-悪役兄様ルートのフラグの折り方-

青紫水晶

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ゼロの弟

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まさかこんなところで、会うとは思わなくて…どうしようか戸惑う。

ゼロ達が護衛している筈のナイトハルトが一人で廊下に立っていた、昨日の護衛騎士もいない。
騒動に気付いたリリィもどうしたのか近付いてきて、ゲームのヒロインと攻略キャラクターが揃ってしまった。

「どうしたんですか?」とナイトハルトに聞いていたから、もう顔見知りなのか「こちらはいいからゼロとヤマトに朝食を頼んだ」と言っていた。
あの料理は二人の料理なのか、どうしよう…考えている暇はない。

俺は元気よく手を上げた、突然の事で魔法を使うと思っていた周りは驚いて後ずさっている。

「お、俺…暇だから運びます!」

「………なんだと」

明らかにナイトハルトに不審そうな顔をされてしまった。

ゼロの弟で、エル・イスナーンだと言ったが信じてくれなかった。
騎士団長の姓なんて王都民なら誰でも知っている話だ。
それにゼロは弟の名をナイトハルトに話していないのだろう、俺が嘘を付いていると思われた。
手を掴まれて、至近距離で綺麗な顔に睨まれて本当に犯罪を犯したように感じた。

リリィに行くように手で合図して、俺はズルズルとナイトハルトに引きずられていく。

「話は個室で、聞こう…お前が義賊集団なら、分かってるだろうな」

「そ、そんな…俺は…」

『エル様、この方に何を言っても無駄ですよ…今は大人しく従いましょう』

ノアに言われて、確かにこのまま言い続けても信じてくれないなら…大人しくして悪い人ではないアピールをした方がいいだろうか。

ナイトハルトに連れていかれたのは、昨日の部屋ではなく無人の部屋を借りていた。
そりゃあ怪しい人物を部屋に入れるわけないもんな。

まずナイトハルトはノアを眺めていたが、腹を押すと喋るぬいぐるみのフリをしていてやり過ごしていた。
それだと俺がぬいぐるみに怒っていた痛い人になるんじゃ…

何度腹を押してもぬいぐるみだから、ナイトハルトはこれ以上調べても仕方ないと分かり机に置いた。
そして次は俺の番だと、ナイトハルトと目が合った。

「お前が義賊集団か調べる」

「…え、義賊集団ってこの船に乗ってるの?」

「義賊集団だとしたら白々しいな」

フッと笑われて、俺は義賊集団じゃないのになと思った。
でも今朝ゼロとヤマトが慌てていた理由は分かった。

今はリリィと変な会話して悪役スイッチを押さない事を願うばかりだ。

ナイトハルトは俺に「服を脱げ」とそうはっきり言った。

「え、なんで…」

「義賊集団は全員体の何処かに十字架の刺青をしている筈だ」

「…俺、違う」

「そう言うなら、見せられるよな」

男同士だから別に服を脱ぐくらい平気だ…恥ずかしいと思うと変な感じになるんだ。
俺はノアが心配そうに見つめる中、ボタンを外してシャツを脱いだ。
ズボンも脱いだところでナイトハルトは指を下に向けていた。

何の合図か分からなかったが、ため息を吐いたナイトハルトに「何処に刺青が隠れてるか分からないだろ、全部だ全部」と言われてさすがに驚いて固まった。
こ、こんなところで全裸…恥ずかしいとかそういう感情を越えていた。
疑いを晴らすためとはいえ、戸惑っていたらナイトハルトが近付いてきた。

「脱がないのなら今すぐ連行するが?」

「…っ」

連行なんてされたらゼロに迷惑が掛かるし、バレてはいけないんだ。
下着に手を掛けて一気に下ろした、少しの間だ…我慢すればいいんだ。

ナイトハルトに腕を上げられたり、体を触られたりしていた。
足を開かれた時は本気で嫌で、抵抗してしまい…ナイトハルトの顔面に蹴りを入れてしまった。
とっさに謝るがナイトハルトはちょっと眉を寄せただけですぐに連行とかされなくて良かった。

調べられただけなんだけど、何だか大切なものがなくなったような気がしながら服を着る。

「義賊集団ではないならお前は何者だ?」

「…だからゼロの弟ですって言ってるじゃないですか」

「本当か?なら今すぐ確認を…」

「わーわー!!ダメです!!」

こんなところでゼロに確認の連絡を入れられたら俺が脱いだ意味がなくなってしまう。
でもゼロの弟だという証拠、なにかあっただろうか。

そうだ、ゼロはダメだけどヤマトになら連絡しても大丈夫だ。
ヤマトならゼロに黙っててと言ったら黙ってくれるだろう。

俺はナイトハルトにヤマトが証人だと伝えると、早速ヤマトに連絡を取った。
副騎士団長なら文句ないだろう、ナイトハルトはヤマトに「不審者がいるから来てくれ」と言っていた。
疑われたままだけど、連絡の段階で俺の名前を伝えなくて良かった。
もしかしたらヤマトの隣にゼロがいるかもしれないしね。

「…お前、仮にゼロの弟として…仲が悪いのか?」

「え?そんな事ないですよ、ただ過保護な兄なので俺が義賊集団だと疑われたら心配してしまうので」

「……そうか」

ナイトハルトはゼロに思い当たる事でもあるのか納得していた。
ヤマトが来るまでの間、沈黙が気まずい空気を作っていた。

話題がない、どうしようか…無理に話す必要もないんだけど…空気が重い。
ナイトハルトがよそ見している時にノアがこっそりと俺の肩に乗っていた。
必死に俺に謝っていたから大丈夫だとノアの頭を撫でる。

しかし空気はそのままで全然良くなる気配がなかった。

『…どうかされたのですか?エル様』

「うーん、話す話題がなくて」

『ならば共通の話題はどうですか?兄の話とか』

ノアはそう提案してきて、ゼロの話題なら確かに良いかもしれないと思った。
しかし今のこの人が話してくれる気が一切しないんだけど…
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