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学園編
20.
しおりを挟む「お父様……どういうことか、説明していただけますか?」
剣聖ララフは、目の前の少年を父と呼んだ。
それはこの少年、アルのとんでもない剣技を目にしたからだ。
「う……もう言い逃れはできないね。ララフ、大きくなったね。会えてうれしいよ……って、う!」
アルが声を上げたのも無理はない。
ララフによって、これ以上ないくらいきつく抱きしめられたからだ。
しかも、本来アルが享受できるはずの、ララフの豊満な胸は、今は堅いプレートに覆われている。
そのため、アルは鉄の塊に押しつぶされる。
「く、くるしいよ……」
「す、すみません……でも、やっと会えました。私が幼いころに、なくなってしまって以来……会いとうございました!」
ララフはまるで子供のように涙する。
無理もない。彼女にとって、記憶の中の父などほぼ無に等しく、伝説上で語られるエルフォ・エルドエルの雄姿だけが想像するすべてだったのだ。
数十年を超えた再会に、ララフもアルも感動する。
だがそれを喜んでばかりもいられない。
「アル・バーナモントくん。今すぐ職員室に来なさい」
教師が寄ってきて、アルにそう告げたのだ。
理由はもちろん――。
◇
場所は移動して、職員室――。
もちろん剣聖ララフも事情聴取のため同行した。
「グリシャ・グリモエルを殺害した罪、どれほどかわかっているのだろうね?」
グリシャ・グリモエル――理事長の孫にして、この学校の生徒。
先ほど、邪剣マグダウェルに魂を喰われ、アルによって切り伏せられた次第だ。
「お言葉ですが、彼はもう助かりませんでしたよ? 邪剣マグダウェルに喰われては、手の施しようがない。それに、あのままの彼を放っておけと? あのままでは、確実に犠牲者がでましたよ?」
アルは反論する。
しかし、彼ら教師に理屈は通じない。
「そういうことではないのだ。君は理事長の孫を殺した。わかるね?」
「はい……」
アルは仕方なく、反論をあきらめる。
しかし、ララフがそこに抗議を申し立てた。
「ちょっと、それっておかしくありませんか?」
「剣聖殿、学内のことに口を出されては困るのですよ……」
「私もこの学校の出資者ですけど……?」
「そうは言われましても……相手はあの理事長ですからねぇ……」
話し合いは膠着状態に陥り、処分は後日言い渡されることとなった。
「こんなのおかしいわ……! ねえお父様……」
「まあ、そんなこと言っても仕方ないよ……。とにかく、生徒のみんなを守れてよかった」
「まあ、そうですね……」
◇
「アル君、君の処分が決まったよ。君は退学だ。それと、理事長は君の顔も見たくないそうだ。わかったら、さっさと学園を去ってくれるかな?」
「そんな……!? お父様……じゃなかった、アル君もなにか言い返さないの!?」
ララフだけがそう騒ぐも、アルは黙ったままだ。
「なにを勘違いされているのです? 剣聖ララフ殿、あなたも同様ですよ?」
されど教師は、冷淡な声で告げる。
「は?」
「理事長はあなたも同罪と判断されたのです。さっさと立ち去ってください。あなたの出資はもういりません。今後一切、学校としては剣聖とのやりとりを拒絶します」
「そんな勝手な……」
どんな言い分も通らず、アルとララフは仕方なく、学校を後にした。
「こんなことって……」
「まあ、仕方ないよ。なるようになるさ」
◇
この話は、すぐに町中、いや、国中に広まった。
小さき英雄アル・バーナモントと、剣聖ララフ・エルドエルが理事長から追放を言い渡されたこと……。
その原因が、理事長の孫の暴走によること……。
それは、王の耳にまでとどろいた――。
「なんという酷い事件だ……! 許せない……!」
王はその重い腰を持ち上げ、学校へと向かった。
◇
「この学校は、生徒を邪剣から救った英雄を、退学処分にするのか……?」
「あ、あなたは……!? 王!?」
理事長のもとへ現れたのは、他でもないこの国の王だった。
「す、すみません……そんなつもりは……」
「いい訳はいい! 今すぐアル君と剣聖様を連れ戻せ! そしてお前は理事長をクビだ!」
「ひ、ひぃ!」
こうして、王の一声で、理不尽は覆され、アルは復学を許されたのだった。
◇
「なんだかわからないけど、よかったよ」
「ほんとよ、一時はどうなるかと思ったわ……」
アルとミュレットは、小声で雑談をしていた。
生徒たちはみな、集会用の講堂に集められている。
「でも、理事長はクビみたいだね……」
「おかしな話ね。でも、次の理事長はいったい、誰になるのかしら……」
「そうだね……」
集会が始まると、それまで騒がしかった生徒たちも、みな壇上に注目する。
それだけ、新しい理事長について、興味津々なのだ。
「えーでは、新しい理事長を紹介します」
――ゴクリ。
会場が一瞬、静まり返る。
「あ、あれは……!? まさか……!?」
そう、壇上に現れたのは――。
「私が新しい理事長の、ララフ・エルドエルだ。よろしくたのむ」
ララフは、壇上から、講堂内にいるアルに、ウインクで合図を送るのだった。
「とんでもないことになっちゃったな……やれやれ……」
◆
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