甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

Love gauge:10 甘過ぎるお仕事

＊7＊

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「可愛すぎてむかつくんだよね。」

ゲームの中でヒロインがやんちゃなドS社長に言われる台詞だ。若泉さんの心から出たものでは決してない。わかっている。わかってはいるけれど、この胸の高鳴りはどうにもならない。

「顔上げて。」

ここからは若泉さんの言葉だ。背中には壁、目の前には光り輝くイケメン、顔の両側には彼の両手。彼の影に覆われた体はすっかりガチガチで熱い。

───どうしよ、絶対顔真っ赤だ・・・。

「こっち見て。」

若泉さんが俯く私の顎を持ち上げると目が合う。黒いガラス玉のように綺麗な目が私を捕らえる。

「目が潤んでる。どうして？こうされるとこわい？」

「こ、こわいっていうか、ドキドキというか、ゾクゾク、というか・・・。」

「じゃ、こうされると嬉しいの？」

「その、嫌いな人とかじゃなければ・・・。」

「・・・俺のこと、嫌いではないんだ？」

「え！？あ、いや、それは、はい・・・。」

ふいにそんなことを聞かれて驚きながら答える私に彼は顔をグッと近づけてきた。

「それで、更にこうなるとどう？これから何されるって思う？」

「な、ななな何って・・・。」

無表情で聞いてくるが、答えをわかっていて聞いているんじゃないかと思ってしまう。でも彼の瞳からは『仕事を進めるのに必要だから』という業務的な目的以外感じられない。だから恥ずかしいけれど答えるしかない。

「言って？教えてよ。」

彼の指が一瞬唇に触れた。体の中がにわかにざわめく。

「キ、キス、とか・・・。」

「そっか。」

その言葉に彼の顔面がますます近づいてくる。

───えっ、嘘・・・！？

嫌いではないけれど好きでもない人とキスなんて・・・逃げなきゃ、そう思うのに体が動かなかった。若泉さんの吐息が唇に当たる。