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内緒
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ヤマトに兵舎まで送ってもらい、中に入ると稽古が終わったのかゼロの姿が見えた。
いつもと変わらない横顔に嬉しくなってゼロに近付くとリアカさんがいるのに気付いた。
リアカさんは細長い布に巻かれたなにかをゼロに手渡しているところだった。
仕事中だったら邪魔しちゃ悪いと思っていたが、今はゼロに対して不安な気持ちが勝り声を掛けずに二人を少し離れたところで会話が終わるまで待っていた。
するとゼロは俺に気付いたのか視線をこちらに向けた、少し遠いから分からないと思ってたがゼロはやっぱり凄い。
「エル」
「兄様、仕事中邪魔してごめんなさい」
「仕事はもう終わった、リアカに頼んでいたものを受け取っていただけだ」
そう言ってゼロは細長い布を取ると、綺麗な模様が描かれている青い刃の剣が現れた。
ゼロの氷魔法のようにとても綺麗な剣はゼロにぴったりだった。
リアカさんも自分の作品だからか、自慢気な顔をしていた。
ゼロが腰に剣を下げて、今まで使っていたものをリアカさんに渡すとリアカさんは目を輝かせて「改造、改造!」とへんてこな歌を歌っていた。
そうだ、リアカさんとゼロの秘密の約束はどうなったのだろうか。
研究室に戻ろうとするリアカさんを引き止めた。
「あの、リアカさん…兄様にこの前俺が仕事を休んだ事で…その、兄様になにかして…」
「あら?気になる?でも、まだ準備が出来てないのよ…その時が楽しみだわ」
リアカさんはそう意味深な事を言って研究室に入って行った。
「今日はバイトないって言ってたよな、酒場で何してたんだ?」
「えっ!?」
ゼロと一緒に夕飯を食べている時、突然そんな事を言ってきた。
バイトしていなかったのは見ていて分かるだろうが、なんで酒場に行った事がゼロにバレているんだ?
さっきヤマトと別れたばかりだからヤマトが言ったとは考えられない。
酒場にいたのか?という疑問ではなく、酒場で何してたんだ?という確信だった。
ダラダラと汗を掻いていると追い討ちのように「今はまだ酒場は開いていない時間じゃないか?」と俺を見つめて言った。
ヤマトに相談の話は言うなと言われたし、俺の口から真実を言うわけにはいかない。
「い、言えない…」
「……エル、俺に隠し事か?」
「ご、ごめんなさい…でも、言えない」
一度隠し事でゼロを怒らせてしまったのにまた隠し事をしてしまった。
でも上手く言い訳が思い付かなかった、もし俺の言葉が引き金になってゼロが闇堕ちしたら嫌だ。
ゼロの顔をまともに見れなくて下を向いて口を閉ざす。
ゼロが怒っているのか顔は分からなかったが、無言の沈黙が空気を重くする。
ヤマトは黒いもやが全身にまとっていた事をゼロは気付いていないから言うなと言っていた。
まだ原因が分からないから、どんなきっかけで黒いもやが現れるのか分からないからヤマトも慎重なのだろう。
俺もゼロの悪役ルートに直接関わっているから、慎重になる。
ゼロが口を開いた気配がして、何を言われるかビクビクして待っていた。
「…その隠し事は俺の話か?」
「えっ、う、ん」
「ならいい、怒らないよ」
ゼロはそう言って俺の頭を撫でて、いつもの優しい笑みに変わった。
怒ってなくてホッとしてゼロの手に触れた、俺よりも一回り大きな大人の手だ。
「いつか話してくれるよな」という言葉に頷いた。
ゼロにこの話をする時はヤマトから話してもいいと言われた時だから、もう少し待っててほしい。
俺が必ずゼロを悪に染めたりせずに守るから…
ゼロと手を絡ませながら、ハンバーグを口に入れた。
※※※
翌日、リアカさん達にお菓子を持っていったらリアカさんはとても喜んでくれて俺に頬擦りしてきた。
すぐにルキアにより引き剥がされて、ルキアにもクッキー食べちゃったお詫びに手作りの焼き菓子を渡したら面白いほど全身が震えていた。
またルキアはなにかの病気かと慌ててリアカさんを見るが、リアカさんはニヤニヤ笑っているだけだった。
「良かったわねぇ、ルキアちゃん」
「…うるせぇ、くそジジイ」
ルキアはリアカさんを睨んでいたが、一瞬俺の方を向いてすぐに顔をそむけた。
小さく「サンキュー…」と言っていて嬉しくなった。
今朝早起きして作った甲斐があった。
早速リアカさんは食べてくれて「エルちゃん料理上手ね、いいお嫁さんになるわぁ」と言っていた。
お婿さんではないのか?ゼロも出来るし男でも料理するのは珍しくないと思ってたけど、この世界では珍しいのかな?
