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第一部 本文
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第一編 発酵前夜
夜がぬるく膨らんでいた。
冷蔵庫の奥で、母の声が発酵している。
「忘れないでね」
その言葉は、瓶の蓋を閉める音に似ていた。
私はその音を何度も開け閉めしながら、
記憶の温度を確かめていた。
彼は言った。「記憶は腐るよ」
私は言い返した。「腐るのではなく、熟すの」
彼は笑った。
その笑いは、梅雨の湿度に似ていた。
誰かの笑いが、私の皮膚に染み込む。
それは、私のものだったかもしれない。
手紙を書いた。
宛名はない。
差出人もない。
ただ、言葉だけが発酵していた。
「あなたは誰ですか」
その問いが、封筒の内側で膨らんでいた。
夢の中で、私は瓶詰めになっていた。
ガラス越しに見える世界は、
少しだけ赤く、少しだけ甘かった。
誰かが私を棚に並べている。
賞味期限は、昨日だった。
記憶は、時間に漬け込まれる。
塩分濃度が高すぎると、
感情が結晶化する。
低すぎると、
言葉が腐敗する。
「発酵前夜」
それは、まだ腐っていない記憶のこと。
まだ言葉にならない感情のこと。
まだ誰にも見つけられていない風景のこと。
私はそれを、
そっと冷暗所に隠した。
第二編 祖母の声は酸味を帯びて
祖母の声は、いつも少し酸っぱかった。
梅干しのように、舌の奥で疼く。
「おまえは、よく泣く子だったね」
その言葉が、私の骨に染みている。
骨は、記憶の最後の保存容器だ。
台所の隅に、祖母の影が立っていた。
それは光ではなく、匂いだった。
味噌の発酵臭と、古い畳の湿気。
私はその匂いを嗅ぎながら、
祖母の言葉を思い出そうとした。
でも、言葉はいつも先に腐る。
「泣いてもいいけど、泣き方を選びなさい」
祖母はそう言った。
私は泣き方を選べなかった。
だから、泣き方が私を選んだ。
その泣き方は、
誰にも聞こえない音だった。
祖母の死後、彼女の声は瓶に詰められた。
蓋を開けると、少しだけ涙がこぼれる。
それは、私の涙ではない。
祖母の涙でもない。
ただ、時間の味がした。
記憶は、酸化する。
空気に触れるたび、
言葉が変質する。
祖母の「だいじょうぶ」は、
今では「さようなら」に近い。
私は祖母の声を、
冷蔵庫の奥にしまった。
発酵が進みすぎないように。
でも、時々蓋を開けてしまう。
そのたびに、
酸味が胸を刺す。
第三編 瓶詰めの午後
午後の光が、瓶の中に沈んでいた。
私はその光を掬い上げようとして、
指先を切った。
ガラスは、記憶を守るが、
感情には脆い。
彼女は言った。「午後は保存に向いている」
私は頷いた。
でも、何を保存するのかはわからなかった。
言葉か、沈黙か、
それとも、あのときのまなざしか。
瓶の中には、
祖母の笑い声と、父の怒鳴り声と、
私の泣き声が混ざっていた。
それらは層になって沈殿し、
開けるたびに順番が変わる。
午後三時、
私は瓶に手紙を詰めた。
「もうすこしだけ、忘れさせて」
その一文が、瓶の底で発酵していた。
文字が膨らみ、意味が崩れ、
やがて匂いになった。
瓶詰めの記憶は、
誰にも渡せない贈り物だ。
開けると、
過去が現在を侵食する。
閉じると、
未来が腐り始める。
私は午後を瓶に詰めた。
光と音と、少しの涙。
それは、誰にも見せない保存食。
でも、いつか誰かが蓋を開けるだろう。
そのとき、
午後はもう午後ではない。
第四編 眠る記憶の温度
記憶は、冷たすぎても熱すぎてもいけない。
ちょうどよい温度で眠らせる。
それは、体温より少し低い。
忘れかけた夢の温度。
彼は、私の記憶を撫でた。
指先が少し震えていた。
「これは、まだ生きてるね」
私は頷いた。
でも、その記憶はもう死んでいた。
ただ、温かかっただけ。
