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冒険者編
冒険者編35 守ったもの
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「初めてシータに来たというのに……とんでもないタイミングで来てしまったそうですね。最悪なタイミングというべきか、最高なタイミングというべきか。」
私の目の前の竜人は首と体がキレイに分かれている状態だった。初めて見る切断面、いったいどんな刃物で切ったのかが想像できそうにない。
そこからずいぶん歩いたところに、少女を抱きかかえた少年が気を失っていた。
二人ともボロボロの状態だ。生命力やそういったものが感じ取れないほど……。
「この少年ですかね。カルナ君が言っていた子は。確かに、彼の魔力はとても弱弱しい。
しかし、さっきのあの魔力は……。
……………。
はぁ……。面白いというか、イレギュラーですかね。」
そして、その二人を安全なところに運んだあと、被害にあった街の住人を救助するため、私は被害の大きい所へ向かった。
俺には、定期的に見る夢があった。それは、海に沈む夢だ。
動けない、目を開くこともできない。ただ、無抵抗に海の底へ沈んでいく。
その都度、呼吸できなくなる感覚が俺を襲う。俺を殺そうとしてくるのだ。
深い深い深淵へ、俺を誘う。
その時、俺は目を覚ました。どうやら、俺は広場にあったベンチで寝ていたようだ。周りの状況を見て、あれが現実だったことを認識する。
俺がこのベンチで寝ていたということは誰かに運ばれたということだろう。つまり……生きている人が、いる。
俺はその瞬間、大きく息を吸い、涙が出そうになる。
俺のあの行動が正しかったことの証明だ。生きている人がいて。本当によかった。
なんてことを考えていたところ、俺は後ろから声をかけられた。
「起きましたか。」
後ろを振り向くとそこには、白いマントを羽織り、軽装ではあるが体に鎧をつけている騎士がいた。その騎士は瓦礫を肩に背負っている。
「疲れているでしょうが、若者には働いていただきますよ。説明は後でするのでとにかく今は働いてください。」
30代くらいの容貌だがその話し方からは、まるで何十年も生きてきた熟練の老騎士のような雰囲気を感じた。落ち着いた人物なんだろう。
「働けって言われても何すればいいかわからんぞ。」
「この町の中心に向かえば避難民が集まっている避難所があるはずです。そこへ行って自分の仕事を探してください。私だって仕事中なんですよ。……それではまた後で。」
そういって、すたすたとその騎士は去って行ってしまった。何というか、動かないやつは問答無用で切り捨てる上司みたい……だな。
そして、俺は町の中心に向かった。
歩いてその場所に向かったのだが、その間に町の状況がどれほどひどいかをもう一度認識した。崩壊していたのはギルドの周りだけじゃなく、シータそのものが半壊しているような状況だった。
美しい赤レンガ造りの建物はすべて崩れ落ち、道に生えていた植物はすべて倒れ、滅んでいた。道路にはあの竜人の爪痕やラズの魔術による破壊跡が見えた。
そこで思い出したが、ラズが出てくる様子がない。声をかけたが反応がないのであの日からそこまで日が経っていないのかもしれない。相当魔術を使っていたしな。
そうして、街の様子を見ていると俺が向かっていた場所についた。
そこには多くのテントが張られていて中心には報告ボードのようなものがあり、その周りに人が集まっている。だが、不思議と大きいけがをしている人は見つからない。あれほど建物が崩壊していたのに、そこには元気な老人や子供までいたのだ。
そうして、避難場所として使われている町の中心地をざっと見ていると、俺は彼女を見つけた。
あの可愛らしい笑顔をみんなに向けているのだ。自分よりも他人の方を優先してしまう優しい彼女。
彼女を見つけた瞬間に俺は走り出して、彼女を抱きしめていた。