ルキアはリアカさんの「嫁」という言葉だけを何故かブツブツと呟いている。
やっぱり男に嫁は可笑しいよな、ゼロも嫁とか言うからこれが普通の感想だよな。
「リアカさん、俺…男だから嫁じゃないよ?」
「そんな細かい事気にしないの!」
リアカさんに鼻の先をちょんっと触られて、鼻を押さえる。
リアカさんもゼロもなんで俺を嫁と言うのだろうか。
俺、女顔でもないし…料理ならゼロだってするのに不思議だ。
リアカさんに今日のバイト内容を確認していた時、課外授業について思い出した。
日帰りとはいえ帰りが遅くなるからバイトは出来そうにない。
それをリアカさんに言うとリアカさんは「気にしなくていいわよ!」と言って話を続けた。
「そういえばゼロちゃん達もその日その森に行くみたいね」
「えっ!?」
「詳しくは知らないけど、密売商人のアジトがあるとかゼロちゃん言ってたから昨日武器を新しいのに変えたのよ!」
リアカさんはそう嬉しそうに言っていた、士官学科だからもしかしたら騎士団の手伝いをするのかもしれない。
まだゼロには言ってない、もうすぐ課外授業だから話し合わないと…
そう思うと急に緊張で具合が悪くなってきた……さっきの薬のせいでもあるとは思うけど…
今日は早めに早退させてもらい家に帰った。
まだゼロは仕事中だからか、部屋には誰もいなかった。
すぐにベッドで横になって休む。
うーん…お腹がぐるぐるする、気持ち悪い。
「大丈夫か?エル」
「んっ…にぃさま」
「あの仕事のせいならやめとけ」
「んぅ、俺が…にぃさまを養う!」
「ふふっ、そうなのか?」
夢心地の中、ゼロの声が聞こえる。
これは幻聴か?幻聴でもいいや、ゼロなら…
ゼロの声が聞こえたら気持ち悪くなくなった、ゼロは不思議だな。
甘えるように体を転がして、抱きしめる。
あれ?触ってる感触がする……変なの。
頭を優しく撫でられて、安らかな眠りに誘われる。
いつもと変わらない横顔に嬉しくなってゼロに近付くとリアカさんがいるのに気付いた。
リアカさんは細長い布に巻かれたなにかをゼロに手渡しているところだった。
仕事中だったら邪魔しちゃ悪いと思っていたが、今はゼロに対して不安な気持ちが勝り声を掛けずに二人を少し離れたところで会話が終わるまで待っていた。
するとゼロは俺に気付いたのか視線をこちらに向けた、少し遠いから分からないと思ってたがゼロはやっぱり凄い。
「エル」
「兄様、仕事中邪魔してごめんなさい」
「仕事はもう終わった、リアカに頼んでいたものを受け取っていただけだ」
そう言ってゼロは細長い布を取ると、綺麗な模様が描かれている青い刃の剣が現れた。
ゼロの氷魔法のようにとても綺麗な剣はゼロにぴったりだった。
リアカさんも自分の作品だからか、自慢気な顔をしていた。
ゼロが腰に剣を下げて、今まで使っていたものをリアカさんに渡すとリアカさんは目を輝かせて「改造、改造!」とへんてこな歌を歌っていた。
そうだ、リアカさんとゼロの秘密の約束はどうなったのだろうか。
研究室に戻ろうとするリアカさんを引き止めた。
「あの、リアカさん…兄様にこの前俺が仕事を休んだ事で…その、兄様になにかして…」
「あら?気になる?でも、まだ準備が出来てないのよ…その時が楽しみだわ」
リアカさんはそう意味深な事を言って研究室に入って行った。
「今日はバイトないって言ってたよな、酒場で何してたんだ?」
「えっ!?」
ゼロと一緒に夕飯を食べている時、突然そんな事を言ってきた。
バイトしていなかったのは見ていて分かるだろうが、なんで酒場に行った事がゼロにバレているんだ?
