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序章・タケル篇

はじまりの村は○○○の村!?

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 森の鳥が朝日の出の時間を知らせ、太陽が自然の山々を照らし、まだ夜だった村の空気、温度を一変させる。
 今回はその村の話をする。
「ふぁ~ああ」
「おお、お早う」
「ああ、今日もお早うさん」
 朝が早い人達が家屋にて、のそのそと活動を始める。ある人はいつもの朝食、あの人は畑いじり、別の人は狩りの準備など平和気ままに過ごしている。

 そんな時、大門の門番らしき男が青色の服の者を見つけた。
「あれ?こいつ、何処のどいつだ?」
 青色のジャージの男─タケルは瀕死ながらも2日目の朝を迎えた。



「ふぁーあぁ、あれここどこ?」
 起きて大きく背伸びをし、タケルはあたりを見回す。木造作りの建物、敷き詰めたわら、隣の部屋から聞こえる「ブヒブヒ」の声、そして唯一、壁が無い代わりに縦横に組まれた鉄の棒、まるで檻の様だ。
「てか、檻じゃん!」
「目、覚めたな」
 「お早う」と声を掛けたのは、タケルにとって見たことがないだった。

 エルフ族 アーフィリア・レクス LV36 HP1485 MP948 役割・弓剣士…

「高!と、えるふ?」
「あぁ見ての通りエルフだが、高いって何の話だ?」
 【状態鑑定眼ステータスチェッカー】で昨日遭遇したゴブリンよりLVが高かった事に驚いたタケルは引きつった顔で「何でもないです」と言うとレクスは「そうか」と興味ない位に呟くと、タケルのいる檻に向かって、
めし食べるか?」と言った。


 マルラカの村
 山と山の森林の中に位置する村、人口90人弱の平和なエルフと妖精の村である。 その村から少し離れた所にカーリア村という、同エルフの村がある。

 その日、タケルはマルラカ村の村長の家に呼ばれ、1日ぶりの食事をガツガツと食っていた。
「元気な事で、結構だ。」
「はい!頂いております!村長さん!」
「ほっほっほ、」
 タケルはマルラカの村長とレクスとは違う女エルフが部屋に入ったのを構わず食事を続けている。女エルフはリュゼと名乗った。村長はタケルに当たり前の質問する。
「それで、君は何処から来たのだ?」
「それはですね…」
 タケルは食事の箸を止め、異世界から来たこと、この世界の見識を知らないこと、魔術師の思いを叶えると帰れること、マルラカの村に来るまでの詳細を話した。
「むぅ、やはり、こうなるか」
「こうなるって?」
「君が来る前、ロザリア様から御告おつげがあったのだ」
「ろ、ロザリアを知っているのか?」
「これが私の家に」
 村長が出したのは、私の名が入った手紙、差出人は私の名だ。
 『今日か明日、マルラカ村に一人の男が来る。その者の言う事は全て真実だ。ロザリア 』
「あの神様がねぇ」
「しかし、村長、」とリュゼが割り込む。
「私は信じられませぬ、【観測者】のロザリア様がに手紙を出す筈が無いです。この者がロザリア様を偽り、村長の家に置いたのでしょう」
 リュゼはタケルに疑いの目を向けている様だ。タケルはこれに少しだけ反撃した。
「言いがかりだし、こんな男で悪かったな」
「まあ、そうだが」
「オイ」
 私も同意だ。

「私もそれを考えた」
「この者がータケルが私の家にあらかじめ置いたのかと」
「……」
「しかし、タケルの言う事も嘘では無いと思う」
「村長!」
「リュゼよ、話を聞きなさい、…だからに連れて行こうと思う。」
 リュゼが遅れてなるほどと頷く。
「あそこってどこだ?」
 村長は少し勿体振って言った。


「神の泉、じゃよ」



 神の泉
 この世界のどこかにある真実を見極める事が出来る泉。タケルの世界では、『 真実の口 』と同じ様な物である。
 真実を言うと泉は明るく光り、嘘をつくと真っ赤に広がる。
 説によると嘘をついた人の血の色だと言われている。


 泉は村近くの山の中腹に祀られていた。
 泉に来た者はタケルと村長とリュゼ、それとタケルが逃げられない様に監視が2人付いている。
「それじゃあ、始めるとするかの」
 村長がそう言うと桶で澄み切った泉の水を掬い上げ、胡座あぐらを掻いているタケルの前に置いた。
「手を置いてみよ」
「あ、はい」
 タケルは桶に手を入れ、綺麗な水に触れた。
 そこから先は、ただ質問に正直に応じ続け、水もタケルの手も真っ赤に汚れる事はなかった。

「真っ赤にならんかったな」
「のう」と村長はリュゼに促す。
 まだ不満がある顔のリュゼは「一応、信用してやる」とぶつぶつ言う。
 反対に良い笑顔見せた村長はタケルの方を向いて言った。

 「ようこそ、マルラカ村へ」


 泉から帰り、大門を開くと大勢のエルフが村の広場にいた。
 こちらの帰りを待っていたらしい。
 しかし、泉に行く時よりエルフ達のいぶかしげな視線が増えている。
 そこで村長が話を切り出した。
「この者は、神の泉でも真っ赤にならんかった!よって!この者を客人としてもてなす!皆、安心しろ!」
 村長が言うと、エルフ達がほっとした雰囲気になり、その証拠に数人が胸を撫で下ろしたり、子供達が駆け寄り質問攻めが始まった。
「ねぇお兄さん、どこから来たの?」
「兄ちゃん!一緒に遊ぼう!」
「オレも!」
「僕も!」
「お、お、お、たa」
 助けてくれと、村長やリュゼに目を流すが、村長は微笑み、リュゼは知らんぷりをしている。
 しょうがない、とタケルは子供達の攻めに負け、質疑応答を繰り返した。

「た、タケル殿~」
 三つ編みの少女が呼んだ。
「あ、なんですかーって、殿?」
 ようやく、子供達の魔の手から興味をらす事に成功したタケルは呼ばれた事の無い『殿』付けに戸惑った。
「はい、客人なので」
 少女の名はサラと言うそうだ。
「別に殿じゃなくてさん付けで良いよ。で、どうしたの?」
「はい、これを返すと村長が」
「あ、え、確かそれ、ポケットに…」
 タケルは手をポケットに突っ込んだがは無かった。
「すみません、貴方の審議が終わるまで拝借させて頂きました」
「あ、そうか」
 不審物か危険物を持っている可能性があるから没収したという事だ。
 タケルは久しぶりの感覚でを取った、

 スマホを。


 タケルはマルラカ村の東にある、急でない渓流にいた。
 その川でタケルは色々考えた結果、祖父に電話して見る事にした。
 今のこの状況を知って貰う為にだ。
 それに二つの世界の時間の流れが違うかも知れないので、向こうが心配すると思ったタケルはスマホを起動した。
 スマホは一晩経った性か充電が半分位減っている。そして、異世界だと言うのに電波の柱がなんと二本立っていた。
 それを見たタケルが「神様ありがとう‼」と叫んだのは、タケルと私と声にびっくりした妖精達だけの秘密だ。
 さっそく、祖父の家の電話番号にかけた、あとは繋がるか祈るだけ。
 「もしもし、」
 繋がった、それだけで喜んだ。

「あ、もしもしじいちゃん! 俺!タケル!今…」


 「どなたかな?」






 繋がった、筈だった











 「─え」








 私はタケルの未来が見えている。
 そして、タケルの進む一本の未来が、道が、



 裂け始めていることに私は、

 悲しく見る事しか出来なかった。
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