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ゼロとルキア
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「…人間の分際でなめた事してくれんじゃねぇか」
「っ!?」
後ろから肩を掴まれて振り返ると同時に、司会の男が俺に向かってナイフを振り上げていた。
頭に血が上っているのか、司会の男の目は真っ赤に充血していた。
とっさに腕でガードしようとして腕を前に出し、これから来る痛みに耐えようと唇を噛みしめた。
しかし、ナイフが突き刺さる前に黒服の男が司会の男の腕を掴んだ。
少年を運んだ男だろうか、いや…こんな長身の男は居なかった。
顔はフードを深く被っていて見えなかったが……近付かなくてもにおいで分かって、安心出来るそのにおいに涙が出てきた。
「て、めぇ…何しやが…」
「……」
黒服の男は声には出さなかったが、腕に触れている手からは冷気が溢れていた。
パキパキと凍り始める腕を見て司会の男は騒ぎ出した。
周りの観光客も異変に気付いて慌てて出入口の方に逃げていった。
足元からも凍り始めて、ゼロは小さく息を吐いて男を睨んでいた。
少年はいったいなにが起きたのか状況が分からず、俺の後ろに隠れていた。
俺は安心させようと少年の手を優しく握ると、応えるようにギュッと強く握られた。
「あの人は俺の大切な人だから大丈夫」
「たい…せつな?」
顔を隠しているから、きっと王都の騎士団長だとバレてはいけないと思った。
ゼロは司会の男の首を掴んでいた、そこで俺はただ動きを封じて足止めをするのではなく殺すつもりなんだと気付いた。
慌てて「俺は大丈夫だから!」と訴えたら、ゼロは俺の方をチラッと見てまた司会の男に向き直った。
ギリギリと司会の男の首を絞めていて、全く俺の言葉を聞いていなかった。
少年にはすぐ戻ると待っててもらうと、ゼロがいる方に向かった。
ゼロの腕に触れると氷を握りしめたように手のひらが冷たくなり、体温を奪っていく。
「…兄様」と耳元で囁くと、俺の方を向いてくれて首を傾げていた。
「どうした?」
「兄様、俺は大丈夫だから…だからもういいよ」
「何言ってるんだ、エルを殺そうとした事そのものが罪だろ」
当然のようにゼロはそう言うが、捕まえてこの国の騎士とかに突き出す事は出来ないのだろうか。
ゼロは力を強めて、どんどん男の体を凍り付かせている。
そして男は完全に氷に覆われた姿になってびっくりした。
死んだのか?と怖くなったが、ゼロが俺の頭を撫でて「ただの足止めだから加減した、死んでない」と言ってくれた。
カーテンを開けて、ルキアがライフル銃を肩に掛けてやってきた。
ゼロはルキアと助けに来てくれたんだ、急に俺がいなくなってびっくりしただろうな。
「兄様とルキア、助けに来てくれてありがとう…ちゃんと荷物番を出来なくてごめん」
「…い、いや…いい…無事で良かった」
ルキアは目をキョロキョロさせていたが、安堵のため息を吐いた。
ルキアの手を両手で握り、何度も頷いてルキアを抱き締めた。
本当にありがとう、という気持ちを込めたがルキアは体が跳ねたと思ったら微動だにしなくなった。
不思議に思い、ルキアの顔を覗き込むとゆでダコのように真っ赤な顔になっていた。
熱でも出たかと思って、ルキアの頬に触れようとしたら後ろから手首を掴まれて、そのまま抱き締められた。
ゼロはルキアを睨んでいて、ルキアもゼロを見るとすぐに顔の熱が引いていった。
「黒い服の奴らはちょうどいい檻があったから入れといた」
「……そうか、騒ぎが大きくなる前にこの街から出るぞ」
「檻に入れるために、元々入っていた奴らを出したがアイツらはどうする?」
ルキアは檻の中にいた捕らわれていた人達を出したんだ。
