嫌われ悪役王子は死にたくない!!《本編完結済》

えの

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無言で俺を抱っこして歩くガイに俺の頭はクエスチョンマークがいっぱいだ。そーいえば婚約者の話はダメだとヘラに言われてたっけ…。

ガイの歩みが止まる。そこはガイの部屋でも俺の部屋でもなかった。知らない部屋…扉を開けるとガイは部屋の中に入り慣れた手つきで明かりを灯す。目の前に広がる光景に俺はうぉぉぉ、と歓喜の声を上げた。すげーめっちゃ本がいっぱい並んでる…ガイの部屋より多いんじゃないか?まるで小さな図書館みたいだ。

「ここは、俺の書斎だ」

「書斎…めっちゃ雰囲気良い部屋じゃん」

ガイは俺を降ろすと、お茶の準備をしながら色々教えてくれた。ここはライオン父のお仕事を手伝う時やのんびりしたい時に使う場所で、滅多に人を入れる事はないと。特別感溢れる言い方にちょっとした優越感が生まれる。

「へぇ~そんな部屋にお招き頂けて光栄です」

クスッと笑い勝手にソファに座った。このサイズ…ガイ専用なんかな?人間の俺には足が…ちょっと…届かないかと…別に俺の身長が低い訳じゃねぇし。

目の前の机に置かれるティーセットに手が届かない。ガイは俺の隣に座ると小さなティーカップを俺の方に、大きなティーカップを自分の方に置いた。…大きなティーカップはガイ専用か?小さなティーカップを見つめていると、何も入れていないぞと横からガイの笑い声が聞こえた。

ガイの顔が見たい…しかし…何でよりよって俺の隣に座るかな?!しかも左は痛いのよ!!向けないんだよ!!仕方なしに顔が見える右側に座ろうと腰を浮かすと、腕を強く引かれソファに体が沈んだ。いってぇ…首に走った痛みに思わず顔が歪む。

「逃げるな」

ガイが何処か焦ったような声を出す。俺を見つめるガイは苦しそうな顔をしていた。どうしたと言うのだろう。今日のガイは少し様子がおかしい…。

「なぁ、なんかいつもと違うくない?どうしたの?何かあった?俺がなんかした?」

俺の方まで不安になってくるじゃん。畳み掛けるように言えばガイは少し唸りを上げて話し出した。

「シオン…お前が記憶喪失になってから色々な事があったな…。初めて城で会った時、こんなにも美しい人が居るのかと心を奪われた…でもシオンは俺達の様な完全獣人を嫌っていた。その溝を埋めることは不可能だと思い諦めていたんだ。それが記憶喪失になった途端、全く逆の感情になっていた。お前からはいつも好意的な感情が溢れ、表情も以前より柔らかくなっていた。惹かれないはずがない…お前の事が好き過ぎて苦しいんだ…誰にも渡したくない…」


初めて聞いたガイの弱音。そして俺への想いに自分の目が段々と潤むのがわかる。こんなに嬉しい事があっても良いのだろうか?心が震える。独占欲最高。夢じゃないよな…。首をガイの方に向ける。よし、痛い。現実だ。

どうにかしてガイの今の顔を見たい俺は、首の痛みなくガイのそばも離れずに会話する良い方法を思い付いた。ガイの上に跨がればいいんだ!!

再びソファから腰を浮かすが、ガイが引き止めることはなかった。俺はそのままガイの前に立つと、よいしょとガイに跨がった。もちろん腕は首に回してますよ。あぁ、ガイの可愛いお顔が近くに…いい眺めですな。俺の行動に慣れてきたのか、ガイも俺の腰に手を回し落ちないように支えてくれた。ナチュラル紳士素敵です。そして気になる事を聞いてみた。

「なぁ、好意的な感情が溢れたって言ったけど…どういう意味?」

それか…まぁ、隠してるわけでも無いが…と切り出して教えてくれた内容に俺は絶句した。完全獣人とは感情を読取る力に長けているそうで、嘘なども見抜けるらしい。だから以前の俺からは嫌悪や憎悪を感じていたが、記憶喪失になってからは好意、喜びなど正の感情を感じるようになったと…。もろばれですやん!!俺の感情垂れ流し状態やん!!恥ずかしッ!!

