甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

Love gauge:60 悲し過ぎる過去

＊8＊

目が合って、彼の視線が自分の唇に向けられていることがわかった。頭ではいけないと思っているのに、心はもう制御不能だった。そのまま目を閉じるとすぐに温かくて柔らかい感触を感じた。あの人と何度も交わしたキスを塗りつぶすように隅々まで丁寧に口付けられる。

自然な流れでゆっくりと咥内にトキが入ってきた。二人の口に残るアルコールが合わさって私を更に酔わせる。乾いた温かいキスから水分を含んで濡れた熱いキスになり、深く激しい触れ合いが思考を溶かしていく。もっともっとという気持ちが溢れ、全身で彼を求めている。こんな、狂おしいようなキスは初めてだ。

熱い唇で耳たぶを優しく食はまれて首に口付けられると思わず声が漏れてしまった。あの男性ともっと先に進んだ時でさえ声が出たことなんてなかった。思考がとろんとしてきて、もはやこれが現実か夢かわからなくなってくる。

ソファに体が沈んだ時、『ビジネスパートナーなのだからトキのことは好きになってはならない』、という気持ちは完全に溶けてなくなってしまっていた。石のように固い気持ちだと思っていたのに、舌の上に乗せたらみるみる溶けてしまって、まるで石を模したチョコレートみたいだと思った。