「ミール!……良かった、ほんとに……良かった。」
抱きしめた俺に気づいたミールは少し慌てていたが、しっかり抱き返してくれた。
「ありがとう、キリアス君。……私たちのことを、助けてくれて……。ありがとう。」
あぁ、温かい。ミールは生きているんだ。俺が守りたかった人、死なせたくなかった人が生きているのだ。
そこで俺はあることに気づいた。ミールはしっかり立っている。瓦礫に潰され、動きそうになかった足で立っている。
「ミール、……その足。」
「あ、ははっ……私も、これがどうしてなのか聞きたいんだけど、あの騎士様が説明は後でしますって言ってて、なんでこうなったのかはまだわからないんだよね。」
「騎士、ってもしかしてあの白いマントを羽織ったやつか?」
「うん、そうその人。キリアス君もあってたんだ。」
「そいつに言われたんだ、ここに行けって。それで何をするのかを聞けって。何か、俺がすることはあるか?」
「あ!そうそう!」
ミールは思い出したように、横にあった机から一枚の紙を俺に渡してきた。
「キリアス君にしてもらわなきゃいけないことがあって……、報告書を作ってしてほしいの。」
「な!?……ほ、報告書、だと!?」
俺はこれまでこういうことに何度か巻き込まれているからわかる。報告書を書くのはとても面倒くさい。あったことを文字に起こすというのは難しいのだ。
「あははっ、キリアス君は報告書を書くの嫌いだもんね。……でもごめんね。キリアス君しか報告書を書けないから。」
それはそう。…あの洞窟に向かったのは俺だけで、竜人を倒したのも俺なのだから報告書をかけるのは俺だけだ。
俺は肩をガックシと落としながら、
「はぁ、何日かかるかわからんぞ。俺に報告書を書かせたら。」
「まぁまぁ、夜になったら手伝ってあげるから。」
ミールに励まされながら、俺はテントの中に入って、一人報告書を書き始めた。
前世の頃は何度も何度もレポートや研究結果を書いてきた俺だが、報告書はなぜだか書けない。ただ単に苦手なだけかもしれない。
それに自分の文字も汚いのでやる気が出ない。モチベーションが上がらない。できればタイピングで文字を打てればいいんだが…。
私の目の前の竜人は首と体がキレイに分かれている状態だった。初めて見る切断面、いったいどんな刃物で切ったのかが想像できそうにない。
そこからずいぶん歩いたところに、少女を抱きかかえた少年が気を失っていた。
二人ともボロボロの状態だ。生命力やそういったものが感じ取れないほど……。
「この少年ですかね。カルナ君が言っていた子は。確かに、彼の魔力はとても弱弱しい。
しかし、さっきのあの魔力は……。
……………。
はぁ……。面白いというか、イレギュラーですかね。」
そして、その二人を安全なところに運んだあと、被害にあった街の住人を救助するため、私は被害の大きい所へ向かった。
俺には、定期的に見る夢があった。それは、海に沈む夢だ。
動けない、目を開くこともできない。ただ、無抵抗に海の底へ沈んでいく。
その都度、呼吸できなくなる感覚が俺を襲う。俺を殺そうとしてくるのだ。
深い深い深淵へ、俺を誘う。
その時、俺は目を覚ました。どうやら、俺は広場にあったベンチで寝ていたようだ。周りの状況を見て、あれが現実だったことを認識する。
俺がこのベンチで寝ていたということは誰かに運ばれたということだろう。つまり……生きている人が、いる。
俺はその瞬間、大きく息を吸い、涙が出そうになる。
俺のあの行動が正しかったことの証明だ。生きている人がいて。本当によかった。
なんてことを考えていたところ、俺は後ろから声をかけられた。
「起きましたか。」
後ろを振り向くとそこには、白いマントを羽織り、軽装ではあるが体に鎧をつけている騎士がいた。その騎士は瓦礫を肩に背負っている。
「疲れているでしょうが、若者には働いていただきますよ。説明は後でするのでとにかく今は働いてください。」
30代くらいの容貌だがその話し方からは、まるで何十年も生きてきた熟練の老騎士のような雰囲気を感じた。落ち着いた人物なんだろう。
