夜想曲は奈落の底で

詩方夢那

文字の大きさ
17 / 91
第一章 The war ain't over!

7-1  グラインド・ゴシップⅡ

しおりを挟む
 ライブバーでの収録翌日、オンラインメディアには予告の通り下数の記事の続編が公開されていた。その内容は、レインがかつて勤めていると噂されていたアパレルショップを取材した内容で、テナント移転後のショップで当時を知る現在のマネージャーと接触し、レインが働いていた事やその勤務態度について話を聞いた内容から始まっていた。
 続けて彼が数年前に働いたアクセサリーショップへの取材内容がまとめられており、入念に取材された様子から、下数は自分に接触する以前より芸能界から姿を消した有名人を取材する企画の一環としてこの取材をしていたのだろうと推測した。

「多分、前にバイトしてた店に取材をして、あの人は今何をみたいな懐古記事を書くつもりだったんだろう。数日でマネージャーや店長捕まえて話を聞くのは少し無理な気がする。ただ、あのライブハウスに俺が居た事を掴んだのは何でか……あの辺で活動してる別の人間を探している内に偶然知っただけならいいんだけど」
 下数は一度でもメジャーデビューを果たしたロックバンドの元メンバーを中心に記事を書いており、ライブハウスなど演奏できる場所が集中する地域を拠点に活動している事が窺える。
 魚拓を取っている佐伯に通話をつないだまま、レインはその記事を読み進めた。
「結局のところ、俺と接触したはいいけど、アパレルの仕事を辞めてからはこっちに引き込んでて、取材じゃ動向が掴めないから、仕方なく黒歴史掘り返してジャンキー疑惑でっち上げて閲覧稼ぎといったところか……弁護士は紹介してもらったけど、レインは死んでるし、先手は打てないや」
「あー、なんか歯痒いなー……まあ、記事の配信はほぼ定刻だし、魚拓はすぐに取っておくよ。あと、コメントも出来るだけ残せるようにしておくから、何かマズいい内容が有れば、弁護士の先生にすぐ連絡が取れるようにしておいた方がいい」
「分かった、そうするよ」
 オンラインに出される記事の保管は在宅で自由業の佐伯に任せ、レインは予定通り商品の仕分け作業に向かう。

 喫茶店の二階にある商品保管場所には、問屋から届けられたイヤリングの土台がそのまま積まれていた。小分け用の袋には既にラベルが貼り付けられており、既定の数量をそのまま詰めるだけになっている。
 白北が副業で始めたアクセサリーパーツの小売は規模こそ小さいが、在庫切れの少なさが評判になっている。だが、その分商品補充が慌ただしい。
 レインは在庫の残量の少なくなった入り数を集中的に袋詰めし、在庫を補充する。
「ゴールド4個パックと……後はTピン補充してー……」
 レインが次の仕事にとりかかろうとしたところ、慌ただしい足音が勢いよく作業部屋の扉を開いた。
「レイさん、メーデーメーデー、ブラストバスターの社長さん、うちに来た」
「……はぁ?」
 息を弾ませるミカの言葉に、レインは思わず声を上げた。
「ひとまず、こっちに連れてきて、今はマスターに任せてる」
「あぁ、分った。って、他のお客は?」
「今はいない」
「じゃあ貸し切ってくれとマスターに言ってくれ」
「分った」
 慌ただしい足音を立てながら、ミカは階段を下りてゆく。
「あぁ、もう、なんてこった」
 レインは作業用の手袋を放り投げ、階下へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日7時•19時に更新予定です。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お嬢様の“専属”

ユウキ
恋愛
雪が静かに降りしきる寒空の中、私は天涯孤独の身となった。行く当てもなく、1人彷徨う内に何もなくなってしまった。遂に体力も尽きたときに、偶然通りかかった侯爵家のお嬢様に拾われた。 お嬢様の気まぐれから、お嬢様の“専属”となった主人公のお話。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...