あの日あこがれた瞬間移動

暁雷武 

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冒険者編

冒険者編14 羞恥心に殺されそう

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 今日の宴会はとても盛り上がった。次々とお酒を持ってこなければいけないので、私はとても忙しかった。そんな盛り上がる宴会の中心にいるのはキリアス君だった。


 彼はずっと頬を赤らめながら周りの大人たちに怒っているようだ。
 もちろんだが、怒っている対象にはラズさんも含まれている。


 二時間前
「ふぅ、ただいま帰った。ミーちゃん、早速だがビールを、…」
 ギルドの扉が開けられ、ドンキさんとグルークさんパーティが帰ってきた。

 EXランク、ギルドマスターのドンキさん。Aランク冒険者パーティのグルークさんパーティ。この人たちとSランク冒険者のもう二人には上位種のゴブリンの調査を任せていた。

 グルークさんはいつも通り、帰ってきたすぐにお酒を頼む。
 その声はすぐに私に伝わるように大きい声だった。が、私は、


「シー、キリアス君が起きちゃいますよ。」

 私の膝の上で目の下を赤くしながら寝ているキリアス君を指さしながら言った。

「は?……おいおいキリアスの野郎、どうしたってんだ?一緒に帰ってきたときはぴんぴんしてただろ。」

 何があったのかを説明をしてしまったから、




「あー!!お前ら、全員うるせえ!自分よりも年下、いじめて楽しいのかよ?!!」


「そんなの、なぁ。」
「そんなの、ねぇ。」

 キリアス君の周りにいる全員が目を合わせ、

「「めっちゃ、楽しい!!」」

 今のギルドはお祭り騒ぎなのだ。
「そりゃ、楽しいだろ!入ってきてからずっと生意気だったガキが、帰ってきたら泣き終えた顔でうちのミーちゃんの膝の上で寝てたんだからな!」

「いやー珍しく大泣きしてる主が見えて、私は満足だよ!」

「もう、うるさいうるさいうるさーい!!いい加減にしろー!」

 頬を赤らめているキリアス君はとてもかわいい。




 ここは王都、ゼウス・ガルテン。商店街。

 一人の聖騎士、カルナ・ギルティは変装をして、王都騎士たちの雑談に聞き耳を立てていた。


「おい、知ってるか?境界付近のゴブリン。」

「あぁ、深くは知らないが聞いたことはあるぜ。それがどうかしたのか。」

「いやな、どうやら出現したのは上位種のゴブリンらしいんだよ。」

「上位種?!そこそこな一大事じゃねえか。上位種って言ったら俺たち、王都騎士5人係りで戦うような奴だろ。それが境界付近の田舎に出現なんて。」

「それも大変なのはその数だ。いたるところに5から10体確認されてるらしいんだ。まるで何かを探してるようなんだ。もしも、何かを探してるんだとしたら何を探してると思う?」

「そんなの聞かれても、俺は上位種のゴブリンじゃねえからわからねえな。
 ……あ!おいおい、見ろ!先輩が来た。早くその槍をよこせ。お前も早くしろ!。」


「はえぇ、上位種のゴブリンが。しかも境界付近。
 ……はっ!いいねえ。まだ戦ったことがなかったんだ。」

 カルナは自分の腰に下げている木剣を撫でた。

「ゴブリンの眷属王。果たしてどれほどのものなのか。楽しめることを願っておこう。」


 カルナはその足をシータ近くの境界付近に向けた。




 後日、ギルドの中

「なんていうか……前は、その……ごめん。急に泣き出したりして。」

 ギルド連中が見ている中、俺はミールにこの前の件を謝った。もちろんのことだが、ギルド連中はにやにやしながらこちらに視線を向けている。

「気にしてないから大丈夫!それに初めて頼ってくれたようでうれしかったよ。」
 笑顔でそんなことを言ってくれるミール。
 どこか違和感がある、と思ったら敬語がなくなっている。

 う、うれしかったって本気で俺に気でもあるのだろうか?それに
「頼ったのはこれで初めてってわけじゃないだろ。何度もミールには頼ってきてる。」

「うーん、そういうことじゃないんだけど。……ま、いっか!」

 正直、困る。前世でも現世でも恋愛経験なんてないのだ。女性経験もないし。


 その時、俺は一人の女の子のことを一瞬だけ思い出した。
 顔は思い出せないが、俺と関わってくれていた気がするあの女の子。ただし、顔も声もどんな子だったのかさえ覚えていない。


「……・境界付近の地図なら用意してる。もう、止めようとなんてしないから行っていいよ。それに、」

 一拍をあけて、ミールは言った。……その恥ずかしい一言を。

「ヒーローにならなきゃ、だもんね!」

 満面の笑み。
 悪気がないのは分かっている。だが、

「にちゃぁ。」

 あいつらがいるせいで俺に対してはとんでもないクリティカルダメージにしかなっていない。あとであいつら絶対に殴る。



 その後、俺とラズはミールにもらった境界付近の地図を頼りに何かヒントがないか、もしくはゴブリンに襲われているものがいないかを探すため、境界付近まで馬車を走らせた。
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