「働けって言われても何すればいいかわからんぞ。」
「この町の中心に向かえば避難民が集まっている避難所があるはずです。そこへ行って自分の仕事を探してください。私だって仕事中なんですよ。……それではまた後で。」
そういって、すたすたとその騎士は去って行ってしまった。何というか、動かないやつは問答無用で切り捨てる上司みたい……だな。
そして、俺は町の中心に向かった。
歩いてその場所に向かったのだが、その間に町の状況がどれほどひどいかをもう一度認識した。崩壊していたのはギルドの周りだけじゃなく、シータそのものが半壊しているような状況だった。
美しい赤レンガ造りの建物はすべて崩れ落ち、道に生えていた植物はすべて倒れ、滅んでいた。道路にはあの竜人の爪痕やラズの魔術による破壊跡が見えた。
そこで思い出したが、ラズが出てくる様子がない。声をかけたが反応がないのであの日からそこまで日が経っていないのかもしれない。相当魔術を使っていたしな。
そうして、街の様子を見ていると俺が向かっていた場所についた。
そこには多くのテントが張られていて中心には報告ボードのようなものがあり、その周りに人が集まっている。だが、不思議と大きいけがをしている人は見つからない。あれほど建物が崩壊していたのに、そこには元気な老人や子供までいたのだ。
そうして、避難場所として使われている町の中心地をざっと見ていると、俺は彼女を見つけた。
あの可愛らしい笑顔をみんなに向けているのだ。自分よりも他人の方を優先してしまう優しい彼女。
彼女を見つけた瞬間に俺は走り出して、彼女を抱きしめていた。
「ミール!……良かった、ほんとに……良かった。」
抱きしめた俺に気づいたミールは少し慌てていたが、しっかり抱き返してくれた。
「ありがとう、キリアス君。……私たちのことを、助けてくれて……。ありがとう。」
あぁ、温かい。ミールは生きているんだ。俺が守りたかった人、死なせたくなかった人が生きているのだ。
そこで俺はあることに気づいた。ミールはしっかり立っている。瓦礫に潰され、動きそうになかった足で立っている。
「ミール、……その足。」
「あ、ははっ……私も、これがどうしてなのか聞きたいんだけど、あの騎士様が説明は後でしますって言ってて、なんでこうなったのかはまだわからないんだよね。」
「騎士、ってもしかしてあの白いマントを羽織ったやつか?」
「うん、そうその人。キリアス君もあってたんだ。」
「そいつに言われたんだ、ここに行けって。それで何をするのかを聞けって。何か、俺がすることはあるか?」
「あ!そうそう!」
ミールは思い出したように、横にあった机から一枚の紙を俺に渡してきた。
「キリアス君にしてもらわなきゃいけないことがあって……、報告書を作ってしてほしいの。」
「な!?……ほ、報告書、だと!?」
俺はこれまでこういうことに何度か巻き込まれているからわかる。報告書を書くのはとても面倒くさい。あったことを文字に起こすというのは難しいのだ。
「あははっ、キリアス君は報告書を書くの嫌いだもんね。……でもごめんね。キリアス君しか報告書を書けないから。」
それはそう。…あの洞窟に向かったのは俺だけで、竜人を倒したのも俺なのだから報告書をかけるのは俺だけだ。
俺は肩をガックシと落としながら、
「はぁ、何日かかるかわからんぞ。俺に報告書を書かせたら。」
「まぁまぁ、夜になったら手伝ってあげるから。」
ミールに励まされながら、俺はテントの中に入って、一人報告書を書き始めた。
前世の頃は何度も何度もレポートや研究結果を書いてきた俺だが、報告書はなぜだか書けない。ただ単に苦手なだけかもしれない。
それに自分の文字も汚いのでやる気が出ない。モチベーションが上がらない。できればタイピングで文字を打てればいいんだが…。
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