生きる

桜小径

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他力本願

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男は悪い意味での他力本願なのである。自分からは何もアクションを起こさず、他者からの働きかけでやっと行動を起こせるのだ。それがないと何もしない怠け者だと、男は自分のことを思う。

子供の頃から誘うより誘われるのを待ち、誘われなくても孤高を気取り男は自分を守ってきた。幼少の近所の仲間との関係もそうだったし、小学校、中学、高校、大学と進み社会に出てからも同じである。次のステップに移る前に教師や上司から指示される最低限だけを行い、あとは全て受動を選択してきたのだ。男の決断はお膳立てされたものからという非常に無自覚で無責任な選択を続けてきた。

男の根幹には、自分に対する甘えしかないのである。それは、ここまでやればあとは周囲がなんとかするだろうという自分を囲む人々への甘えでもある。

若い頃の甘えは、年老いると無責任へと変貌する。甘えなら周囲もある程度受け入れの余地もあるだろうが、無責任は周囲に敵を作ることになる。そうして男は居場所を失うと男は自分に忠告する。自分は男に反論する。じゃあどうすればいいのだと。そうなのだ、それが男は自分でわからないのだ。いや分かろうとしないのだ。

男の古いアルバムの中に隠れた想い出がいっぱいだ。しかし想い出というのは脳内で美化されるものらしい。昔は昔で死んでしまいたいくらい恥ずかしい思いや、消えてしまいたいくらい厭な状態になったことも沢山あるはずだ。それを乗り越えるかやり過ごせたからとりあえず、今、生きてるのである。勿論、先送りにして解決したり終息してないことも、儘ある。しかしやり過ごす経験値は少しはついているはずだ。

リセットしたい気持ちになんて、何度なったかわからない。ドラえもんにでてきた頭の中は今のままで昔に戻る道具を使いたくてしようがない。今、流行りの言葉でいうとタイムリープとでもいうのだろうか。

男の呼吸は今日も浅く、動悸も激しい。大した事をしているわけでもないのに疲労感だけはある。身体が老いるに従って、血と肉と骨ではなく、油っこい粘土に改造された気分である。もしかして夜に寝ている間に、UFOに連れ去られ少しずつ改造されて、ドヨンとした何の解決能力もない改造人間に作り替えられてるような気がする。

しかし男はむしろ、ショッカーのような悪がやってきて一番に殺される事さえ願っている。大したこともやってない男が悪の軍団に一番に狙われる価値がないことを男は知っているのでそういう妄想を描くのだろう。

こんなとこにも受動的な考えしか浮かばないのだと、男は今日も自分を罵倒する。
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