でもこの様子じゃ、まだあそこにいるんだろう…少年も不安げに俺達を見つめていた。
「っ!?」
後ろから肩を掴まれて振り返ると同時に、司会の男が俺に向かってナイフを振り上げていた。
頭に血が上っているのか、司会の男の目は真っ赤に充血していた。
とっさに腕でガードしようとして腕を前に出し、これから来る痛みに耐えようと唇を噛みしめた。
しかし、ナイフが突き刺さる前に黒服の男が司会の男の腕を掴んだ。
少年を運んだ男だろうか、いや…こんな長身の男は居なかった。
顔はフードを深く被っていて見えなかったが……近付かなくてもにおいで分かって、安心出来るそのにおいに涙が出てきた。
「て、めぇ…何しやが…」
「……」
黒服の男は声には出さなかったが、腕に触れている手からは冷気が溢れていた。
パキパキと凍り始める腕を見て司会の男は騒ぎ出した。
周りの観光客も異変に気付いて慌てて出入口の方に逃げていった。
足元からも凍り始めて、ゼロは小さく息を吐いて男を睨んでいた。
少年はいったいなにが起きたのか状況が分からず、俺の後ろに隠れていた。
俺は安心させようと少年の手を優しく握ると、応えるようにギュッと強く握られた。
「あの人は俺の大切な人だから大丈夫」
「たい…せつな?」
顔を隠しているから、きっと王都の騎士団長だとバレてはいけないと思った。
ゼロは司会の男の首を掴んでいた、そこで俺はただ動きを封じて足止めをするのではなく殺すつもりなんだと気付いた。
慌てて「俺は大丈夫だから!」と訴えたら、ゼロは俺の方をチラッと見てまた司会の男に向き直った。
ギリギリと司会の男の首を絞めていて、全く俺の言葉を聞いていなかった。
少年にはすぐ戻ると待っててもらうと、ゼロがいる方に向かった。
ゼロの腕に触れると氷を握りしめたように手のひらが冷たくなり、体温を奪っていく。
「…兄様」と耳元で囁くと、俺の方を向いてくれて首を傾げていた。
「どうした?」
「兄様、俺は大丈夫だから…だからもういいよ」
「何言ってるんだ、エルを殺そうとした事そのものが罪だろ」
当然のようにゼロはそう言うが、捕まえてこの国の騎士とかに突き出す事は出来ないのだろうか。
ゼロは力を強めて、どんどん男の体を凍り付かせている。
そして男は完全に氷に覆われた姿になってびっくりした。
死んだのか?と怖くなったが、ゼロが俺の頭を撫でて「ただの足止めだから加減した、死んでない」と言ってくれた。
カーテンを開けて、ルキアがライフル銃を肩に掛けてやってきた。
ゼロはルキアと助けに来てくれたんだ、急に俺がいなくなってびっくりしただろうな。
「兄様とルキア、助けに来てくれてありがとう…ちゃんと荷物番を出来なくてごめん」
「…い、いや…いい…無事で良かった」
ルキアは目をキョロキョロさせていたが、安堵のため息を吐いた。
ルキアの手を両手で握り、何度も頷いてルキアを抱き締めた。
本当にありがとう、という気持ちを込めたがルキアは体が跳ねたと思ったら微動だにしなくなった。
不思議に思い、ルキアの顔を覗き込むとゆでダコのように真っ赤な顔になっていた。
熱でも出たかと思って、ルキアの頬に触れようとしたら後ろから手首を掴まれて、そのまま抱き締められた。
ゼロはルキアを睨んでいて、ルキアもゼロを見るとすぐに顔の熱が引いていった。
「黒い服の奴らはちょうどいい檻があったから入れといた」
「……そうか、騒ぎが大きくなる前にこの街から出るぞ」
「檻に入れるために、元々入っていた奴らを出したがアイツらはどうする?」
ルキアは檻の中にいた捕らわれていた人達を出したんだ。
でもこの様子じゃ、まだあそこにいるんだろう…少年も不安げに俺達を見つめていた。
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