さっきヤマトと別れたばかりだからヤマトが言ったとは考えられない。
酒場にいたのか?という疑問ではなく、酒場で何してたんだ?という確信だった。
ダラダラと汗を掻いていると追い討ちのように「今はまだ酒場は開いていない時間じゃないか?」と俺を見つめて言った。
ヤマトに相談の話は言うなと言われたし、俺の口から真実を言うわけにはいかない。
「い、言えない…」
「……エル、俺に隠し事か?」
「ご、ごめんなさい…でも、言えない」
一度隠し事でゼロを怒らせてしまったのにまた隠し事をしてしまった。
でも上手く言い訳が思い付かなかった、もし俺の言葉が引き金になってゼロが闇堕ちしたら嫌だ。
ゼロの顔をまともに見れなくて下を向いて口を閉ざす。
ゼロが怒っているのか顔は分からなかったが、無言の沈黙が空気を重くする。
ヤマトは黒いもやが全身にまとっていた事をゼロは気付いていないから言うなと言っていた。
まだ原因が分からないから、どんなきっかけで黒いもやが現れるのか分からないからヤマトも慎重なのだろう。
俺もゼロの悪役ルートに直接関わっているから、慎重になる。
ゼロが口を開いた気配がして、何を言われるかビクビクして待っていた。
「…その隠し事は俺の話か?」
「えっ、う、ん」
「ならいい、怒らないよ」
ゼロはそう言って俺の頭を撫でて、いつもの優しい笑みに変わった。
怒ってなくてホッとしてゼロの手に触れた、俺よりも一回り大きな大人の手だ。
「いつか話してくれるよな」という言葉に頷いた。
ゼロにこの話をする時はヤマトから話してもいいと言われた時だから、もう少し待っててほしい。
俺が必ずゼロを悪に染めたりせずに守るから…
ゼロと手を絡ませながら、ハンバーグを口に入れた。
※※※
翌日、リアカさん達にお菓子を持っていったらリアカさんはとても喜んでくれて俺に頬擦りしてきた。
すぐにルキアにより引き剥がされて、ルキアにもクッキー食べちゃったお詫びに手作りの焼き菓子を渡したら面白いほど全身が震えていた。
またルキアはなにかの病気かと慌ててリアカさんを見るが、リアカさんはニヤニヤ笑っているだけだった。
「良かったわねぇ、ルキアちゃん」
「…うるせぇ、くそジジイ」
ルキアはリアカさんを睨んでいたが、一瞬俺の方を向いてすぐに顔をそむけた。
小さく「サンキュー…」と言っていて嬉しくなった。
今朝早起きして作った甲斐があった。
早速リアカさんは食べてくれて「エルちゃん料理上手ね、いいお嫁さんになるわぁ」と言っていた。
お婿さんではないのか?ゼロも出来るし男でも料理するのは珍しくないと思ってたけど、この世界では珍しいのかな?
ルキアはリアカさんの「嫁」という言葉だけを何故かブツブツと呟いている。
やっぱり男に嫁は可笑しいよな、ゼロも嫁とか言うからこれが普通の感想だよな。
「リアカさん、俺…男だから嫁じゃないよ?」
「そんな細かい事気にしないの!」
リアカさんに鼻の先をちょんっと触られて、鼻を押さえる。
リアカさんもゼロもなんで俺を嫁と言うのだろうか。
俺、女顔でもないし…料理ならゼロだってするのに不思議だ。
リアカさんに今日のバイト内容を確認していた時、課外授業について思い出した。
日帰りとはいえ帰りが遅くなるからバイトは出来そうにない。
それをリアカさんに言うとリアカさんは「気にしなくていいわよ!」と言って話を続けた。
「そういえばゼロちゃん達もその日その森に行くみたいね」
「えっ!?」
「詳しくは知らないけど、密売商人のアジトがあるとかゼロちゃん言ってたから昨日武器を新しいのに変えたのよ!」
リアカさんはそう嬉しそうに言っていた、士官学科だからもしかしたら騎士団の手伝いをするのかもしれない。
まだゼロには言ってない、もうすぐ課外授業だから話し合わないと…
そう思うと急に緊張で具合が悪くなってきた……さっきの薬のせいでもあるとは思うけど…
今日は早めに早退させてもらい家に帰った。
まだゼロは仕事中だからか、部屋には誰もいなかった。
すぐにベッドで横になって休む。
うーん…お腹がぐるぐるする、気持ち悪い。
「大丈夫か?エル」
「んっ…にぃさま」
「あの仕事のせいならやめとけ」
「んぅ、俺が…にぃさまを養う!」
「ふふっ、そうなのか?」
夢心地の中、ゼロの声が聞こえる。
これは幻聴か?幻聴でもいいや、ゼロなら…
ゼロの声が聞こえたら気持ち悪くなくなった、ゼロは不思議だな。
甘えるように体を転がして、抱きしめる。
あれ?触ってる感触がする……変なの。
頭を優しく撫でられて、安らかな眠りに誘われる。
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