三度目の衝撃 ―元社畜が破天荒ギルドに転生した理由―

詩方夢那

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第三章 異世界だけど、現実的です

61.中州の野伏:新手

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 ミハミズモスでそれとなくオークと憲兵の動きを探っていたその男は、白い魔狼に跨り海岸へと南下した。
 憲兵の一行が帝都へと続く馬車道を進むのに対し、端から原野を最短距離で移動出来る男は、大陸中央の南を拠点とする野伏がオークの集団と交戦を始めた時点からその様子を窺っていた。
 そのオークの集団は一昨日から昨夜に掛け、帝都東側の小都市を襲撃した一団とみるのが自然であったが、そうであるならその集団はカヴァロで男を含む北方面の野伏と交戦しており、勢力は僅かでも殺がれているはずだった。
(多すぎる。しかも陽が高い時刻に海岸線を発端としている……別集団か)
 南方面の野伏だけでそのオーク集団は順調に倒され、男はその様子をただ窺うだけだった。だが、海岸線で憲兵に危害を加えた集団が殲滅された頃、男の背後から不穏な気配が地面を鳴らして近付いてきた。
(今度こそ、残党か)
 日没を迎え、並みのオークが活動を活発化させる時間帯となり、カヴァロを襲撃した残党が活発に動き始めるとしても不思議ではない。
(仕方ない。突っ込むか)
 男はオークの死体が積み上げられる方へと狼を走らせる。
「新手か?」
 死体の始末に当たっていた南方の野伏は身を固くするが、すぐにその気配は開けた場所に姿を現した。
「誰だ!」
「北方集団の偵察だ。カヴァロとミハミズモスを襲撃したオークを探して此処に来た。おそらくその集団は、俺の背後を追いかける格好でこちらに向かっている」
 野伏達は一様に表情を険しくする。一方、蚊帳の外に置かれたままの憲兵は浮浪者の言葉として男の言葉を聞き流す。
「多少戦力は殺がれているが、暴虐の限りを尽くした集団だ」
 南方の野伏は険しい表情を一層渋くさせた。四半時を超える戦闘で犠牲こそ出ていないが皆疲弊し、魔法の巻き添えで多少の怪我を負った者も居る。
「しかし……」
「来るぞ」
 これ以上の戦闘は困難だと返す前に、男は襲撃の到来を予告する
「駆逐は無理だ……お前達、死ぬんじゃねぇぞ!」
 南方の野伏の叫び声が、開戦の合図となった。先陣を切って飛び込んできたのはオークが使役する魔狼だった。
 オークの血に染まった原野はその一頭の魔狼によって再び混乱した戦場と化す。その騒乱の最中、正規経路を辿った憲兵隊がようやく到着した。
「手出ししない方が得策です」
 馬上の憲兵が見つめる先で繰り広げられているのは、どちらがオークか分からなくなるような凶暴な争い。その光景の中には飛び掛かる狼をそのまま槍に突き刺して叩き付けるメテオーロの姿もあった。
「確かに……」
 一団を率いる憲兵は狼を振り回す大男を目撃し、背筋が寒くなるのを感じた。更にこの憲兵は白い魔狼を連れた人物が、左手の一撃だけでオークを地面に倒してしまう光景をも目の当たりにする。
「……オークが片付いたら、あいつらを片付けた方がよさそうだな。あれは忌むべき人外だ」
「ですが……」
「脅威はすぐに殺ぐ、それに尽きる」
 一団を率いる憲兵に付き従う部下は眉を顰めた。この男とて憲兵であり、人間以外の種族に慈悲を掛ける性分では無いが、使える物は使い倒すべきだと考えている。オークを殴り倒したその人外は、使役すれば便利な道具であり、殺すにはまだ早いと反論したかった。だが、上司の命令は絶対である。
 白い魔狼の東保江が何らかの効果をもたらしたのか、狼達が静まり、中にはオークに食らいつく個体も出るなどした結果、疲弊していた野伏の一行は南下してきた残党の大部分を討ち取るに至った。だが、憲兵から離れる必要性もあり、殲滅に至らないまま野伏達は方々へ身を潜め去ってゆく。
 結局、残ったオークの始末に憲兵は動かざるを得なくなり、野伏を捕らえる事は叶わなかった。
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