魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

文字の大きさ
52 / 56
学園編

18.剣聖の力

しおりを挟む

 クラス一同は、模擬試合会場に移動し、剣聖ララフVSアル・バーナモントの戦いが今始まろうとしていた。

 グリシャは自分が先に戦うと言ってきかなかったが、結局じゃんけんでアルが勝った。

「くそう、アル君が先に戦うのか……。ま、まあいいだろう。お手並み拝見だ」

 グリシャは観覧席で歯噛みする。

 それをよそに、アルはさっさと舞台に上がり、構える。

「ララフさん、お手柔らかにお願いしますよ」

(さあ、僕の――剣聖エルフォ・エルドエルの娘よ。その力を見せてくれ!)

 アルは内心でわくわくを抑えられない。

「アル君、君の力、見せてもらうよ!」

 ララフも興奮して勢いよく剣を抜く。

 と同時に、既にその剣がアルの首元まで迫っていた……!

「は、速い!?」

 その速さは、さすが剣聖といったレベルで、全盛期のアルにも劣らない。

 だがアルはそれと同等の速さでもって、それを受け止める。

「なに!? 今のを受け止めるのか……!?」

 ララフは初撃で仕留めるつもりだったため驚いた。

(あ、しまったな……)

 アルはララフの剣を受け止めたことに少し後悔していた。剣聖の剣をすんなり受け止めてしまうなど自ら正体をばらしているようなものだ。

 アルが剣聖の生まれ変わりであることは、なんとしても隠したい事実だった。

 特に実の娘にバレてしまっては、どう説明すればいいのか見当もつかない。

(適当なところで負けておくべきだな……)

 アルはララフに勝つつもりなどはさらさらなかったのだ。

 だとすれば今の一撃で負けておいてもよかった、と思わないでもない。

(だけどまあ、それもつまらないか……。数分たったところで負ければいいか……)

 アルはそんなことを頭の隅で考えながら、ララフの剣撃を受け続ける。

 ――キンキンキンキン!

 だがその考えが裏目に出る。

 勝つつもりのない剣というのは、相手に自然とわかってしまうものなのだ。覇気のない剣。殺る気のない剣というのは、その所作にどうしてもにじみ出る。

 手抜き――手加減、そう言った言葉が近いか……。とにかくアルのそれは勝負の剣ではなく、指導の剣さながらに、とことん上から目線・・・・・だった。

 剣聖ララフは動揺していた。

(おかしい……さっきから本気で剣をぶつけているのに……。この子、一回も隙を見せない……)

 そもそも剣聖の剣を一学生がこれほど耐え続けるなどおかしなことなのだが。

 それをさも当たり前のようにやられては、剣聖としてはもう訳が分からない。

 目の前で繰り広げられる予想外の出来事に、ララフの頭は混乱していた。

(しかも、明らかに手加減されている……。あちらからは打ってこない……)

 一方のアルはというと、どうやって負けようか必死に考えていた。

(うーん、下手に負けると相手が傷つくし、かといって僕が怪我してもなぁ……)

 それと真逆のことをララフも考える。

 ――この少年に、どうやって勝とうか……。

(生徒を傷つける訳にはいかない……! だけど、彼に勝つにはもうこれしかない……!)

 ララフは自分の切り札をきることを決断した。

 剣聖が一学生に負けるわけにはいかないのだ。それは自信のプライド的にも、対外的にも……。

 そしてこれはもちろんアルの思惑通り。

 アルはララフが切り札を出してくるのを待っていた。切り札こそが、見たかったのだ。

(よし、これなら僕が負けても不自然じゃない……! さあこい、娘よ! お前の本気をみせてみろ!)

 ララフは剣聖としての意地を見せるべく、必殺の構えをとる。

(こ、これは……! 昔僕が編み出した、一撃必殺の構え――一刀直撃アイン・シュス・トェートリヒじゃないか! さてはララーナが彼女に教えたんだな……?)

 そう、ララフの剣はアルの――エルフォの剣を踏襲したものだったのだ。

 来る攻撃がわかっていれば、避けることは容易い。

 アルはそれに応じた回避行動に移るべく、身体をこわばらせる。

「これが剣聖の力よ! 一刀直撃アイン・シュス・トェートリヒ!!」

 ララフの刃が迫りくる!

 それは剣での攻撃だが、突き――ヤリのような挙動で迫りくる攻撃。

 全神経を一撃の点に込めることで、誰も避けることはできない。

 だがアルは違った。

 なぜならば彼こそがその技の発案者なのだから。よけ方も熟知している。

(さすがに手加減はしてるようだけど、こんなの僕じゃなきゃ死ぬぞ? 我が娘ながらめちゃくちゃだな……。心配になってきた……)

 アルはララフの剣を、けがをしないように自分の剣先で受け止める。

(なに!? 私の剣が受け止められた!? バカな! そんなはず……!)

 まさかの出来事にララフは一瞬ひるむ。

 アルは剣を受け止めたはいいが、そのまま衝撃を殺さずに、自分の剣を放り投げた・・・・・

 そう、まるでアルが剣の衝撃に耐えられずにそうなったかのように……!

(これでみんなは僕が負けたと思ってくれるだろう……)

 模擬試合では特に、先に剣を地につけたほうの負けとなる場合が多い。

 剣は剣士の誇りであり、命であるからだ。

「うおおおおおおおお! アル君が剣を落としたぞ! さすが剣聖さまだ!」

「やっぱアル君でも剣聖さまにはかなわないのね……」

 アルの思惑通り、みなそれで納得し、疑問に思うものはいなかった。

 そうただ一人を除いて……。

(そんな、私の剣が、しかも一刀直撃アイン・シュス・トェートリヒを剣先で受け止めることができるような人間なんてこの世には……!? そんなことができるとすれば……。いや、まさかね……。だけど、明らかに彼は手を抜いていた……。どういうこと?)

 唯一剣聖ララフだけが、釈然としないようすだった。

 アルは細かく詮索される前に、さっさと握手を求め、ステージを下りた。

「いやーやっぱ剣聖さまは強いなぁ。僕じゃかなわないよ」

 しらじらしい棒読みでやってきたアルに、ミュレットが疑問を投げかける。

「アル、わざと負けたでしょ……」

「さあて、なんのことだか」

 とにかくアルは目立つのが嫌なのだ。

「さ、次は僕の番だね。アル君の仇をとってあげよう」

 アルと交代に、グリシャが意気揚々とステージへあがる。

 だがララフの興味はそこにはない。

 若き剣聖は、もやもやとした気持ちを抱えながら、いつまでもアルの方を睨み続けるのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...