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10日目/岡崎優輝【説得】
しおりを挟む「ちょ、ちょっと待ってストップ!ストップ!」
掴まれた両肩に武ちゃんの混乱具合が力の強さで伝わってきた。
予想外での異常な混乱ぶり!唖然となりながも『え?なんでこんなに?』と思っていると、ハッと思い出した。
そっか!女性関係で怖い思いしたから、今の姿の武ちゃんに変わったんだよな。
「武ちゃん大丈夫だから!ちゃんと俺の意思で書いたし、心配しないで!」
なだめるように俺は武ちゃんに言ったが、武ちゃんにしてみれば自分から地獄に逝こうとしてる様にしか見えないんだろうな。
どう言えば納得してくれる?
素直に実は記憶があって違う世界から来て『亡き妻の希望で沢山の子供を作らないといけない』と伝えるか?
ん?希望か?脅迫されてる様な気が………
いやいや考えるだけで背筋が寒くなりそうだからやめよう。
それに素直に言っても普通信じないだろ!
それより待てよ。武ちゃんが女性との、そういう事を『地獄に逝く』と思っているならその認識を換えればいいのか。
「武ちゃん!俺は逃げないで闘う。詳しくは言えないけど勝算はあるから。」
「か、勝てる訳ないじゃない………あんな野生の獣に………」
話を聞いていた鈴鳴先生も武ちゃんの意見に賛成らしく
「そうだぞ優輝君!理性を失った女は通常の2倍から3倍の力が出ると昔に研究結果が出ている。わ、私は慣れているから理性を失う事はない………はずだ。」
勿論知ってるしネットで調べたからな。今の男は異変が起きる前の1/2もしくは1/3の力しかないらしい。
現に俺より体格のいい武ちゃんに力一杯肩を掴まれたけど、そんなに痛くない。
そう考えると俺は通常の男より2倍から3倍の力だって事になると思う………多分。
理性を失った女性は怖いと思うが、襲われるつもりは全くない。逆に俺が責めるつもりだからな。
こっちの世界では女性は男を[責める][襲う][ヤる]との表現・認識で決まっているし、勿論男も女性から[責められる][襲われる][ヤられる]との認識で対処方法は[逃げる][諦める]の二択しかない。
例外は結婚した夫婦だけみたいだけだが………
しかし本当になんだこの世界………………アホか!?
男はマグロが当たり前?
何言ってんの?
女性と関係を持てそうなら、そのチャンスをものにして、みなぎる気持ちを息子に託し突撃だろ!
前の世界にも草食系なんて呼ばれている男がいたが、俺から言わせれば男の子だ!男じゃない。
「逃げる為には力は必要だと思いますよ。でも勝つ為には力なんていらないんです。責めるんです!力が強い?なら力を出せなくすればいい。」
「な、何を言ってるの?男が責めるなんて………自分から女性を触る………触る?…………優輝君!可能なのね?」
おっ!武ちゃんは気付いたみたいだ。
「はい!」
さっきまで混乱していたのが嘘の様に、武ちゃんは力強い目で俺を見て頷いた。
「わかったわ。その可能性が実現するなら、この世界の男にも希望が生まれるかもしれない…………そうよ!補食されるだけじゃだめなのよ、時に戦わないと自由を勝ち取れない。」
おぉ~武ちゃんが熱い!
そんな武ちゃんと俺は熱く目を合わせ一緒に頷いた。
その時同じく部屋にいた鈴鳴先生が小さい声で
「あの~意味がわからないんだが…………説明……して………くれ…………ないよな~」
その場の雰囲気に負けた鈴鳴先生だった。
なんとか武ちゃんを説得出来たが、しかしまだ問題が1つ解決していない。鈴鳴先生の所業についてだ。
研究の中での1つの実験としてやったのなら罪にはならないがだろうが、研究サンプルとして提供された卵子を使わず自分の卵子を使ったのはマズイ。私的目的として特定の男性の精子で受精卵を作ったと思われてもおかしくない。ただ、まだ出来た受精卵を母体………自分の体に使用してない。
極めて黒に近いグレーだ。
まぁ、でも俺の種の秘密を知っているしこれから関係を持つ予定だから捕まってもらいたくない。
そして今、目の前には正座をさせられている鈴鳴先生がいる訳だ。俺がさせた訳ではないから!
武ちゃんが………ね!
