テツとぼく  山火事、放火事件編

桜小径

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山火事 放火事件編

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ぼくとテツは乳母車の頃からの付き合いだ。

幼馴染というやつだ。

ぼくは絵本や本が大好きなどっちかと言うとインドア派。テツは山や川で遊びまくるアウトドア派。

なのに物心ついた頃から一緒にいる。

凸凹コンビだ。

保育園も幼稚園も小学校ももちろん同じだ。

二人とも親が共働きで商売をしてたので気があったのかもしれない。

ぼくらが通う保育園は村のお寺がやってる保育園だ。

当時珍しかった鉄筋3階建ての建物には、3階から下まで続く滑り台が設置してあった。

危ないからか、はたまた事故があったからかはわからないが、ぼくらが通園する頃には使用禁止で滑り台の途中は花壇になっていた。

テツは言った。

「あれ、上から滑りたいなあ」

「そやな。でも途中に花壇があるから無理やん」

「滑ろうや!」

「どうやって?」

「花壇を落とす!」

「あほな事言うな」

「おまえも滑りたい言うたやんか」

「そら滑りたいけど、、、」

「お昼寝の時間に三階に来てな」

と、いうとテツは自分の教室へと入って行った。

ぼくは「無理やろ」と思いながら大きな滑り台を眺めていた。

和田あき子にそっくりな、ぼくの担任の保母さんがぼくを探しにきた。

「あっ!いた!またこんなとこで何してるの?みんなお部屋に集まってるよ」

と、無理やり部屋に連れ込まれた。

お遊戯やなんややってお弁当を食べたあとに必ずお昼寝の時間がある。教室の窓に分厚いカーテンをして部屋の中は真っ暗だ。

みんなも保母さんも寝た。

そのタイミングを見計らってぼくは教室を出て、3階に行った。テツはもう来ていた。

「はじめようで!」

嬉しそうに3階の窓を開けて滑り台に乗り出した。

「おまえも来いよ」

しかたなく、ぼくも着いていった。滑り台に飾ってある花壇を二人で持ち上げて、下に落とす。

頭の中で声がする。

「坊主。やめるんじゃ」

「?気のせいかな?」

と、思ったぼくはテツと二人で花壇の植木鉢に手をかける。

まずはチューリップの鉢から。

「ガシャーン」

次から次へと綺麗な花が咲いた植木鉢を落として行く。

陶器や花の入れ物が割れる音。当然、大きな音が保育園に響く。

そんな事にはおかまい無しに、二人でつぎから次へと花壇を落とす。

音に気がついた保母さんたちがワラワラと出てくる。下から「やめなさい!」と叫んでいる。

それでも、ぼくらはやめない。

結局、全部の花壇を下に落とした。保母さんも。どうして良いかわからないみたいだ。

「さあ、滑ろうか」

と、テツは勇躍滑り台に乗り出した!

だが、花壇を止めてあった金具や器具がじゃまになってすぐに滑れない。

そうこうしているうちに、和田あき子にそっくりな保母さんが3階に駆けつけてきて、身体の小さなぼくはヒョイと持ち上げられて滑るどころではなかった。

勿論、親を呼び出されて散々怒られた。

そんなやりたい放題の保育園生活の中で、童謡を歌う時間があった。

ある日、習って歌ったのは「焚き火」だった。

さざんか さざんかさいた道 焚き火だ 焚き火だ 落ち葉焚き🎵

と、いう歌だった。テツのクラスも同じ歌を習ったらしく、帰り道、二人て焚き火の歌を歌いながら帰った。

ぼくは言った。

「落ち葉集めて焚き火したいな」

「ほんまや!やろやろ」

テツは即答した。

一旦、自宅に帰り、園児服を脱いでまた二人は集まった。

ぼくの家の西にある山はてっぺんに神社があって広場がある。そこで落ち葉を集めて焚き火をする事になった。

保育園児の二人だが、自宅に帰ると誰もいない事が多いので、ストーブの付け方、つまりマッチの使い方は教えてもらっていた。

テツが家から大きなマッチ箱をもってきた。

早速、二人は落ち葉をかき集めた。

「坊主、なんてことを!聞こえないのか、火をだされたらたまったもんじゃない。火が上がらんようにしてやる」

あたまの中で声がした。

その神社にはお爺さんの神様が祀られてるらしい。その神様の声?と思ったが好奇心に負けて、その神社の前でたくさんの落ち葉を集めていよいよ点火!

したのだが、濡れ落ち葉も混じっていたのか火がつかない。

神社の中でその一部始終を見ていた神様は、火がつきそうになると、次から次へと消して行ってたらしい。

結局、西の山では焚き火は出来なかった。

「東の山の公園に行ってみよう」

と、テツが言った。

公園には、落ち葉だけでなくススキが生えていた。

公園で焚き火を始めた。今度は少しだけ火が出た。その時、一陣の風が吹いた。

風は火をススキに移した。あっと言うまに二人は火に囲まれてしまった。

「わあ、どうしよう」

と、思ったら西の山から風が吹いてきて、ススキの火を消した。その隙をついてぼくたちは逃げだした。

「やばいで、火事や」とぼくは呆然としていた。

テツは西の方を指差した。

「おまえはあっちに逃げろ、おれはあっちに逃げる」と北を指差した。

慌ててパニックになったぼくはテツの言うがまま西に逃げた。

しばらくすると、大人が気付いたらしく消防車のけたたましいサイレンが村中に鳴り響いた。

ぼくは大変なことをしてしまった。と思いながら西へと逃げた。

かなり離れてから振り返ると公園のある東の山から火と煙がもうもうと、上がっている。

「逃げてもしょうがないな」

そう思った僕は現場へトボトボと戻った。すると、既にテツが大人に捕まっていた。

それを見てぼくも、テツのところに戻った。

集まった大人たちは消火活動していり人以外、ぼくらを、捕まえていた。

やがて、警察と消防士が、やってきた。

山火事は発見が早く、ススキを燃やしただけで済んだようだった。

「君たちが、やったの?」

警官が優しめの声で聞いてきた。ぼくらはもつ泣いていた。泣きながら焚き火の歌の落ち葉焚きがしたかった事をうったえた。

警官は困った顔をして消防士と目を合わせた。

「坊主、正直にいうのじゃぞ」

またあたまの中で声がした。今度はそれに従うことにした。

「あそこにだけ火をつけたの?」

「いや」

と、ぼくは答えた。

消防士はどこどこに火をつけたか教えてくれと、言った。

僕らは西の山の広場や公園の広場と火をつけた場所を案内した。

そこへ、ぼくらの両親が慌てて帰ってきた。

ぼくらは両親のところに走る。

テツは到着したとたん、おとんに殴られた。なんでこんな事するんや!とテツのおとんは叫んでいた。

ぼくの両親はぼくを、抱きしめてくれた。

「やけどはせんかったか?」

ぼくのおとんは、やさしく聞いてくれた。おかんは泣きながら抱きしめてくれた。



「こまったクソガキやの。あいつらは見張っとかなあかんな」

神様はつぶやいた。

西の山の神様はその様子を眺めていたらしい。ススキ以外に火が移らなかったのは神様のおかげかもしれない。

これは、ムラの大事件になった。この事が原因かどうかはわからないがおおよそ11年同じ保育園、幼稚園、小学校、中学校とテツと同じとこに通ったが、同じクラスになったことは一度もない。

だが、放課後はほぼ毎日遊んでいた。懲りない凸凹コンビだ。

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