そして一番驚いた部分は…なんと城内の完全獣人は別に俺の事を嫌って居なかったと言う事。逆に好かれてる方なんだって…。まぁ正直記憶喪失前の俺は散々な言われようだったが、記憶喪失になってからは好意的な感情しか読取れず、むしろ戸惑いが大きかったらしい。でも、本人は何も言わないし、完全獣人を嫌いって演技してるし、温かく見守ってあげようとなったらしいです。俺ってばピエロじゃん。生暖かい目で見られなかっただけ良しとしよう。

何故ヘラが勉強から脱走した俺を直ぐに見つけてしまうのかも分かった。ヘラが優秀って事もあるけど、城内で働く完全獣人達が、俺が襲われたり迷子にならないか心配で、あっちに行ったとか位置情報をヘラに伝えていたんだってー。これってもう、もふもふハーレム完成したんじゃねぇの?まぁ見境なくもふる気はありませんが…。お喋り出来る相手が増えるかもしれない!!テンション高めの俺に比べ、ガイのテンションは下がりっぱなしだ。

「俺はシオンを城の中に閉じ込めるような事をしている…その容姿に、その性格だ…。晩餐会後はきっと婚約者にと名乗りをあげる者が殺到するだろう…学園に通わせてもお前に惹かれない奴は居ないと思う…。俺はシオンの好意に甘えている。もしかしたらもっとシオンに相応しい相手が居るかもしれん。だからこそ…お前を城から出したくない…わりぃな…婚約者は諦めてくれ…」

寂しそうに笑うガイに俺のテンションメーターは振り切れた。俺のガイが可愛すぎてしんどい。何だかんだ俺はお城が好きだ。ヘラもブライアンも居るし、最近ではアレンが筋トレに付き合ってくれるようになった。ホスト保健医も定期検診という名のサボりで会いに来てくれるし、エリックもお勉強教えてくれる。あとは一緒にボードゲームしてくれる。なんか頼れるお兄ちゃんが増えたみたいで嬉しい。

「俺は別に一生お城から出なくてもいいよ。いや、たまには出たいかな?その時は勿論、ガイも一緒にな。それに俺はガイ以外に恋愛感情は芽生えない」

「そんな事分からないだろ…心ってのは変わりやすいもんだ」

そんな事分かっちゃうんですね~!!なんたってゲームの推しキャラですから!!あなたの為にゲームを買ったんですから!!ってか、推しを幸せに出来ないでどうするよ?!男が廃るってもんよ!!俺の愛が伝えきれてないから不安になるんだな…。俺はガイに触れるようなキスをした。

「俺はヘラもブライアンもアレンもクレイもエリックもみーんな頼れるお兄ちゃんって感じで好きだよ。でもさ、こんな事したいって思うのはガイだけ。本当のお兄ちゃんなのにね」

変だよね…そう耳元で囁けばガイはぶわっと毛を立てた。それでも俺は言葉を続ける。

「ねぇ、エッチしよ?ガイお兄ちゃんッ…」

お耳をハムハムしながら誘えば、ガイはグルッと喉を鳴らした。ガイお兄ちゃん…なんて厭らしい。ヤッてる最中に、お兄ちゃん気持ちいい…とか…言ったら最高じゃねぇかッ!!是非とも妄想に取り入れさせていただきます!!いや、今から実際に言ってやろうか…ニヤつく俺にガイは鋭い目を向けた。

「どうなっても知らねぇからなッ…!!」

乱暴に自分のシャツを脱ぎ捨てると、今度は俺のシャツに手を掛け始める。あぁ…荒々しいガイもかっこよす…。長かった…長すぎたけど…ようやく念願だったガイに抱いてもらえる時が来た!!今日ヤるって分かってたら、お尻の準備もっとしとけば良かった…。そこは痛くしないでって可愛くお願いしよ…それに俺は抱き潰してもらって全然OKよ!!問題はお披露目会終わってないって事だ…。まっ、いっか!!ヘラには一緒に謝ろーっと!!

死にたくなし、ガイとエロいことしたくて色々頑張ったら、俺の努力は無事報われました!!努力は裏切らないって本当だね!!まだ完全には安心しきれないけど、俺は可愛いもふもふ達や素晴らしいお兄ちゃん達に囲まれて幸せです!!この幸せを失わない様にまだまだ努力を惜しまず頑張ろうと思う。ガイ、俺を好きになってくれてありがとう。俺を選んでくれてありがとう。誰よりもガイを愛してるよ!!


【完】
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