-悪役兄様ルートのフラグの折り方-

青紫水晶

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唯一の手がかり

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街の人に呼び止められて、周りを見渡しながら話を聞いていたらヤマトの姿が見えた。
すぐにヤマトを追いかけていくと、老人の荷物を運んでいた。

「騎士様にそこまでしていただいて、申し訳ございません」

「いえいえ、騎士は国民が困っていたら助けるものですから」

ヤマトが老人を家まで送り届けるのを見守り、俺はヤマトに声を掛けた。
ヤマトは俺に気付いて、笑顔で手を振っていた。

エルがどうなったか分からないから能天気そうな顔をしているのは分かる。
気が抜けそうになるが、気を引き締めてヤマトに種の話を聞いた。

エルがローズリーによって生死を彷徨っているなんて聞いたらきっとヤマトは自分を責める。
そうなればいろいろと面倒な事になるのは目に見えている。
エルだってそれは望んでいない、エルが悲しむ事はしたくない。

「種?なんで?」

「義賊に繋がる手がかりを探すためだ」

「あの触手なぁ、また種に戻ってさ…今は確か研究都市に送って調べるって言って城で保管してるんじゃなかったかな」

「まさかもう送ったんじゃ…」

「さすがにさっきの出来事でそんなすぐにやらないって、研究都市に依頼するのも国王様とゼロの許可がいるし」

ヤマトの言葉にホッとした、そりゃあそうだ…他国への連絡はそう簡単に出来るものではない。

リアカは確かに研究に関しては天才のところがある。
でも、この国の研究設備は充実しているとは言えない。
魔法頼りな部分も多く、未知なるものを詳しく調べる事は出来ない。

研究都市はその名の通り、研究所が多く住む街だ。
街全体が研究所のようで、階級関係なく人々が協力している。
この街では魔力の有無ではなく、頭が必要とされるからな。

いろんな国から依頼も来ていて、俺も何度か連絡した事がある。
それなりに研究都市の責任者とは顔見知りだ。
だが、やはり距離が問題だし…他の依頼もあるからすぐに調べてくれそうにない。

だったら自分で調べた方が早い、研究都市に種が送られる前に城に向かった。
ヤマトは「どうしたんだよ!」と俺を引き止めていたが、振り返る事はなかった。

俺なら城に許可なく入れて、メイドを引き止めた。
種の場所を皆知っているわけではない、何人かに聞いても皆知らなかった。

「ゼロ、そこで何をしているんだ」

「ナイトハルト様」

俺がいろんな使用人に話しかけているのを見て、ナイトハルト様は不思議そうにこちらにやって来た。
ナイトハルト様なら種の場所を知っているかもしれない。

巻き込むわけにはいかないが、人を選んでいる場合ではない。
それに、危険な種を騎士団長だからと他人に簡単に渡すとも思えない。

エルを助けるためにナイトハルト様に事情を話した。
ナイトハルト様は花結晶について知らなかったから、それも話すと少し考えていた。

「お前の弟がか…」

「時間がありません、種を渡してもらえますか?」

「しかし、あの種は研究都市に送る事が決まっていて」

「手がかりはそれしかないんです、お願いします」

俺はナイトハルト様に頭を下げた、エルを助けるために…

エルは今現在進行形で苦しんでいる、早く楽にしてあげたい。
もしダメだというなら、強行突破しかないと考えていた。
この城にある厳密に保管する部屋は三つある。

何者かに盗まれたら大変だから三つに分けていて、二つはカモフラージュだ。
そして俺は正解の部屋が何処にあるか知っている。
何度か訪れた事があるからだ、騎士団長の俺と王族しか知らないだろうけど…

この国に居られなくなったとしても、俺にはエルがいればそれでいい。
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