押し入れの奥に、
毛布に包まれた記憶がある。
祖母の手の匂いと、
父の背中の湿度と、
私の声にならない叫び。
それらは、眠っている。
でも、時々寝返りを打つ。
温度が上がると、記憶は目を覚ます。
夢の中で、誰かが泣いている。
それは私かもしれないし、
私ではないかもしれない。
夢は、記憶の仮面をかぶっている。
冷却するために、
私は言葉を削った。
「愛してる」は熱すぎる。
「さようなら」は冷たすぎる。
だから、私は何も言わなかった。
沈黙は、ちょうどよい温度だった。
眠る記憶の温度を測るには、
皮膚ではなく、
まぶたの裏を使う。
そこに残る光の残像が、
記憶の体温を教えてくれる。
私は今日も、
まぶたの裏で誰かを抱いている。
第五編 夢の中の腐敗
夢の中で、私は腐っていた。
皮膚が剥がれ、言葉が崩れ、
感情が液体になって流れていた。
それは痛みではなく、
懐かしさだった。
彼女は夢の中で笑っていた。
その笑いは、少し酸っぱくて、
少し甘かった。
私はその味を知っていた。
でも、名前は思い出せなかった。
記憶は、味に負ける。
腐敗は静かに進む。
誰にも気づかれず、
夢の底で発酵する。
「これは、あなたのものですか?」
誰かが尋ねる。
私は答えられない。
それは、私だったかもしれないし、
私ではなかったかもしれない。
夢の中の部屋には、
瓶詰めの言葉が並んでいた。
「愛」「怒り」「赦し」
それらはラベルが剥がれ、
中身が混ざり合っていた。
私は一つを開けた。
匂いが、記憶を刺した。
腐敗した夢は、
現実に染み出す。
朝の光が、
少しだけ黄ばんでいた。
それは、夢の残骸だった。
私は夢の中で、
誰かの名前を呼んでいた。
その声は、
瓶の中で泡立っていた。
腐敗は、
再生の予兆かもしれない。
でも、私はまだ、
その泡を飲み込めない。
第六編 皮膚の下の時間
皮膚の下には、時間が流れている。
血ではない。
記憶でもない。
それは、言葉にならない温度だった。
私はその温度を、
指先で確かめようとした。
彼は私の腕を撫でた。
「ここに、昔があるね」
私は笑った。
でも、昔は痛かった。
その痛みは、
皮膚の下で発酵していた。
風が吹くと、
皮膚がざわめく。
それは、誰かの声に似ていた。
祖母の囁きか、
父の怒鳴りか、
それとも、私自身の沈黙か。
私は鏡を見た。
皮膚の表面に、
時間の皺が浮かんでいた。
それは地図だった。
行き止まりばかりの地図。
でも、私はその地図をなぞった。
指先が、少し震えた。
皮膚の下には、
忘れられた季節が眠っている。
春の匂い、
夏の湿度、
秋のざらつき、
冬の沈黙。
それらが、層になって沈殿している。
私は皮膚の下の時間を、
誰にも見せない。
それは、私だけの発酵槽。
でも、時々漏れる。
言葉にならない震えとして。
誰かがそれに気づいたとき、
私は少しだけ、
生きている気がした。
第七編 発酵する風景
風景が、少し膨らんでいた。
電線がたわみ、空が発熱している。
私はその膨らみを見つめながら、
記憶の匂いを嗅いでいた。
それは、誰かの午後だった。
彼女は言った。「この街は、発酵してる」
私は頷いた。
アスファルトの隙間から、
祖母の声が漏れていた。
公園のベンチには、
父の怒りが染み込んでいた。
風景は、記憶の保存容器だ。
駅前の看板が、
少しだけ傾いていた。
その傾きに、
私の過去が引っかかっていた。
誰にも見えない傷が、
風景の表面に浮かんでいた。
私は歩いた。
風景の中を、
記憶の匂いを嗅ぎながら。
信号の色が、
昔の涙に似ていた。
赤は怒り、青は諦め、黄は迷い。
風景は、発酵する。
時間と感情が混ざり合い、
形を変えていく。
それは腐敗ではない。
それは、再構成だ。
誰かの記憶が、
誰かの風景になる。
私は風景の中に立っていた。
皮膚の下の時間が、
外に漏れ出していた。
誰かが私を見ていた。