俺はベットの上にあぐらで座っている状態………そんで武ちゃんからの説教が終わり………朝食はその説教の間に食べた。
非常に気不味かった。
そんで今『判決は?』みたいな目で武ちゃんと鈴鳴先生に見つめられてる状態………
「え~と鈴鳴先生とは子作りする予定なので、受精卵を勝手に作った事はギリギリ許します。それとせっかく作った受精卵は二人目を作る時に使うと約束してください。まだ着床して胎児となってないですが大事な命だと思うので………いいですか?」
やはり甘いかな?武ちゃんは俺の判決に渋々そうにしている。
そして鈴鳴先生は何回も首を縦に振って『助かった~』と思っているのがわかるくらい安堵した顔をしていた。
ん!もう少し言っておくか………
「あと!不健康な人とは子作り出来ないので!あぁ~そうそう常識的に欠ける人も無理ですね。そんな人がいたらリストの順番の変更もしくは最悪除外しないとな~」
そう言いながら武ちゃんを見ると『うん、うん、その通りだ!』と今度は納得してくれたみたいだ。
鈴鳴先生は………あぁ、寝不足で顔色が悪かったのにさらに青ざめた顔になって何度も土下座してました。
その後片手に俺の食べた食器類を持ち、もう片手で鈴鳴先生の首根っこを掴み連行して行った武ちゃんは男らしかった。
勿論口には出せないけど………
そんな朝からひと騒動も落ち着き、精神的に疲れてしまった俺は病室のベットの上で少し休憩した。
ふと時計を見ると時間は10時14分………あっ!そうだ!
昨日の夜に気になった事があったんだっけ………明日退院して関係は無くなるかもなのだが、あの子達のその後退院したらどうするのか気になったのだ。
談話室に行ってみるか………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「「「絶対ダメです!やめてください!」」」
何故か今、若者達に囲まれて30分程説得されています。
どうしてこうなったのだろう?
談話室に来てから30分程過ぎたあたりに質問されて、答えたら………今の様に自殺をしようとする者を思い止まらせようと必死の説得をされている。
俺がしているのではなく、されているのだ。まだ中学生ぐらいの若者に………
そう!なぜにこうなったかと言うと1時間前に談話室にきたのだが、友則君は家から母親と妹さんが来て10時から面会中だった。
それで待つ間にいつも友則君と一緒にいる武司武司君、雅人君、佑斗君と会話を始めた。
最初は直接的に話をした事もなかったから、緊張している様子だったが30分程話す頃には打ち解けていた。
彼等にもいつ頃退院するのかと聞くと、中学を卒業するまでには………と三人共答えた。どうして?と理由を聞くと、この世界では一般的に中学まで共学で女子がいる学校に行くのだが、中学生になった頃から女子の視線や偶然を装ったセクハラ行為がトラウマ的に多くなり不登校になったらしい。
不登校になって家にいても、姉や妹、酷い話だが母親まで男として成長してきた彼等を性的に見る様になり逃げる様に入院してきたそうだ。
それで高校になれば男子校の寮生活になり安心して生活出来るからと………
現在、総理大臣の虎太郎さんが国会で法案を成立させようと奮闘中らしい。
法案の内容は中学から本人の希望で共学か男子校かを選べる事それと本人の希望次第で自宅か寮生活を選べる事の2つ。
今の彼等には切実でピンポイントな法案だ。しかし………女性議員からの猛反発にあっているらしい。
彼女らの言い分はなんだかんだと難しく意見を言ってるらしいが、簡単に言えば男性との知り会う機会が減るのと自分達が過去に中学生だった頃男性に毎日会えて、あわよくば欲望を少なからず満たした思い出をこれからの女の子達から取り上げて無くそうなど許容出来るはずがなかった。
少ないが女性議員の中にも娘がいる親もいる。
思春期に娘が悶々とした感情を発散出来ないせいでグレても困るのだ。
実際、某大学の教授が思春期に男性と接しなかった女性は犯罪率が高いと言う研究報告を出していた。
そんな事情を教えて貰った後逆に俺に質問がきた。
「岡崎さんは退院したらどうするんですか?」
その質問の答え方を間違えた。いや間違えたと言うより前の世界の常識で答えてしまったのだ。
「そうだな~落ちついたらまず仕事を見つけて、お金貯めてぶらっと1人旅で温泉とか名所でも見て廻るかな~」
何か間違ってる?間違ってないよな?
そう答えたら「「「絶対ダメです!やめてください!」」」
って三人声を合わせてそれから今に至る訳だ。
何がダメだと言うと、まず仕事。
「どんな仕事するんですか?」の質問に
「あ~サービス業とかかな~わりと接客好きだったからな~」
これも間違ってない。前の仕事がそうだったし………
男は仕事しないのが普通という常識、武ちゃんとかは男性から除外されているからいいらしい。
総理大臣の虎太郎さんは男の代表みたいな存在でそれもいいらしい。
それ以外でも仕事をしている男性はいるが、大抵が家で趣味程度だと言う。
それより1番の大きな問題は一人旅や温泉#や名所に行く事だった。
一人旅?多分10㍍も歩かないうちに押し倒されて物陰に連れて行かれますよ?
温泉?襲われたいんですか?
名所?外国に拐われたいんですか?
とこんな感じで説明されて最終警告が
「「「絶対ダメです!やめてください!」」」
の2連発………友則君も途中から加わりお昼まで若者達から考え直す様に説得された。
俺?間違ってます?
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