大陰史記〜出雲国譲りの真相〜

桜小径

文字の大きさ
4 / 179
序章

ヤマタイ

しおりを挟む

筑紫島では、火(阿蘇火山)を祭る女王、火神子(卑弥呼)が死んで40年におよぶ混乱が続いていた。ヤマタイ国の女王の座は宗女のトヨタマヒメ(台与)がついではいたが、有名無実の存在であった。トヨタマヒメには先代の火神子ほどの呪力はなく、傘下の各国は独立が進み倭国大乱の時代へ後戻りしたかのような状態であった。

トヨタマヒメは、先代火神子の弟である伊都国王の尾羽張(イザナギ)の庇護をうけ、阿蘇の山を鎮め奉る秘術を行っていたが阿蘇の鳴動は収まらなかった。この自然現象が火神子の呪力低下を筑紫島全体に知らしめたのである。老若男女、すべての人々に恐れられていた火神子の権威は失墜していた。

かつて「火神子」は二人いた。北の阿蘇に奴国王、南の霧島に狗奴国王がそれぞれ君臨していたが、狗奴国では火(火山)を祭る儀式から太陽を祭る儀式へと変換していた。一方、北の奴国では太陽派と火(火山)派が分裂し、かつての大国の権威はすでになく、もともと属国であった伊都国に火山の祭祀を奪われていた。

先代の火神子は伊都国の出身である。伊都国は奴国の分裂による国力低下のすきに大陸との交易で得た莫大な富により、阿蘇つまり山都(やまと)を支配下におき、前伊都国王の娘であったイザナミを「火神子」の座につけ、ヤマタイ連合の影の支配者となったのである。今の伊都国の尾羽張(先代の火神子の弟イザナギ)は、ヤマタイ連合を魏と結びつける事により北九州全体を支配下に収めた。彼はその功績により魏との結びの神つまりタカミムスビノカミという称号をヤマタイの長老達から受けていた。(魏は高いという意味もある。筆者注)

しかし彼も老齢である。齢は100歳に届こうとしていた。安川のちかくの集落では、邪馬台国連合の代表者があつまり、遠くで火を吹き上げ る阿蘇の噴火音を聞きながら邪馬台国連合の今後について協議していた。火神子は祭祀上の王だが、実質の政治、軍事、外交などはこの協議で決定されていた。火神子は最終決定を阿蘇の火の神から託宣を受けるのが役目であり、決定しかねる大問題は、いつも火神子が受けた託宣によって可否を占っているのであった。

「もはや、トヨタマヒメの火の呪力で国をまとめるのは無理かもしれん。」

ヤマタイ連合の長老が集まった席でタカミムスビは力なくつぶやいた。

「では、どうするのがよいのだ」

と長老達は口々につぶやきあった。

「わしによい考えがある。」

とタカミムスビの子オモイカネが口を開いた。彼は魏への使節になった事があり、魏の文化にも造詣が深く、いわば知恵袋としてこの協議に参加していた。

「阿蘇のお山は、もう長いこと火をふきあげ火神子様も託宣を受けにくいようじゃ。阿蘇があのまま火を吹きつづけると、われらの糧もえられなくるのは当然の事。そこでじゃ、この際、阿蘇をすてようではないか?」

「どういう事だ?」

タカミムスビは慌てて叫んだ。他の長老たちもびっくりしたような顔でオモイカネの方を見つめた。


「大陸にはの、火の山はないのじゃ。それでもあの国はわれら火の神の守りを受ける民より好い生活をしておる。なぜかわかるか?」

と、オモイカネは一同の顔を見まわしながら問い掛けたが、答えを聞く前に話を続けた。

「それはの、お天道さまじゃ、日の動きを知りそこから万物の恵みを得る方法を知っておるからじゃ。出雲の国もそうじゃ。奴らもお天道さんの動きからいろんな事を知り、生活にいかしておる。そこでじゃ、わしらも火の神様に仕えるのを止めこれからは日の神に仕えるのじゃ。そうすれば火におびえる事もなしじゃ」

「それは、無理じゃ、わしらは火の神に従ってここまで生きてきた。それをいまさら・・・・・。」

「しかし火の神は、狗奴国との戦が再び始まってから火を吹きっぱなしじゃ。作物もとれん。」

邪馬台国はゆれにゆれていた。ライバル狗奴国は火から日に祭祀を移しまさに日のでの勢いである。今回の協議は、火神子に一任するという結論となり、火の神の託宣を待った。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...