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学園編
21.
しおりを挟む騒動がひと段落して、アルは日常を取り戻していた――。
――とはいかず、あれからアルの学内注目度はさらに上がった。
「あれが剣聖さまをも上回ったというアルくんか……」
「さすがだな……カッコいい……」
などと、道行く生徒が噂をしている。
「困ったなぁ……また目立っちゃったよ……」
などと思いながら歩いていると、アルの後ろから一人の生徒が声をかけた。
「あの……剣聖さまですか……?」
「はい……?」
アルは一瞬、ドキッとしたがすぐに「そんなはずはない」と落ち着きを取り戻す。
アルが剣聖エルフォであることを知る人物は、現剣聖のララフしかいないのだ。
「いや、僕は剣聖じゃないけど……? 剣聖はララフ理事長だよね? なにか勘違いをしていないかい?」
アルは振り返り、優しく諭すように言う。
「いえ、勘違いではありません、剣聖エルフォ」
「…………!?」
その言葉を聞いて、アルは驚き、困惑し、焦る。
前世の名を知る人物など、思い当たらない。
それに、そのことを知っているということは……なにかとんでもない秘密を握っている人物だということだ。
アルはその生徒の口を手でふさぎ、人気のないところに連れていく。
「ちょっと……!」
◇
「君……いまなんて!?」
「だから……剣聖エルフォですよね?」
その生徒は、少女のような見た目をした男子生徒だった。
その点はアルも同じだが、アルよりさらに少女の成分が多いように思えた。
背も低く、体型も華奢である。
「どこでそれを……? 君はいったい……?」
アルは素直に疑問を口にすることにした。
考えても妥当な可能性は思い当たらなかった。
「お気づきではないのですか? 私は、あのときの斥候です!」
「…………?」
言われても、アルは数秒意味が分からなかった。
あのとき――とはどのときであろうか。
アルはまだ生まれて何十年も経っていないし、こんな知り合い、いた覚えがない。
それに、アルの知る限り、この人生で「斥候」などという言葉とは無縁だった。
ということは――前世。
そこまで記憶をさかのぼり、呼び起こす必要がある。
「…………君は!?」
「ようやく思い出されましたか……」
そう、剣聖エルフォが死んだとき、アルに転生したとき――。
そのとき剣聖エルフォの近くにいたのが――この若い斥候兵の男だ。
だがそれがどうして、アルと同年代の子供の姿をしているのだろう。
「君も…………転生したのか…………?」
「はいそうです。私も、あのときあなたと一緒に、魔法攻撃に巻き込まれて死にました」
「そうだったのか……」
なんとも不運なことである。
アルの中の剣聖エルフォはそう、気の毒に思った。
「それで、君はこの転生についてどう考える……?」
アルは境遇を同じくする者同士、この男子生徒と情報交換をしようと思った。
唯一、同じような数奇な体験をしてきたのだ。
なにかいい進展が図れるかもしれない。
「そうですね……転生したのは何者かによる魔法の効果だと思いますが。その目的まではわかりませんね……」
「そうか……そこは僕も調べているところなんだ。でも、これから協力してやっていけたらうれしいな」
「そうですね。お互いにこの謎を解き明かしましょう」
アルは男子生徒と、握手をかわそうとした。
しかしそのとき、妙な気配を感じたのだ。
あのとき感じたのと同じような――。
「お父様! そいつから逃げてください!」
「…………!?」
アルを制止したのは、ララフの声だった。
アルは急いで男子生徒から間合いをとる。
「……っち、気づかれたか……」
男子生徒はそう唇をかむ。
アルはようやく状況を理解する。
この男子生徒は、いま、自分を殺そうとしていたのだ。
感じた妙な気配というのは、殺気であった。
では、なんのために……?
「そうか……!」
アルの中のエルフォの記憶、意識、人格が、一気に戻ってくる。
今まで記憶に蓋をしていたのだ。
それが、この出来事をきっかけに、溢れ出す。
そして点と点がつながったように、すべてに合点がいく仮説を閃く。
「おまえ、あのときおれを殺そうとしていたのか……?」
アル――ではなくエルフォは、目の前の少年にそう問いかける。
少年――ではなく若き斥候は、答える。
「ああ、そうだ……二度も失敗したがな」
そして、物語は佳境へ!
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