思い出

清水 優雨

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「前3列、視力悪い人や勉強頑張りたい人の指定席にします、ここがいいって人手あげて。」
南口先生がそういう。先生のクラスは大体席替えはこの体制らしい。咲は真ん中の一番前の列を選んだ。
「よっ」
席を移動させた後、横にいたのは三日月朔だった。小学校が同じだったが女子からの人気が高く咲が気軽に話しかけれるような存在でもなかった。でも中学校に入ってからはそうでもないようだ。
「あ、うん」
「あ、うんてなんだよー、これから隣なんだからさ、ほら、よろしくな。」
「よろしく。」
話したことがない割に小学校が同じである程度知り合いなのが気まずさを引き立てた。
「咲って、去年何組?」
突然の名前呼びに少し動揺してしまう。それを悟られないようにしながら、
「去年は1-5だよ。」
と冷たく言った。
「1-5か、隣じゃん俺1-4だったの、あんまり見かけなかったな、5組といえば龍太いたよな?」
「うん、あんまり話したことはないけど。」
「そっか、俺龍太と仲良いんだよ。」
朔の話の広げ方がうまくて驚いた。
「なんて呼べばいい?」
「あ、朔で。名字あんまり気に入ってないんだ。」
「え、なんで?素敵だと思うけどな。」
社交辞令ではなく本心だった。
「よく言われる、ありがとう、でもなんか女子、って感じがするんだよなー、偏見だけど。」
そう言って朔は笑った。女子に人気な理由が少しわかった気がした。

帰ってスマホを見ると滅多に通知の来ないトークアプリから
「朔さんがあなたを友達に追加しました」
と通知が来ていた。
チャット画面を開くと
「よろしくー」と有名アニメキャラのお辞儀しているスタンプが送られていた。朔みたいな人気者と初めて友達になったので驚いて
「よろしく。」
と送った。後から冷たかったかなといろいろ考えたが気にしないでおこうと思うことにした。

次の日もその次の日も朔とは学校でもトークアプリでもよく話し、仲良くなっていった。ある日咲は学校で適当に
「朔って好きな人いるの?」
と聞いた。もちろんいないと返ってくると思ったのに
「あ、うん」
と少し顔を赤くさながらそう言った。
正直言って咲はショックだった。今まで感じたことのない形のショックでまるで心に穴が空いたみたいだった。
「へーそうなんだ、」
誰か聞きたかったが聞くのが怖かった。
「誰か知りたい?」
朔はそう聞いてきたので思わず頷いてしまった。
「由佳。」
その瞬間思わず泣きたくなるような朔を睨みたくなるような衝動に駆られた。
由佳はいわゆるぶりっ子というやつで咲はあまり好きではなかった。
「あ、そうなんだ。いいじゃん。由佳。」
そうだろ?と少し照れながら言う朔を見て咲は泣きそうになった。

咲は思った。自分は朔が好きだと。朔に恋をしていると。
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