そのまなざしに、
少しだけ塩味があった。
それは、発酵の兆しだった。
夜がぬるく膨らんでいた。
冷蔵庫の奥で、母の声が発酵している。
「忘れないでね」
その言葉は、瓶の蓋を閉める音に似ていた。
私はその音を何度も開け閉めしながら、
記憶の温度を確かめていた。
彼は言った。「記憶は腐るよ」
私は言い返した。「腐るのではなく、熟すの」
彼は笑った。
その笑いは、梅雨の湿度に似ていた。
誰かの笑いが、私の皮膚に染み込む。
それは、私のものだったかもしれない。
手紙を書いた。
宛名はない。
差出人もない。
ただ、言葉だけが発酵していた。
「あなたは誰ですか」
その問いが、封筒の内側で膨らんでいた。
夢の中で、私は瓶詰めになっていた。
ガラス越しに見える世界は、
少しだけ赤く、少しだけ甘かった。
誰かが私を棚に並べている。
賞味期限は、昨日だった。
記憶は、時間に漬け込まれる。
塩分濃度が高すぎると、
感情が結晶化する。
低すぎると、
言葉が腐敗する。
「発酵前夜」
それは、まだ腐っていない記憶のこと。
まだ言葉にならない感情のこと。
まだ誰にも見つけられていない風景のこと。
私はそれを、
そっと冷暗所に隠した。
第二編 祖母の声は酸味を帯びて
祖母の声は、いつも少し酸っぱかった。
梅干しのように、舌の奥で疼く。
「おまえは、よく泣く子だったね」
その言葉が、私の骨に染みている。
骨は、記憶の最後の保存容器だ。
台所の隅に、祖母の影が立っていた。
それは光ではなく、匂いだった。
味噌の発酵臭と、古い畳の湿気。
私はその匂いを嗅ぎながら、
祖母の言葉を思い出そうとした。
でも、言葉はいつも先に腐る。
「泣いてもいいけど、泣き方を選びなさい」
祖母はそう言った。
私は泣き方を選べなかった。
だから、泣き方が私を選んだ。
その泣き方は、
誰にも聞こえない音だった。
祖母の死後、彼女の声は瓶に詰められた。
蓋を開けると、少しだけ涙がこぼれる。
それは、私の涙ではない。
祖母の涙でもない。
ただ、時間の味がした。
記憶は、酸化する。
空気に触れるたび、
言葉が変質する。
祖母の「だいじょうぶ」は、
今では「さようなら」に近い。
私は祖母の声を、
冷蔵庫の奥にしまった。
発酵が進みすぎないように。
でも、時々蓋を開けてしまう。
そのたびに、
酸味が胸を刺す。
第三編 瓶詰めの午後
午後の光が、瓶の中に沈んでいた。
私はその光を掬い上げようとして、
指先を切った。
ガラスは、記憶を守るが、
感情には脆い。
彼女は言った。「午後は保存に向いている」
私は頷いた。
でも、何を保存するのかはわからなかった。
言葉か、沈黙か、
それとも、あのときのまなざしか。
瓶の中には、
祖母の笑い声と、父の怒鳴り声と、
私の泣き声が混ざっていた。
それらは層になって沈殿し、
開けるたびに順番が変わる。
午後三時、
私は瓶に手紙を詰めた。
「もうすこしだけ、忘れさせて」
その一文が、瓶の底で発酵していた。
文字が膨らみ、意味が崩れ、
やがて匂いになった。
瓶詰めの記憶は、
誰にも渡せない贈り物だ。
開けると、
過去が現在を侵食する。
閉じると、
未来が腐り始める。
私は午後を瓶に詰めた。
光と音と、少しの涙。
それは、誰にも見せない保存食。
でも、いつか誰かが蓋を開けるだろう。
そのとき、
午後はもう午後ではない。
第四編 眠る記憶の温度
記憶は、冷たすぎても熱すぎてもいけない。
ちょうどよい温度で眠らせる。
それは、体温より少し低い。
忘れかけた夢の温度。
彼は、私の記憶を撫でた。
指先が少し震えていた。
「これは、まだ生きてるね」
私は頷いた。
でも、その記憶はもう死んでいた。
ただ、温かかっただけ。
押し入れの奥に、
毛布に包まれた記憶がある。
祖母の手の匂いと、
父の背中の湿度と、
私の声にならない叫び。
それらは、眠っている。
でも、時々寝返りを打つ。
