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第二章 Gambling with the Devil
2-13-3 Countdown to Extinction
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不審な物音がしないか見張るべく小鳥遊とルーシーが廊下に座り込んでいると、ルーシーのスマートフォンが着信を知らせる。
「仕事の連絡みたいです。二階、借りますね」
「どうぞ」
ルーシーは二階へと向かい、電話を折り返す。
――あぁ、ルーシー? よかった。ちとまずい事になってな。
電話口の向こうに居るハリーは慌てた様子で話を続けた。
――滝上君の件なんだけど、来月の頭には契約って流れになっててさ、年明けからはスタジオも抑えてるみたいで、早く決着付けなきゃならんらしい。なあ、レインには連絡付いたか?
ルーシーは事の仔細を伝えはしなかったが、本人が承諾すれば明日にでもとだけ返し、居間へと向かう。
「ユウキ君、ちょっといいか」
ルーシーはレインと共に仕事道具の無くなった仕事部屋に入る。
「また、面倒事?」
俯きがちに尋ねるレインの表情は明らかに曇っていた。
「まあ、そうだな」
「今度は、かーさん?」
「いや……単刀直入に言って、ケリーが君を呼び戻したがっているんだ」
ケリーの名を聞き、レインは眉を顰める。
「実は今、イエロー・リリー・ブーケは新しいギタリストを入れようとしているんだが……それが上手く行っていないんだ」
「それが、どうして俺に?」
「僕の所為なんだ」
レインは怪訝な表情を浮かべ、ルーシーを直視する。
「彼を入れるなら、僕は辞める、ケリーにそう迫る事になってしまったんだ」
「どうして……」
「彼は社長が連れてきた二十六歳の若者で、邦楽のロックやレゲエ、ヒップホップがルーツになっているミュージシャンなんだが、母親がカラオケスナックを開いているそうで、歌謡曲も好きだと言っていた」
「スナック……ケリーのお母さんも、そうだったっけ」
「あぁ。その点では、ケリーに通じるものは有る。だが、知っての通りイエロー・リリー・ブーケはブリティッシュ・ロックに感化されたグラムロックバンドで、歌謡曲的なセンスは有れど、それが全てではないし、レゲエやヒップホップの様な比較的新しいブラック・ミュージックとの相性は良くない」
「だったら、何でそんな人が?」
「他に人材が居なかったんだ。これだけ売り出されたメジャーレーベルのバンドとしてはチャート順位が芳しくなく、その割に活動年数だけは長いし、外見で選り好みもされる……手は尽くしたが、自分達の人脈で後任を見つけるのは無理だった、その結果だよ」
「それは、なんというか、ご愁傷様……でも、俺には自分のバンドが有るし、戻れないよ」
「それは分っている。分かっている……でも、それでも考えて欲しいんだ、僕達にも、これ以外に選択肢が無いんだ」
ルーシーは声を震わせ、首を振った。
「それはまた、どうして……」
「さっきも言った様に、僕はケリーに、僕がバンドを辞める事と、ギタリストを諦める事の二択を迫っている……だが、ケリーは僕がバンドを辞める事を望んでいない。だが、ギタリストが居なければ活動が出来ないし、レーベルからは、来年にはアルバムを出すように迫られていて、この状況を打開する策が、もうないんだ」
レインは少しばかり思案し、問いかける。
「でも、次のギタリストの候補が、音楽的にかみ合わないっていうのは分るけど、どうして、隆君が辞める事になるわけ?」
ルーシーは少し俯き、口を開いた。
「キミは身内だから好きに言わせてもらうが……あんな人間と、一緒に活動出来るわけがない」
憤りを帯びた低い声に、レインはただならぬ感情を理解する。
「仕事の連絡みたいです。二階、借りますね」
「どうぞ」
ルーシーは二階へと向かい、電話を折り返す。
――あぁ、ルーシー? よかった。ちとまずい事になってな。
電話口の向こうに居るハリーは慌てた様子で話を続けた。
――滝上君の件なんだけど、来月の頭には契約って流れになっててさ、年明けからはスタジオも抑えてるみたいで、早く決着付けなきゃならんらしい。なあ、レインには連絡付いたか?
ルーシーは事の仔細を伝えはしなかったが、本人が承諾すれば明日にでもとだけ返し、居間へと向かう。
「ユウキ君、ちょっといいか」
ルーシーはレインと共に仕事道具の無くなった仕事部屋に入る。
「また、面倒事?」
俯きがちに尋ねるレインの表情は明らかに曇っていた。
「まあ、そうだな」
「今度は、かーさん?」
「いや……単刀直入に言って、ケリーが君を呼び戻したがっているんだ」
ケリーの名を聞き、レインは眉を顰める。
「実は今、イエロー・リリー・ブーケは新しいギタリストを入れようとしているんだが……それが上手く行っていないんだ」
「それが、どうして俺に?」
「僕の所為なんだ」
レインは怪訝な表情を浮かべ、ルーシーを直視する。
「彼を入れるなら、僕は辞める、ケリーにそう迫る事になってしまったんだ」
「どうして……」
「彼は社長が連れてきた二十六歳の若者で、邦楽のロックやレゲエ、ヒップホップがルーツになっているミュージシャンなんだが、母親がカラオケスナックを開いているそうで、歌謡曲も好きだと言っていた」
「スナック……ケリーのお母さんも、そうだったっけ」
「あぁ。その点では、ケリーに通じるものは有る。だが、知っての通りイエロー・リリー・ブーケはブリティッシュ・ロックに感化されたグラムロックバンドで、歌謡曲的なセンスは有れど、それが全てではないし、レゲエやヒップホップの様な比較的新しいブラック・ミュージックとの相性は良くない」
「だったら、何でそんな人が?」
「他に人材が居なかったんだ。これだけ売り出されたメジャーレーベルのバンドとしてはチャート順位が芳しくなく、その割に活動年数だけは長いし、外見で選り好みもされる……手は尽くしたが、自分達の人脈で後任を見つけるのは無理だった、その結果だよ」
「それは、なんというか、ご愁傷様……でも、俺には自分のバンドが有るし、戻れないよ」
「それは分っている。分かっている……でも、それでも考えて欲しいんだ、僕達にも、これ以外に選択肢が無いんだ」
ルーシーは声を震わせ、首を振った。
「それはまた、どうして……」
「さっきも言った様に、僕はケリーに、僕がバンドを辞める事と、ギタリストを諦める事の二択を迫っている……だが、ケリーは僕がバンドを辞める事を望んでいない。だが、ギタリストが居なければ活動が出来ないし、レーベルからは、来年にはアルバムを出すように迫られていて、この状況を打開する策が、もうないんだ」
レインは少しばかり思案し、問いかける。
「でも、次のギタリストの候補が、音楽的にかみ合わないっていうのは分るけど、どうして、隆君が辞める事になるわけ?」
ルーシーは少し俯き、口を開いた。
「キミは身内だから好きに言わせてもらうが……あんな人間と、一緒に活動出来るわけがない」
憤りを帯びた低い声に、レインはただならぬ感情を理解する。
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