受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128

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教師1年目

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「「お久ぶりです、フィオナ先輩!」」
「うんうん、苦しゅうないよー」
「「!!??」」

 フィオナの現役時代からのギャップに驚きを禁じ得ない後輩一同。

「先輩は今までどこに行方をくらませていたんです? クラブに顔を出して欲しいと家の方に連絡を差し上げても知らないとの一点張りで……」
「うーん、敢えて言うなら花嫁修業かなー?」
「え、先輩ご婚約されたんですか!? お話は聞かなかったのですけど……」
「そりゃ、実家には話し通してないからねー」
「は、はぁ。では、そのお相手とは……?」

 あ、まずい。

「そこにいるよー」

 バッと一斉にこちらを向く生徒一同。

「誤解だ! そんな事実はない! 先輩が勝手に言ってるだけだ!」
「先輩からのアプローチを断るとは何様だぁー!」

 イリーナを筆頭に、先ほどの数倍の数の投げナイフがライヤを襲うのであった。




「流石にあの数はきついな……」

 ただ回避することは不可能だと判断し、氷の壁を立てるほかなかったのだ。

「流石の発動の速さだったよー」
「なんの証拠もないことを言うのはやめてくださいよ……」
「こんなに好きなのに、悲しいなぁー」

 またも生徒たちからじろりと視線を浴びる。

「とにかく、ここではナシです。いいですね? 先輩もコーチとしてきているのですし、ちゃんと生徒たちに教えてあげてください」
「うーん、そうしたいのは山々なんだけど……」

 フィオナは困ったようにその端正な顔に眉を寄せる。

「どこから?」




 実は、ライヤが見学に来た時から感じていたのは、「あまりにも魔術クラブが実戦から遠ざかっている」ということであり、それをフィオナも感じたという事だった。
 魔術クラブは基本的に対人戦を目標としており、生徒同士の模擬戦も積極的に行われていたと記憶していた。
 しかし、現在は順に的に向かって魔法を撃ってみたり、体術の訓練も魔法無しでいわば柔道のようなものをしているだけである。
 教員が足りず、何かあった時に危ないからされていないだけかと思っていたのだが、たった2年前に在籍していたフィオナでさえ違和感を感じるというのはよほどの方針変更がないとあり得ないだろう。

 だが、一番の問題は在学生が疑問を感じていない様子だということが言えた。
 1,2年生に関しては、魔術クラブがどういったクラブだったのか知らないだろうからおかしくはない。
 しかし、上級生たちは模擬戦を頻繁に行っていたことを知っているし、何なら自分たちが行っていたはずなのだ。

「なんか、おかしいですよね?」
「そうね」

 だが、違和感程度なのでどうすることもできない。




「先生は魔術クラブの顧問になられたそうですね?」

 翌日、クラスに行くとニコニコとウィルがそんなことを言ってきた。

「耳が早いな」
「先生のことに関しては先生より知っているつもりですので」
「ゾッとしないな」

 その気になれば本当に俺のパーソナルデータから何から全て知ることが出来るだろうから、それが怖いところではある。
 だが、ウィルに仕えている人達も命令されるままに一般国民の情報をほいほい流す人たちではないと信じたい。

「それで、なぜ顧問に?」
「なぜも何も、学園長から言われたからだよ」
「えっ!」

 本気で驚いた顔をするウィル。

「先生は在学中先生のいう事を聞かなかったことで有名では……?」
「誤解を生むような言い方をするな! 俺は何の根拠もない誹謗中傷をしてくる奴から学ぶことはないと思っただけだ」

 なんだその俺に対する認識は。
 ウィルはチラリとライヤの顔を伺う。

「先生は、私が魔術クラブに入ったらちゃんと指導してくれますか?」
「ん? あぁ、別に魔術クラブに入る必要はないんじゃないのか?」
「え?」

 キョトンとするウィル。

「いや、俺はお前の担任だし、アンにもクラブ関係なく教えてたりしたしな。担任ともなればクラブなんて関係なく、来てくれれば教えてあげるよ」

 なまじ全員出来がいい分、質問とかが学問に関してなくてちょっと寂しかったんだよな。

「休日に訪ねてもいいのですか?」
「あぁ、そりゃまぁ先に連絡とかあった方が好ましいけど、常識的な範囲ならな」

 既にシャロンの来訪を許している手前、ダメとは言えなかったし言う気もなかった。
 人によって学びの効率が違うというのがライヤの持論だが、ウィルは自らの疑問を順に解決していくことによって成長するタイプだと見ていた。
 そして、その解決には他人から指導されることが最も効率の良い方法の一つだといえる。

「先生は優しいですね」

 他の生徒に構うために移動していくライヤの後ろ姿を見ながら呟くのであった。




「来てしまいました♪」

 その週の休日のことである。
 惰眠をむさぼっていたライヤはいつぞやのようにフィオナに脅されながら起こされ、ドアを開けたところでこれまたいつぞやのように小さな来訪者に対面したのであった。

 ただ、以前とは違う点が一つ。

「……アンまでついてきたのか?」
「な、なによ。悪い?」

 その姉が一緒に来ていたことである。

「姉が暇なら姉に習えばいいだろうが」
「いえ、お姉さまも脱走中ですので」

 それを聞いて視線を向けるとバッと顔をそらすアン。

「……公務サボってんのか」
「し、仕方ないじゃない。折角口実があるのに……」
「妹を送るのは公務をサボる口実になるのか……?」
「そうじゃないわよ!」
「は?」

 理解が及ばないライヤにアンとウィルは顔を見合わせる。

「お姉さまも苦労されているようですね」
「そうなのよ。全く、私がこんなに……」
「いや、苦労してないだろ。こうしてサボりにきてるんだから」
「「そういうことじゃない!」です」
「??」

 謎は深まるばかりであるが、自分に明かす様子もないので放っておく。

「それで、なんで今日は来たんだ?」
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