幸せな人生を目指して

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番外編

モテキ到来?(女子の場合)…レヴィside

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ある日の教室――。


「なあなあ。エルシアって可愛いよな」

「だよな。あっ…、でも彼女侯爵家だったよな。……あんまり関わるとまずいんじゃないか?」

「何言ってるんだよ。彼女はそんなの気にしてないよ。それどころか誰にでも優しいしさ。良いよな~本当」

とまあ男どもの楽し気な会話がそこらから聞こえてくる。それもエルの話題だけではなく……。

「ユキさんも良いよな。一見冷たそうに見えるけど彼女程の美人、そうはいないよ」

「あー冷たいのもそれはそれで良いみたいな?」

「いや、でも俺はアリンちゃんが良いかな。無口だけど可愛いし」

「あはは。本当このクラスでラッキーだったよな」

彼女達がこの場にいない状況を良い事に好き放題言い合う男子生徒達。

しかもよりによって話に出てきた三人が偶々俺と少なからず関わりのある女子達だ。だから変な意味ではなく、友人として気になると言うか……つい話に耳を傾けてしまう。

なんで俺が…。そう思って思い切り溜息を吐いた。

「なんだよレヴィ。溜息なんか吐いちゃってさ」

「別に。何でもない」

「へえ~。でもとか言って、本当は話題にされていた姫達の事が気になってしょうがないんだよな?」

この無駄に絡んできては俺をイライラさせる奴は、一応クラスメイトであるルイスと言う男だ。
最近やたらと話しかけて来て正直鬱陶しいが、そう言った所で性格からしてこの男が素直に引き下がってくれるとは思えない。……はあ、今一番の悩み、かもしれない。

そんな訳で払っても払っても寄ってくる為、俺の方が値を上げる羽目になり、ルイス曰くレヴィは友人だ、とか言って今日も俺に絡んでくる。


「はぁっ!そんなんじゃない!それになんだよ姫達って。いつの間にそんな呼び名が付いたんだよ」

「なんだよ知らなかったのかよ。エルシアちゃん、ユキちゃん、そしてアリンちゃん。この三人は男子達の間じゃ特に人気者だからな。しかも三人とも家柄凄いし、しかも美人。ああエルシアちゃんとアリンちゃんは可愛い系だけど」

ぺらぺらと話すこいつもそこいらの男子どもとあまり変わらない気がしてくるんだが……。ある意味同類。

「まあともかくそんな三人を敬愛の意味も込めて姫って呼んでるんだよ。と言うかもう本物の姫みたいなもんだけどな」

いやー本当に目の保養だよな。とか言ってるルイスに俺は軽蔑の視線を送る。

こいつも一応は貴族だよな…?
同じ貴族として、いや、男として恥ずかしい奴だ……。



だがまあ、男どもが騒ぐのは…分からなくはない、かも。

話題に出る程確かに三人は綺麗だし、成績も良いし、ユキとアリンは置いておいてもエルは性格も明るいからな。
自然と周りの目を引くのも頷ける。

それに姫?だったか。それは彼女達が侯爵家だからって事だよな?

爵位の中での頂点は公爵だ。だけど王の弟や妹などの王族、或いは王族に係る身分の高い人物が公爵の称号を持つこともあるから、ある意味公爵と言う階級は特殊って感じがする。

公爵に次いでの階級が侯爵となるわけだが、普通に考えても階級は高いし、国にどれだけの貢献をしてきたのか、その階級と権力が物語っている。

その侯爵の娘と言う身分なら周りの奴等には本物の姫と引けを取らないのかもしれない。
と言ってもアリンは本当は侯爵ではないらしいけど、今は侯爵邸にいるから同じ扱いって事か?


……ちょっと待て。あいつらが姫なら俺は王って事になるじゃないか。俺も一応は侯爵家の人間だ。
……と言っても俺に王とか似合わなすぎだろ。そもそも俺の家は騎士の家系だから、嫌だけど騎士って言われた方がまだ納得できる。


「お!噂をすれば、お前のご執心の姫が来たぞ」

思考に入り浸っているとルイスの馬鹿にしたような声に現実に引き戻される。
ルイスは悪びれもなく笑うと、ある方向を指さす。その方向へ俺も視線を向けると、ちょうど何処かから戻ってきたのかエルが教室に入ってくるところだった。

