食堂の給仕係は元S級冒険者

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新しい街へ

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「お会計をお願いします」

店の従業員の男に声をかけると、ニヤニヤしながら私を見てきた。

「女の子が一人で食べるには多すぎたかな。まあ、今度は彼氏か父親とでも来るんだな」

最後まで感じが悪い店だ。

店から出て大通りを歩いていると、後ろから別の男がぶつかってきた。

「どこ見て歩いてんだ!」

はーあ。

私は深いため息をついた。

なんて治安の悪い街だ。

私は男を無視して立ち去る。

「なんだ? あ! 痛い! 痛っ! 指が!」

男は手を押さえてうずくまった。

食堂から私をつけてきた男はスリだった。

わざと私にぶつかってきて、私のショルダーバッグに入れてあった財布を取ったのだ。

もちろん、ついてきている事は気がついていたし、スられた事もわかったので、一瞬で取り返し、ついでに指を折ってやった。

これでしばらくスリはできないだろう。

一生できなければなお良い。

こんなところに長居する気はすっかりなくなった。

次の街に行こう。

私はそのまま街を出ると、また走り出したのだった。

食料の補充をするのも忘れて。

……お腹すいた……。

あれから数日、近道をしてやろうと森を突っ切った結果、すっかり道に迷ってしまった。

鞄に入れていた食料はすでに尽きてしまった。

最終的には森で狩りでもすればいいのだが、せっかくの可愛い服を汚したくはない。

しかしそろそろ本気で狩りをするべきか? と考え始めた時、視界が開け突然街道に出た。

「み、道に出た……」

明るい日差しに泣きそうになっていると、ちょうどそこに一台の荷馬車が通りかかった。

「ん? こんなところに娘さんがひとりとか何かあったのか?」

ガタイのいい大男だが、口調が柔らかい。

クマのぬいぐるみを連想させる優しそうな人だ。

「道に迷ってしまって、やっと街道に出たところなんです」

私が答えると。

「なんだって!? 森を一人で抜けてきたっていうのかい? それは大変だったね。街に行くなら荷台に乗って行くといい」

優しい言葉に私はありがたく乗せてもらう事にした。

「お嬢さん、どこからきたんだい?」

ゴトゴト荷馬車に揺られながらおじさんが私に聞く。

「ガレリアです」

「そんな遠いところから一人で来たのかい? 大変だったね」

「あの……ここはどこなんですか?」

私の問いに首を傾げながらおじさんは答えた。

「どこって、ここはランベルの街だよ。ソレイユの」

「ソレイユ!」

なんと迷っている間に次の国境を超えていたようだ。

ソレイユとはガレリアのニつ隣、つまりガレリアからリッツバーグを超えた先にある国だ。

気が抜けた私のお腹が盛大になった。

「お腹すいた……」

まともな食事をしたのはかなり前だ。

「お嬢ちゃん、お腹すいてるのかい? ここで会ったのも何かの縁だ。うちはランベルで人気の食堂なんだ。俺はモルドー、食堂の店主だ。ぜひ食べてってくれ」

なんとこの人は食堂の店主だったのか。

「はい! ぜひ!」

そして私はモルドーの荷馬車に乗り、食堂、ひだまりの猫にたどり着いたのだった。
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