戦力より戦略。

haruhi8128

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魔界奔走

それなんて拷問?

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「それで、バンフリオンちゃんは彼のことが好きなの?」
「ううん、ママ。好きじゃないんだよ。大好きなの」

「きゃー」という乙女の顔になるお母さん。
うん。
このやりとりを目の前でやられるという苦行。
なんの精神修行ですか。

「でも、その思いは叶っていないみたいだねー?」
「大丈夫、ママ。私は納得してるから」
「娘がそう言っててもねぇー。親としては、ちょっと気になっちゃうものなのよー。ね、リブレさん?」
「……なんでしょう」

いずれこの展開になることは読めていたが、対抗案など考えてはいない。
むしろ、思考を放棄した。

「うちの自慢の娘のどこが気に入らないのか、教えてもらえるかしら?」
「……リオンに気に入らないところなんてないですよ、率直に言えば」
「なら、どうしてダメなのかしら?」

まじでなんだこの拷問。

「俺には彼女がいて、それが俺にとっての最優先だからです。どうあっても、その優先度合いは変わりません。その旨は既にリオンに伝えていますし、それを知ってなお、リオンは俺を好いてくれています。俺ももちろんリオンのことは好きですし、女性として見ていないわけでもありません。ですが、最優先に出来ない。ただ、それだけなんです」

複数の人を同時に愛せるなら、出来る人はそうすればいいと思う。
だが、俺は日本で育って日本の一夫一妻制の考え方が染みついている。
どうしても、不誠実に映ってしまうのだ。

「……俺としても、申し訳ないことをしているという自覚はあります。しかし、それとアンリさんとの約束は別です。少なくとも、この旅が終わるまで、俺はリオンと一緒にいます」

元の世界に戻れる保証もないですしね、と心の中で呟く。
本当に、こちらから起こせるアクションが一つもないのが怖い。
向こうの俺はどうなってるんだろうな。
植物人間状態で何年か経ってるわけだろ?
魔法なんていう公式チートがあってもどうなってるか想像がつかない。
ギリギリ命をつないでてなにかの拍子にこっちに永住してもおかしくない。

「……そう、あなたは、そういう考え方なのね」

リオンのお母さんにも一応は納得いただけたようだ。

「そういえば、お名前を聞いておりませんが」
「そうだったかしら? 私は、ミニアというの。ミニア・エンマよ。改めて、よろしくね、リブレさん」

自室に戻り、ベッドに飛び込む。
ふぅ……。

「解決策なんかないんだもんなぁ……」

そも、こんな考え方をしている時点で不遜だ。
人の感情を操る術なんて持ち合わせていない。
思考を誘導して、その感情を発露させることだけなら、そう難しくないことも多い。
怒りとかがその一例だが。

しかし、人が人を好きになるのに、否定する要素は1つもない。
逆もまた然りではあるが。

少なくとも、好意を寄せられている側の人間がどうこうすることなんて一つもない。
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