夜想曲は奈落の底で

詩方夢那

文字の大きさ
57 / 91
第二章 Gambling with the Devil

2-6-3  西の外れの幽霊屋敷

しおりを挟む
 散らかった納屋の中、首吊りロープの前に佇む男の姿。
 モノクロに加工された写真で見ると、レインの白い肌と黒い髪の対比が際立っていた。
 レインとランが古民家を訪れた翌日、二人は古民家に一泊し、レインが思い描く構図の写真撮影に臨んだ。
 家主のリンは朝から漬物樽とブルーシートを納屋の外に出し、コンクリートのブロックや漬物石を適当に転がして、小道具の下駄や手桶を納屋に散らかし、廃墟の様な雰囲気を作り出した。
「んー、なんも付けてない方が、何や時代も分らん感じでええんとちゃう?」
 レインを移したカットには、白いシャツのボタンを少し開けた胸元にトンボ玉のチョーカーが見えるカットもあったが、リンは何も付けていないつけていない方のカットを画面に示す。
「あー、確かに、この納屋の古さと合ってる感じ」
 洗いざらしたベージュのチノパンと先日買ったばかりの黒い革靴を履き、シャツの裾を出していない様子は一見すると無粋な装いであるが、モノクロにすると古めかしい浪漫の有る雰囲気だった。
「それじゃあ、集合写真はこれやな」
 ランとリンは客間の扇風機に当たりながら肩を寄せ合ってノートパソコンの画面を覗き込み、適当なカットを選んでゆく。

「ほな、これで」
 リンはパソコンを反対に向け、選んだ写真をレインに見せる。
「雰囲気はなんとなく昭和の初め、まあ、あの座敷牢が現役やった頃の雰囲気に見えん事も無いな」
「そうだね」
 レインはリンの撮影に納得した様子だった。
「白と黒の対比もきれいに見えるし、いい感じだよね」
 レインの両脇に映るランとリンは共に黒っぽい服装で、ランは黒いTシャツにグレーのチノパンを選び、白いレース編みのジレを羽織っている。対してリンは白いタンクトップに黒いシャツを羽織り、武骨なカーキ色のカーゴパンツを履いていた。モノトーンにすると、それぞれ銀幕の女優と労働者といった雰囲気だが、それはそれで凡庸な印象のレインとバランスが取れている。
「じゃあ、これで決まり」
 レインはランに同意し、リンを見た。
「しかし、まだ契約も何もしとらんのに、ええんか?」
 パソコンを元に戻しながら、リンはランとレインを見遣る。
「俺達としちゃ入ってもらうのは決まりだし、レーベルの方も異論はないと思うよ。それに、アルバム制作もまだ始まって無いし。ただ、リアルツーディーと契約するかどうかは任せるよ。とはいえ、相手は海外だし、手数料払っても代理人立てる方が手っ取り早いとは思う」
「せやなー……まあ、社長さんと会うてから決めるわ」
「それがいいよ。しゃちょー、楽しい人だし」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日7時•19時に更新予定です。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お嬢様の“専属”

ユウキ
恋愛
雪が静かに降りしきる寒空の中、私は天涯孤独の身となった。行く当てもなく、1人彷徨う内に何もなくなってしまった。遂に体力も尽きたときに、偶然通りかかった侯爵家のお嬢様に拾われた。 お嬢様の気まぐれから、お嬢様の“専属”となった主人公のお話。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...