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第一章 The war ain't over!
4-3 トラウマ掘削機(2022年春先)
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レインが解説する間に曲は別の物へと変わり、はっきりとした音が凄まじい手数を垂れ流している。
「これは最近の曲で、ドラムは劇的なブラストビートを織り交ぜつつ、ギターは憂鬱なメロディに終始して、基本はシューゲイザー的に輪郭はぼんやりと、ただし、アトモスフィックにはならないようにベースはしっかりと作って引き締めて、全体的に浮遊感は有るけれども切れ味を残した、ドゥーム感の出ない仕上りにしています」
「……ねえ、レイン、バンドを辞めてから、どうしてたのか、教えてくれないかな」
音楽の理解を放棄し、ケリーは話を振る。
「特別な事なんて、何も無いですよ。親に言われて戻った学校を担当教員と揉めて辞めて、通信制の大学を出て、後はずっと無責任に生きてきました」
「そっか、大学、出たんだ……でさ、仕事はどうしてた? 働きながら音楽作るとかとか、大変だったんじゃない?」
「御心配には及びません。まともに就職した覚えはないんで」
「え…‥えっと、親御さんは心配したんじゃないのかな」
「幸か不幸か、バンドに入った事で何人か知り合いが出来まして、その伝でアパレルのバイトをしたり、アクセサリー作家の真似事をしたり、無責任なりに仕事はしていたので……むしろバンドに加入した事をとんでもなく責め立てられましたから、それ以上の事は何も無かったですよ。とはいえ、今のバンドの事は伏せていますが。海外渡航も、音楽の事は伏せてアートイベントに参加すると言って誤魔化しましたし」
「そ、そっか……じゃあ、今もアパレルの仕事を詩ながら音楽を?」
「いえ、今はバーチャル配信者の運営の手伝いをさせられたり、この上でアクセサリーパーツや金属部品の小売りの手伝いというか、パッキングや在庫管理の手伝いをしたり、接客業は辞めました」
「そう、なんだ……って、この、上?」
「マスターと幼馴染で、ふらふらしてるんなら副業手伝わないかと誘われて」
「あぁ、そういう事……」
ケリーは冷めたコーヒーを流し込む。
「……レイン、今の君が何をしているのかは、なんとなく分った。君が変わってしまった事も、分かる。でも……戻って来てくれないか」
ケリーはレインを正面から見つめるが、レインの眸からは光が消えていく。
「確かに、あの頃は大変な思いをさせてしまった。まだ社会人になっていなかった君を無理矢理大人の世界に引き摺り込んで、無理を強いたと思ってる。でも、一緒にスタジオに入って、ステージに立った、あの短い時間だけでも、君と一緒に居られたのは幸せで……お願いだ、戻ってきて欲しい。また、一緒にやりたいんだ。今度こそ、君のギターを聞かせて欲しいんだ!」
「嫌です」
ケリーが頭を下げようとするなり、レインは吐き捨てた。
「え……」
下げかけた頭を上げ、ケリーは目を見開きレインを凝視する。
「というか、無理です。今の俺には、ナショナルチャート上位を目指すバンドの音楽なんて作れませんし、今でさえ、ツアーに回れるほどの体力はありません。確かに何度か北欧まで行きましたけど、あれだって相当に大変でした。入国審査で引っかかって、レーベルの社長に助けてもらうくらいには。それに、今はロシア上空が飛行できませんから、北欧へ渡航するのはもっと大変でしょう。長距離移動は嫌いです」
「レイン……」
「それに、此処まで来た以上、親より先に死にたくありません。今は連れ合いも居て、もし、人生に責任を持つ必要があるというなら、真面目にバーチャル配信者の裏方や小売りの仕事をします。だから、俺の事は諦めて下さい……タクシー、呼びましょう」
レインは立ち上がり、カウンター越しに白北へタクシーの手配を依頼する。
残されたケリーは冷めたコーヒーを流し込み、項垂れた。
「これは最近の曲で、ドラムは劇的なブラストビートを織り交ぜつつ、ギターは憂鬱なメロディに終始して、基本はシューゲイザー的に輪郭はぼんやりと、ただし、アトモスフィックにはならないようにベースはしっかりと作って引き締めて、全体的に浮遊感は有るけれども切れ味を残した、ドゥーム感の出ない仕上りにしています」
「……ねえ、レイン、バンドを辞めてから、どうしてたのか、教えてくれないかな」
音楽の理解を放棄し、ケリーは話を振る。
「特別な事なんて、何も無いですよ。親に言われて戻った学校を担当教員と揉めて辞めて、通信制の大学を出て、後はずっと無責任に生きてきました」
「そっか、大学、出たんだ……でさ、仕事はどうしてた? 働きながら音楽作るとかとか、大変だったんじゃない?」
「御心配には及びません。まともに就職した覚えはないんで」
「え…‥えっと、親御さんは心配したんじゃないのかな」
「幸か不幸か、バンドに入った事で何人か知り合いが出来まして、その伝でアパレルのバイトをしたり、アクセサリー作家の真似事をしたり、無責任なりに仕事はしていたので……むしろバンドに加入した事をとんでもなく責め立てられましたから、それ以上の事は何も無かったですよ。とはいえ、今のバンドの事は伏せていますが。海外渡航も、音楽の事は伏せてアートイベントに参加すると言って誤魔化しましたし」
「そ、そっか……じゃあ、今もアパレルの仕事を詩ながら音楽を?」
「いえ、今はバーチャル配信者の運営の手伝いをさせられたり、この上でアクセサリーパーツや金属部品の小売りの手伝いというか、パッキングや在庫管理の手伝いをしたり、接客業は辞めました」
「そう、なんだ……って、この、上?」
「マスターと幼馴染で、ふらふらしてるんなら副業手伝わないかと誘われて」
「あぁ、そういう事……」
ケリーは冷めたコーヒーを流し込む。
「……レイン、今の君が何をしているのかは、なんとなく分った。君が変わってしまった事も、分かる。でも……戻って来てくれないか」
ケリーはレインを正面から見つめるが、レインの眸からは光が消えていく。
「確かに、あの頃は大変な思いをさせてしまった。まだ社会人になっていなかった君を無理矢理大人の世界に引き摺り込んで、無理を強いたと思ってる。でも、一緒にスタジオに入って、ステージに立った、あの短い時間だけでも、君と一緒に居られたのは幸せで……お願いだ、戻ってきて欲しい。また、一緒にやりたいんだ。今度こそ、君のギターを聞かせて欲しいんだ!」
「嫌です」
ケリーが頭を下げようとするなり、レインは吐き捨てた。
「え……」
下げかけた頭を上げ、ケリーは目を見開きレインを凝視する。
「というか、無理です。今の俺には、ナショナルチャート上位を目指すバンドの音楽なんて作れませんし、今でさえ、ツアーに回れるほどの体力はありません。確かに何度か北欧まで行きましたけど、あれだって相当に大変でした。入国審査で引っかかって、レーベルの社長に助けてもらうくらいには。それに、今はロシア上空が飛行できませんから、北欧へ渡航するのはもっと大変でしょう。長距離移動は嫌いです」
「レイン……」
「それに、此処まで来た以上、親より先に死にたくありません。今は連れ合いも居て、もし、人生に責任を持つ必要があるというなら、真面目にバーチャル配信者の裏方や小売りの仕事をします。だから、俺の事は諦めて下さい……タクシー、呼びましょう」
レインは立ち上がり、カウンター越しに白北へタクシーの手配を依頼する。
残されたケリーは冷めたコーヒーを流し込み、項垂れた。
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