ続けてはいたが、雨は一粒も降る事は無かった。
*****
サブナリスを出て随分たったある日、さすがのジャムも危機を感じていた。
親分の元を離れたその翌日、朝からの強風と大雨……最悪の天候にジャムは完全に道に迷ってしまっていたのだ。
ミニュモンの上空に現れると言う金色の光も、長い間続いた激しい雨と分厚い雲とでそんなものは一度も見当たらず、ただただ闇雲に歩を進めてみるしか手はなかった。
「ぐぅぅ……まずい、まずいぞっ……こりゃあ……」
ホームで口にした最後の食事は湯のようなスープのみ。
それから飲まず食わずでおおよそ一ヶ月弱。
ジャムの頭に親分の言葉が蘇る。
『ここで食いもんをろくに食えないってのはなあっ、死ぬ一歩手前ってことなんだよっ!』
「………………し……」
確かにジャムは餓えていた。
自分でもそうと分かるほど腹がボッコリ膨れていることにゾッとした。
体が段々言う事をきかなくなってきているし、何より恐ろしかったのは……
ガーガー……ギャーギャー……ギエーギエー
自分を追い回すようについて来るカラス達の不気味な声。
まるで『……早く死ね……早く死ね……』と言われているようだ。
いや……実際言われているのかもしれない。
重たい体を引きずって前に進み続けると、それでも荒れ果てた故郷とは明らかに違う表情を見せる大地がジャムを迎えてくれる。
緑が鬱蒼と生い茂る森の中。
ジャムはふらつきながら木々の間を彷徨っていた。
足に力が入らない。
頭もぼーっとする……
「………………ここは………………どの……辺りなんだ……?」
『そりゃーあの世の入り口だろうが』
力なくポツリと零れた言葉に答えたのは、スラムにいるはずの親分だった。
「あ……何で、いるんだ?……俺、まだ……サブナリスから出てなかったのか」
『バカ息子が!!』
「……バカ言う……な………………これでも色々……考えてんだ………………」
『ミニュモンはそっちじゃねえぞっ!』
「しょうがねぇだろ………………目印が………………見えなかったんだよ………………」
『困った奴だよお前は……オレの言うことを聞かずに死せる世界に行こうとするなんざ、本当どうしようもねえバカだっ!大バカ野郎だっ!この死に損ないがっ!!』
「………………死な……ねぇよ……」
『大バカ野郎のクソガキがっ!!』
「………………死なねぇから………………俺は……大丈夫だから………………あんま心配しないでくれよ………………親父……………………へへっ……」
これは幻覚、そう分かっていてもジャムは親分に会えたことが素直に嬉しかった。
自分がどれ程危機的状況にいるのかも、充分過ぎるほど分かっていたつもりだったが……。
ジャム本人はいまだに森の中を歩いている気でいた……倒れてから丸三日経っていることにさえ気付かず。
「……お……や………………じ……」
下半身から垂れ流している糞尿もおさえ込む事が出来なくなって随分たっていたし、実はもう周りが殆ど見えない。
ただ、頭の中に親分の幻が見えるだけ。
「……も………………一度……あ…………い………………」
意識の途切れたジャム。
上空では嬉しそうに鳴く無数のカラス達が旋回していた。
「鍋の半分か……大分溜まったわね。もう少しだけ溜めたら煮詰めないと……」
ギギャーギギャー……ギエーギエー……
「カラス?……騒がしい。またしばらく降り続くのかしら」
クラコは雨に備えて、とんでもない臭いを放つ巨大鍋に蓋をしてから家に戻った。
しかし、その後もカラスは騒ぎ続けてはいたが、雨は一粒も降る事は無かった。
*****
サブナリスを出て随分たったある日、さすがのジャムも危機を感じていた。
親分の元を離れたその翌日、朝からの強風と大雨……最悪の天候にジャムは完全に道に迷ってしまっていたのだ。
ミニュモンの上空に現れると言う金色の光も、長い間続いた激しい雨と分厚い雲とでそんなものは一度も見当たらず、ただただ闇雲に歩を進めてみるしか手はなかった。
「ぐぅぅ……まずい、まずいぞっ……こりゃあ……」
ホームで口にした最後の食事は湯のようなスープのみ。
それから飲まず食わずでおおよそ一ヶ月弱。
ジャムの頭に親分の言葉が蘇る。
『ここで食いもんをろくに食えないってのはなあっ、死ぬ一歩手前ってことなんだよっ!』
「………………し……」
確かにジャムは餓えていた。
自分でもそうと分かるほど腹がボッコリ膨れていることにゾッとした。
体が段々言う事をきかなくなってきているし、何より恐ろしかったのは……
ガーガー……ギャーギャー……ギエーギエー
自分を追い回すようについて来るカラス達の不気味な声。
まるで『……早く死ね……早く死ね……』と言われているようだ。
いや……実際言われているのかもしれない。
重たい体を引きずって前に進み続けると、それでも荒れ果てた故郷とは明らかに違う表情を見せる大地がジャムを迎えてくれる。
緑が鬱蒼と生い茂る森の中。
ジャムはふらつきながら木々の間を彷徨っていた。
足に力が入らない。
頭もぼーっとする……
「………………ここは………………どの……辺りなんだ……?」
『そりゃーあの世の入り口だろうが』
力なくポツリと零れた言葉に答えたのは、スラムにいるはずの親分だった。
「あ……何で、いるんだ?……俺、まだ……サブナリスから出てなかったのか」
『バカ息子が!!』
「……バカ言う……な………………これでも色々……考えてんだ………………」
『ミニュモンはそっちじゃねえぞっ!』
「しょうがねぇだろ………………目印が………………見えなかったんだよ………………」
『困った奴だよお前は……オレの言うことを聞かずに死せる世界に行こうとするなんざ、本当どうしようもねえバカだっ!大バカ野郎だっ!この死に損ないがっ!!』
「………………死な……ねぇよ……」
『大バカ野郎のクソガキがっ!!』
「………………死なねぇから………………俺は……大丈夫だから………………あんま心配しないでくれよ………………親父……………………へへっ……」
これは幻覚、そう分かっていてもジャムは親分に会えたことが素直に嬉しかった。
自分がどれ程危機的状況にいるのかも、充分過ぎるほど分かっていたつもりだったが……。
ジャム本人はいまだに森の中を歩いている気でいた……倒れてから丸三日経っていることにさえ気付かず。
「……お……や………………じ……」
下半身から垂れ流している糞尿もおさえ込む事が出来なくなって随分たっていたし、実はもう周りが殆ど見えない。
ただ、頭の中に親分の幻が見えるだけ。
「……も………………一度……あ…………い………………」
意識の途切れたジャム。
上空では嬉しそうに鳴く無数のカラス達が旋回していた。
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