温度が上がると、記憶は目を覚ます。
夢の中で、誰かが泣いている。
それは私かもしれないし、
私ではないかもしれない。
夢は、記憶の仮面をかぶっている。
冷却するために、
私は言葉を削った。
「愛してる」は熱すぎる。
「さようなら」は冷たすぎる。
だから、私は何も言わなかった。
沈黙は、ちょうどよい温度だった。
眠る記憶の温度を測るには、
皮膚ではなく、
まぶたの裏を使う。
そこに残る光の残像が、
記憶の体温を教えてくれる。
私は今日も、
まぶたの裏で誰かを抱いている。
第五編 夢の中の腐敗
夢の中で、私は腐っていた。
皮膚が剥がれ、言葉が崩れ、
感情が液体になって流れていた。
それは痛みではなく、
懐かしさだった。
彼女は夢の中で笑っていた。
その笑いは、少し酸っぱくて、
少し甘かった。
私はその味を知っていた。
でも、名前は思い出せなかった。
記憶は、味に負ける。
腐敗は静かに進む。
誰にも気づかれず、
夢の底で発酵する。
「これは、あなたのものですか?」
誰かが尋ねる。
私は答えられない。
それは、私だったかもしれないし、
私ではなかったかもしれない。
夢の中の部屋には、
瓶詰めの言葉が並んでいた。
「愛」「怒り」「赦し」
それらはラベルが剥がれ、
中身が混ざり合っていた。
私は一つを開けた。
匂いが、記憶を刺した。
腐敗した夢は、
現実に染み出す。
朝の光が、
少しだけ黄ばんでいた。
それは、夢の残骸だった。
私は夢の中で、
誰かの名前を呼んでいた。
その声は、
瓶の中で泡立っていた。
腐敗は、
再生の予兆かもしれない。
でも、私はまだ、
その泡を飲み込めない。
第六編 皮膚の下の時間
皮膚の下には、時間が流れている。
血ではない。
記憶でもない。
それは、言葉にならない温度だった。
私はその温度を、
指先で確かめようとした。
彼は私の腕を撫でた。
「ここに、昔があるね」
私は笑った。
でも、昔は痛かった。
その痛みは、
皮膚の下で発酵していた。
風が吹くと、
皮膚がざわめく。
それは、誰かの声に似ていた。
祖母の囁きか、
父の怒鳴りか、
それとも、私自身の沈黙か。
私は鏡を見た。
皮膚の表面に、
時間の皺が浮かんでいた。
それは地図だった。
行き止まりばかりの地図。
でも、私はその地図をなぞった。
指先が、少し震えた。
皮膚の下には、
忘れられた季節が眠っている。
春の匂い、
夏の湿度、
秋のざらつき、
冬の沈黙。
それらが、層になって沈殿している。
私は皮膚の下の時間を、
誰にも見せない。
それは、私だけの発酵槽。
でも、時々漏れる。
言葉にならない震えとして。
誰かがそれに気づいたとき、
私は少しだけ、
生きている気がした。
第七編 発酵する風景
風景が、少し膨らんでいた。
電線がたわみ、空が発熱している。
私はその膨らみを見つめながら、
記憶の匂いを嗅いでいた。
それは、誰かの午後だった。
彼女は言った。「この街は、発酵してる」
私は頷いた。
アスファルトの隙間から、
祖母の声が漏れていた。
公園のベンチには、
父の怒りが染み込んでいた。
風景は、記憶の保存容器だ。
駅前の看板が、
少しだけ傾いていた。
その傾きに、
私の過去が引っかかっていた。
誰にも見えない傷が、
風景の表面に浮かんでいた。
私は歩いた。
風景の中を、
記憶の匂いを嗅ぎながら。
信号の色が、
昔の涙に似ていた。
赤は怒り、青は諦め、黄は迷い。
風景は、発酵する。
時間と感情が混ざり合い、
形を変えていく。
それは腐敗ではない。
それは、再構成だ。
誰かの記憶が、
誰かの風景になる。
私は風景の中に立っていた。
皮膚の下の時間が、
外に漏れ出していた。
誰かが私を見ていた。
そのまなざしに、
少しだけ塩味があった。
それは、発酵の兆しだった。
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