「って、誰がご執心だ!そんなわけないだろ」

一瞬頭にはてなが浮かんだ後、数秒遅れてルイスの発言に抗議の声を上げた。と言ってもエルに聞こえないように音を落としてだけど。

「はたから見てたら誰だってそう映るさ。って、そんな事言っている場合じゃないみたいだぜ」

「は?」

変な物言いをするルイスを訝し気に見てから視線をもう一度エルに向けると……、

「なんだあいつら…」

いつの間に移動したのかエルの周りには男子生徒が群がっていて、それはそれは何とも暑苦しい光景だった。

近づきにくい、とか言ってたさっきの発言は何だったんだ!
と言うか女一人にどんだけ集まってんだよ。

この状況じゃあいつの事だ。絶対慌てるだろう。

そう思って見ていると、隙間からちらちらと見えるエルの様子が案の定、慌てふためいているのが見えて、やっぱりそうなるよなと何処か腑に落ちた。
あいつこう言うのに慣れてないもんな。いや、そもそも慣れるわけないか。寧ろこれに慣れてるとかあいつじゃない。

「なんか色々詰め寄られてるけど、これは助けに入った方が良いんじゃないか?」

「あ、ああ、そうだな」

普段なら面倒臭いと思うのに今は何故かイライラして、今すぐにでも男どもを蹴散らしてやりたい気持ちになる。

「行くか」


そう言い席を立ったその時。


「離れなさい。それ以上エルに近づかないで」

「エル様に危害を加えるのは許さない」

その場に颯爽と現れたのは話に出ていたユキとアリンの二人だった。素早い対応でエルを後ろに下がらせ、周りの男どもの前に立ちはだかった。

身長差はあるけどそれに引けを取らないくらい、二人は殺気とも言える程鋭い視線を周囲に向けていた。

こうなったら男どもは手も足も出ないだろうな。ひとまず安心だ。

「おいおい、ますますまずい状況じゃないか。早く止めに行かないと」

「待てよ。もう大丈夫だから。お前こそ落ち着けよ」

余裕な笑みは何処へ行ったのやら、慌てふためくルイスに思わず吹き出しそうになるが、そこを耐え俺は冷静に言った。

「いやいやいや、落ち着いていられないだろう。姫達三人じゃ勝てっこないって」

勝てないって…なんで勝負みたいになってるんだよ。と突っ込みたいところはあるが敢えて言わないでおこう。面倒だから。

「大丈夫だって。それに俺から見たら姫達三人って言うより、姫とその護衛二人って感じに見えるけどな」

「はあ?」

「まあ見てろよ」

今にも飛び出していきそうなルイスを止め、俺達はその場で事の成り行きを見守る事にした。


「あ、えっと、皆さんすみません。急に来られたので少し驚いただけと言いますか……」

「エル、謝らなくて良いのよ。
彼らは貴方と話しがしたくて集まって来たんでしょうけど、こんなに大勢で来られてもエルが怖がるだけよ。全く油断も隙も無いわ。学院の生徒である前に一貴族でしょうに。どうしてこうも紳士な男がいないのかしら」

「エル様に害なすものは敵。敵には――」

「わわわ!アリンちゃん駄目ですよ!こんなところで!それにユキもやめてくださいよ。私は大丈夫ですから!」

あっ、今アリン懐から何か出そうとしてたな。まさかナイフでも隠し持っているんじゃないだろうな…。

それにユキも肉体的攻撃がないにしても精神的攻撃が凄いんだよな。あのお綺麗な顔からして想像つかない程の毒舌家だもんな…ユキは。

レナードと言ったか、あいつの従者もユキの世話は苦労してそうだ。


で、この雰囲気の中でいつもと変わらないのはエルだけ。相変わらずと言うかなんと言うか……。
でも何だろう、場がなごむ…―――いやいや、何を考えてるんだ俺は!

「いや~凄い威圧感だな、ユキちゃんとアリンちゃん。確かにこれなら俺達の助けはいらないみたいだな。ってどうしたレヴィ!?顔赤くなってるけどっ」

「なっ、何でもないっ!構うな」

くそ!なんなんだ。ここ最近エルといると調子を狂わされる。変に意識しているみたいだ。

……こんなの俺らしくもないだろうが。しっかりしろ、俺っ!


「あ、終わったみたいだぜ?男子達凄い青い顔してるし」

その声に顔を上げれば男子生徒はエル達から逃げる様にして散って行き、それに乗じてエルもユキに引っ張られる形で教室を出て行き、その後を何事もなかったかのように涼しい顔でアリンもついて行った。



「まるで一雨降った後みたいだな」

「いや、寧ろ嵐が過ぎ去った、の間違いだろう」

俺とルイスは彼女達の去った場所を見つめ溜息を吐き、呆れたように呟いた。

何だか当事者より俺達傍観者の方が余程疲れている気がするんだが……気のせいか…?

そう思い俺はもう一度大きな溜息を吐いたのだった。
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